42 / 43
番外編
ただいま【ハラリside】
しおりを挟む相馬奏多との出会いは俺にとってかなり大事なモノとなった。
俺、ハラノハラリは奏多と出会った時は次元を越えながら自分探しの旅をしていた。そう、出会った時はそう思っていた。
だけど、奏多と出会って共に過ごす度に俺の中にある懐かしい記憶が蘇っていったんだ。
きっと次元越えをするにあたって記憶障害を起こしていたんだ。パラパラと抜け落ちる記憶にすら気付かない程俺は危険な旅を続けて、当初の目的すら思い出せなくなっていたんだ。そしていつしか旅の意味を勝手に書き換えて、違う次元にいる自分に教えてもらおうと『自分探しの旅』を繰り返していた。
そんな中辿りついた次元でも出会う人々は俺が求めている人間じゃなかった。数日が経ったある日、道端で力無く倒れている所を奏多に見付けてもらった。この時には既に何度目かの次元越えの反動が体に結構キテた。
奏多と出会った時、俺の直感が言った。『こいつも違う』と。
だけど、この次元で初めて俺に水を差し出して助けてくれた奏多には何か惹かれるモノがあったんだ。それは既に記憶が抜けている俺には何かは分からなかったけど、どこか懐かしい気持ちになったんだ。それでも俺が捜している人間では無かった。
もしかしたらこいつなら何か分かるかもと思って俺は逃すまいと必死で奏多に付いて行ったのを良く覚えている。
そしてその予感は的中した。その時奏多とはまだくっ付いていなかったけど、奏多の事を気に入ってる男がいた。飯野比良里だ。
奏多から俺に似ていると聞いていたからもしかしたらと思っていたら案の定、俺が探し求めていたもう一人の自分だった。
と言う事は奏多はやっぱり……
もう何度目かも忘れるぐらい行き来して来た次元越えも、やっと目的地に辿り着けた感じだ。俺は喜びと共に自分自身の限界にも焦っていた。
俺らの次元では次元越えはタブーだ。つまり俺は犯罪者。死刑レベルの重罪だ。次元越え専属のエリート達が何人も襲いかかって来ていたけど、それを相手にするのも辛くなって来てたんだ。
元々喧嘩の腕っぷしには自信があったんだけど、奏多と会った時には逃げるのが精一杯だった。
それでもやっと何かが思い出せそうな所まで来たんだ。最後まで足掻いてやると俺は生きる事を諦めなかった。
その想いが奏多に通じたのか、絶体絶命の危機に陥った時、見事に見付けてくれたな。あれには感動したぜ。おかげでもう一人の俺にも本性を明かさなくちゃならなくなったけど、んな事ぁ今ではもうどうでもいい。
俺は比良里を辿って奏多に出会い、忘れていた大事なモノを思い出す事が出来たんだ。
奏多と比良里。あいつらは一見不釣り合いに見えるが、お互い惹かれ合ってたよ。でもお互いの癖が強過ぎてすれ違いそうになってたんだ。
俺が奏多達の次元に辿り着くタイミングがズレてたらと思うとゾッとするぜ。少し早くても、少し遅くてもダメだった。ベストのタイミングで二人に会えたから、俺は今めちゃくちゃハッピーな気分でいられた。
あの二人を見てるとよ、懐かしくて居心地が良かったんだ。だから俺は奏多と比良里の事を心から愛していた。
そして俺は今から元の次元へ戻る。
いつも行き先はランダムだと思っていたけど、それも記憶が無くなっていたせいだったようだ。
次元越えをする時は行きたい場所、人、環境の事を強く想いながらするんだけど、どうやっても帰れなかった訳だぜ。だって、一番想わなきゃいけない奴の事を忘れてたんだからよ。
だから自分探しをしてたんだけど、そりゃ帰れねぇよな?だって、俺の次元には俺はいねぇんだから。
そしてより想いを強くする為に、比良里には申し訳ねぇけど奏多にキスをした。
スラスラと蘇る記憶に楽しささえ覚えて、忘れていた奴の事を思い出す。
アイツやっぱ怒ってんかなぁ?
思い出してみたら俺ってこの旅を始めてから数年経ってんだろ?もしかしたら忘れられてるかも?
そしたらそん時はそん時だ!
とにかく俺は帰る!
自分の生きていた次元がどんな風になってるのか胸をワクワクさせながら目を閉じてただアイツの事だけを想って俺は再び次元を越えた。
次に目を開けた時、アイツが目の前にいる事を祈って……
「ハラリ……?嘘だろ、ハラリなのか!?」
俺を呼ぶ声がして目を開けると、ピンクの髪色の可愛い顔したアイツがいた。
場所は見覚えのある綺麗なマンションの部屋。
ああ、帰って来れたんだ……
俺はやっと……
一歩足を踏み出そうとして視界が霞んだ。
クソ、やっぱりもう限界か。
数週間前に出来た傷も痛み出す。
やっと帰って来れたのに……
やっと会えたのに……
「ハラリ!」
朦朧とする意識の中、二度目の呼び掛けにハッとする。
そして俺は何もなかったかのように目の前にいる愛おしい恋人に笑い掛けてこう答えた。
「ただいま。ハルカ」
ハルカの可愛い顔がくしゃくしゃに歪むのが見えたと思ったらすぐに抱き付かれた。
おいおい、体ボロボロなんだから優しくしてくれって。
そう思いつつも俺もやっと会えたハルカを強く大切に抱き締めた。
「おかえり♪ハラリ♪」
涙を溢しながら満面の笑みを浮かべるハルカは、とても奏多と良く似ていた。
✳︎✳︎✳︎完✳︎✳︎✳︎
0
あなたにおすすめの小説
義兄が溺愛してきます
ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。
その翌日からだ。
義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。
翔は恋に好意を寄せているのだった。
本人はその事を知るよしもない。
その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。
成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。
翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。
すれ違う思いは交わるのか─────。
【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―
綾波絢斗
BL
この世界には、二つの特別な称号を持つ者たちが存在する。
一つは、絶対的な権力を持つ王の称号――ルガル(lugal)。
もう一つは、ルガルと対をなし、その力を補う「番」――ムル(mul)。
ルガルは生まれながらに選ばれし存在。
国家からエリート教育と地位を与えられ、能力に応じて厳格なランク分けが行われる。
最上位のルガルは、政治さえも動かす絶対者だ。
一方で、ムルは生まれた瞬間にはその正体がわからない。
遺伝子検査や学力テストを経て候補が絞られるが、
最終的に「真のムル」かどうかを見極められるのは――ルガルだけ。
ムルが覚醒したとき、同じ場所に「紋章」が現れ、その瞬間から、ルガルとムルの力は共鳴し始める。
ムルの能力はルガルの力を最大限に引き出す。
ゆえにルガルたちは、自らのムルを求め、時には他人のムル候補を奪い合う。
そして、すべての出生データと遺伝情報を管理するのは、
巨大企業イルジオン――国家をも超える存在。
その頂点に立つ社長、一条レイ。
冷徹なルガルの頂点に君臨する彼が「自分のムル」と出会った。
【完結】恋い慕うは、指先から〜ビジネス仲良しの義弟に振り回されています〜
紬木莉音
BL
〈策士なギャップ王子×天然たらし優等生〉
学園の名物コンビ『日南兄弟』は、実はビジネス仲良し関係。どんなに冷たくされても初めてできた弟が可愛くて仕方がない兄・沙也は、堪え切れない弟への愛をSNSに吐き出す日々を送っていた。
ある日、沙也のアカウントに一通のリプライが届く。送り主である謎のアカウントは、なぜか現実の沙也を知っているようで──?
隠れ執着攻め×鈍感受けのもだキュンストーリー♡
いつもいいねやお気に入り等ありがとうございます!
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる