32 / 43
6章 忘れていた記憶
31.縮まる距離
しおりを挟む休む前に汗を流したかったから、シャワーを浴びていた。飯野さんもバイトの後だし一緒に入ろうと誘ったんだけど、何故か怒られた。
別に家の風呂狭くねぇし、両想いなんだし一緒に入るぐらい良くね?って反論しようと思ったけど、ここは我慢だ。飯野さんの気持ちも大切にしなきゃな♪
俺は時間が経つにつれてハラリの事を考えても平気になっていた。それは飯野さんがいてくれたのもあるんだけどな。
きっと風呂から出て飯野さんと寝て起きたらもっと平気になってると思うんだ。
夢を見ていたような気持ちになるかもな。はは、ハラリって非現実的な奴だったし、そもそも夢だったのかも?
うん。そう思っていた方が気が楽だ。
シャワーを止めて体を拭いていると、リビングから飯野さんの声が聞こえて来た。
「奏多ー、腹減ってないかー?」
ん!?と言う事は何か作ってくれるのか!?
そう言えば昨日飯野さんが作ってくれた夕飯を食べてから何も食べて無いから、お腹空いたかも。
でも眠いのもある。シャワー浴びてさっぱりしたから疲れてるのもあって余計にね。
俺は手作りを期待して裸のままリビングに飛び出した。
「ご飯作ってくれるんですか!?」
「服を着ろ服を!」
飯野さんに怒られた。
何だよ~。せっかく嬉しい事言われたから期待したのに~。
「俺んちなんだから裸でうろついてもいいでしょ。それよりご飯作ってくれるんですか?」
「お前まさか、俺以外にもそういう事してるのか?」
「服着て来まーす♪」
俺が反論すると飯野さんの顔が鬼のように恐ろしいものになり、さすがにヤバいと思って服を身に付けようと脱衣所へ戻り用意しておいた部屋着に着替える。
あっぶね~、別に友達来てもこんなんだけど、そんな事が飯野さんに知られたらめちゃくちゃ怒られるよ~。
俺は気を取り直してリビングに戻ると、不機嫌そうな飯野さんがテーブルの椅子に座って待っていた。
「服着て来ましたよ~。それといつもは裸でウロウロしてませんよ」
「本当か?俺が怒るからって嘘ついてんじゃねぇだろうな」
その通りですとも!
だけどそれだけは悟られまいと、俺は可愛こぶりっ子で乗り切る事にした。
「やだなぁ~。嘘じゃないですって~♪いくら俺でも友達の前で裸になったりしませんよ~」
しますよ。男友達になら見られても恥ずかしくないもん。
てか変に隠したりする方がキモくないですか?
とは言えず、俺は飯野さんに合わせておいた。そして椅子に座ってる所を後ろから抱き締めて機嫌を取る事にした。
うーん、飯野さんって男らしいよな。そんな事は当たり前なんだけど、俺ってさ、男を好きになった事が無いんだよ。それも当たり前なんだけど、だからどうしたって?
自分より大きくてこう言う意味で好きな人に抱き付くのとか初めてだから少し緊張してるのよ。
「飯野さん♡好きです♡」
「本当に?」
俺の言う事に顔だけ振り返って聞いて来た。
うわ、顔近。綺麗な切れ長の目が俺を見ていて、少し照れる。
そして俺は更に甘えてみた。
「本当です。ねぇ、キスしたいです」
「奏多……」
「してもいいですか?」
「ああ」
飯野さんに許可を取ってそのまま唇にキスをしてみる。うわ、俺と飯野さんがキスしちゃった!
それはもうなんて言うか、凄いのよ!何が凄いって聞かれると上手く言えないんだけど、とにかく良いんだわ。
誰かとキスをするのは初めてじゃない。なんなら男とだってふざけてした事があるぐらいだ。ってこんな事は口が裂けても言えねぇけど。
でも、そんなの比じゃないぐらいに緊張していた。
「凄い……しちゃった♡」
「奏多、俺もシャワーしてくる。待っててくれ」
「はい♡行ってらっしゃい♡」
立ち上がる飯野さんを笑顔で見送る。
正直シャワー行ってくれてホッとしてるよ。だってさ、今の俺ってめちゃくちゃ恥ずかしいんだよ!情けない顔してるかも!?
はぁ、マジで好きなんだな飯野さんの事。
飯野さんは普通そうに見えたけど、慣れてるんかな?そりゃあんなけ見た目が良ければ嫌ってぐらいに相手から寄って来るだろうよ。
俺は火照る顔をパタパタと手で仰ぎながらミネラルウォーターを取りに行った。
0
あなたにおすすめの小説
義兄が溺愛してきます
ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。
その翌日からだ。
義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。
翔は恋に好意を寄せているのだった。
本人はその事を知るよしもない。
その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。
成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。
翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。
すれ違う思いは交わるのか─────。
【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―
綾波絢斗
BL
この世界には、二つの特別な称号を持つ者たちが存在する。
一つは、絶対的な権力を持つ王の称号――ルガル(lugal)。
もう一つは、ルガルと対をなし、その力を補う「番」――ムル(mul)。
ルガルは生まれながらに選ばれし存在。
国家からエリート教育と地位を与えられ、能力に応じて厳格なランク分けが行われる。
最上位のルガルは、政治さえも動かす絶対者だ。
一方で、ムルは生まれた瞬間にはその正体がわからない。
遺伝子検査や学力テストを経て候補が絞られるが、
最終的に「真のムル」かどうかを見極められるのは――ルガルだけ。
ムルが覚醒したとき、同じ場所に「紋章」が現れ、その瞬間から、ルガルとムルの力は共鳴し始める。
ムルの能力はルガルの力を最大限に引き出す。
ゆえにルガルたちは、自らのムルを求め、時には他人のムル候補を奪い合う。
そして、すべての出生データと遺伝情報を管理するのは、
巨大企業イルジオン――国家をも超える存在。
その頂点に立つ社長、一条レイ。
冷徹なルガルの頂点に君臨する彼が「自分のムル」と出会った。
【完結】恋い慕うは、指先から〜ビジネス仲良しの義弟に振り回されています〜
紬木莉音
BL
〈策士なギャップ王子×天然たらし優等生〉
学園の名物コンビ『日南兄弟』は、実はビジネス仲良し関係。どんなに冷たくされても初めてできた弟が可愛くて仕方がない兄・沙也は、堪え切れない弟への愛をSNSに吐き出す日々を送っていた。
ある日、沙也のアカウントに一通のリプライが届く。送り主である謎のアカウントは、なぜか現実の沙也を知っているようで──?
隠れ執着攻め×鈍感受けのもだキュンストーリー♡
いつもいいねやお気に入り等ありがとうございます!
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる