【完結】君が教えてくれたモノ

pino

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6章 忘れていた記憶

31.縮まる距離

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 休む前に汗を流したかったから、シャワーを浴びていた。飯野さんもバイトの後だし一緒に入ろうと誘ったんだけど、何故か怒られた。
 別に家の風呂狭くねぇし、両想いなんだし一緒に入るぐらい良くね?って反論しようと思ったけど、ここは我慢だ。飯野さんの気持ちも大切にしなきゃな♪

 俺は時間が経つにつれてハラリの事を考えても平気になっていた。それは飯野さんがいてくれたのもあるんだけどな。
 きっと風呂から出て飯野さんと寝て起きたらもっと平気になってると思うんだ。
 夢を見ていたような気持ちになるかもな。はは、ハラリって非現実的な奴だったし、そもそも夢だったのかも?

 うん。そう思っていた方が気が楽だ。

 シャワーを止めて体を拭いていると、リビングから飯野さんの声が聞こえて来た。


「奏多ー、腹減ってないかー?」


 ん!?と言う事は何か作ってくれるのか!?
 そう言えば昨日飯野さんが作ってくれた夕飯を食べてから何も食べて無いから、お腹空いたかも。
 でも眠いのもある。シャワー浴びてさっぱりしたから疲れてるのもあって余計にね。

 俺は手作りを期待して裸のままリビングに飛び出した。


「ご飯作ってくれるんですか!?」

「服を着ろ服を!」


 飯野さんに怒られた。
 何だよ~。せっかく嬉しい事言われたから期待したのに~。


「俺んちなんだから裸でうろついてもいいでしょ。それよりご飯作ってくれるんですか?」

「お前まさか、俺以外にもそういう事してるのか?」

「服着て来まーす♪」


 俺が反論すると飯野さんの顔が鬼のように恐ろしいものになり、さすがにヤバいと思って服を身に付けようと脱衣所へ戻り用意しておいた部屋着に着替える。
 あっぶね~、別に友達来てもこんなんだけど、そんな事が飯野さんに知られたらめちゃくちゃ怒られるよ~。

 俺は気を取り直してリビングに戻ると、不機嫌そうな飯野さんがテーブルの椅子に座って待っていた。


「服着て来ましたよ~。それといつもは裸でウロウロしてませんよ」

「本当か?俺が怒るからって嘘ついてんじゃねぇだろうな」


 その通りですとも!
 だけどそれだけは悟られまいと、俺は可愛こぶりっ子で乗り切る事にした。


「やだなぁ~。嘘じゃないですって~♪いくら俺でも友達の前で裸になったりしませんよ~」


 しますよ。男友達になら見られても恥ずかしくないもん。
 てか変に隠したりする方がキモくないですか?
 とは言えず、俺は飯野さんに合わせておいた。そして椅子に座ってる所を後ろから抱き締めて機嫌を取る事にした。

 うーん、飯野さんって男らしいよな。そんな事は当たり前なんだけど、俺ってさ、男を好きになった事が無いんだよ。それも当たり前なんだけど、だからどうしたって?
 自分より大きくてこう言う意味で好きな人に抱き付くのとか初めてだから少し緊張してるのよ。


「飯野さん♡好きです♡」

「本当に?」


 俺の言う事に顔だけ振り返って聞いて来た。
 うわ、顔近。綺麗な切れ長の目が俺を見ていて、少し照れる。
 そして俺は更に甘えてみた。


「本当です。ねぇ、キスしたいです」

「奏多……」

「してもいいですか?」

「ああ」


 飯野さんに許可を取ってそのまま唇にキスをしてみる。うわ、俺と飯野さんがキスしちゃった!
 それはもうなんて言うか、凄いのよ!何が凄いって聞かれると上手く言えないんだけど、とにかく良いんだわ。
 
 誰かとキスをするのは初めてじゃない。なんなら男とだってふざけてした事があるぐらいだ。ってこんな事は口が裂けても言えねぇけど。
 でも、そんなの比じゃないぐらいに緊張していた。


「凄い……しちゃった♡」

「奏多、俺もシャワーしてくる。待っててくれ」

「はい♡行ってらっしゃい♡」


 立ち上がる飯野さんを笑顔で見送る。
 正直シャワー行ってくれてホッとしてるよ。だってさ、今の俺ってめちゃくちゃ恥ずかしいんだよ!情けない顔してるかも!?
 
 はぁ、マジで好きなんだな飯野さんの事。
 飯野さんは普通そうに見えたけど、慣れてるんかな?そりゃあんなけ見た目が良ければ嫌ってぐらいに相手から寄って来るだろうよ。
 
 俺は火照る顔をパタパタと手で仰ぎながらミネラルウォーターを取りに行った。


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