【完結】君が教えてくれたモノ

pino

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6章 忘れていた記憶

39.また会う日まで

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 夕飯を食べた後、ハラリはそのままベランダに出て地面に座り込み胡座をかいてまた瞑想を始めた。
 俺と飯野さんは片付けもしないでその姿を窓を開けたまま部屋の中から見守っていた。
 いつハラリがいなくなるか分からないから、何もせずにベランダで集中しているハラリを見ていた。

 しばらくしてからハラリの頭が動いて俺達の方を振り向いた。その表情は良く知るあの自信に満ち溢れた強気な笑顔だった。


「ようし!バッチリだ!完璧に思い出したぜ♪」

「ハラリ、そっちに行っていいか!?」


 ハラリのとても前向きな言葉を聞いて俺は我慢が出来ずにベランダに顔を出して聞く。
 そしてハラリは立ち上がり「おいで」と手を差し出してくれた。
 俺は駆け寄り出された手を握ると、グイッと引かれてもう片方の手で抱き抱えられた。
 飯野さんの前でハラリがこんな事をするなんて、驚いたけど俺はそのままハラリを受け入れていた。


「奏多、本当にありがとうな。俺、すげぇ大事なもん忘れてたよ。お前のお陰で全部思い出せたわ♪どっかで記憶落としちまって忘れてたけど、これならちゃんと元の次元へ戻れるわ」

「本当か?それなら良かった♪」


 ハラリはとても嬉しそうな声で言った。それを聞いたら俺も嬉しくなってギュウッと抱き返した。
 それからハラリは俺から顔を離して俺の後ろにいる飯野さんにも声を掛けた。


「それと比良里!自分探しの旅とか言ってお前を辿ってたら奏多に会えたんだ。お前にも感謝してる。ありがとうな!」

「どうでもいいけど奏多を離せよ」

「そうだったな!お前は俺に似て嫉妬深いんだったな♪そんじゃそろそろ俺は行くわ♪」


 飯野さんに突っ込まれて「あはは」と楽しそうに笑うハラリはここへ来た時と変わらなかった。
 俺から離れて満面の笑みを向けた。

 俺はハラリが行ってしまうと思って、慌てて声を掛けた。こう言う時って上手い言葉って浮かばないもんだな。


「ハラリ!絶対に生き延びろよな!そして恋人と幸せにな!」

「任せとけ♪あ、最後にちょっといいか?」

「なんだ?」


 ハラリはそう言って俺の前に立ちながら、飯野さんを見て何かを確認した。
 何だろうと待ってると、ハラリは身を屈めて俺に視線を合わせるとそのままチュッと口にキスをして来た。

 驚いて慌てて口を押さえると、ハラリはニヤニヤ笑っていた。これには飯野さんもムキになった。
 ハラリから俺を遠ざけるように抱き寄せて怒り出した。


「奏多に世話してもらって礼をするって約束してたろ?その礼だ♪」

「奏多に何してくれてんだ!余計な事してねぇでさっさと帰れ!」

「飯野さん!もうハラリ行っちゃうから我慢しましょ!?」

「お前も何他の男にキスされてんだ!避けられただろうが!」

「だって、まさかキスするなんて思わなかったんですって!飯野さんはすぐ怒るんだから!」

「ひゃはは♪やっぱお前ら最高~♪二人共愛してるぜ!」


 俺と飯野さんが言い合っていると、ハラリの楽しそうな笑い声が聞こえて二人で振り向くともうそこにはハラリの姿は無かった。
 嘘、もう行っちゃったのか!?
 ちょっと最後ゴタゴタしてなかったか!?
 もっとちゃんと見届けたかったんだが!?

 残された俺と飯野さんはお互い顔を見合わせていた。

 
「やっと行ったか」

「……ハラリ、無事に帰れますかね?」

「大丈夫だろ。あいつの事だから失敗しても死にはしねぇよ」


 相変わらずな飯野さんに、俺は込み上げる寂しさをグッと堪えた。
 飯野さんがそうやっていつも通りにするなら俺だって!


「飯野さん!確認ですけど、俺達って恋人同士ですよね?」

「はぁ?当たり前だろ」

「それじゃあこれからは俺も比良里って呼んでいいですよね?」


 前に呼んだら嫌がられたんだ。
 ハラリは良いのにズルいなぁと思ってたんだ。

 飯野さんは少し考えるような顔してから俺の手を握って答えた。


「いいよ。その代わり二度と他の奴にキスとかされんじゃねぇぞ」

「ハッ!根に持ってる!」

「当たり前だクソが」

「口悪!そうだ!良い機会だからもう一個お願いがあります!」

「何だよ。何でも許されると思うなよ」

「俺の事お前って言うの辞めて下さい!」

「なんだと?お前そんな事気にしてたのか」

「あ!また!なんか上から言われてるみたいでムカつくんですよ」

「奏多より歳もバイト先でも上なんだから仕方ないだろ」

「それでも嫌なんです~!」


 俺が駄々を捏ねるように繋いだ手をブンブンと振り回すと、飯野さんは呆れたように笑った。
 お、やっぱり飯野さんの笑った顔良いな♡


「分かったよ。奏多、中へ入って片付けをするぞ」

「はーい♡比良里♡」


 名前で呼ぶと、照れたような笑顔を見せた。
 これからも比良里のいろんな顔が見れるだろう。
 ハラリとの別れがあんなに辛いと思っていたのに、不思議と今はこうして笑っていられる。

 それもこれもハラリの分身、比良里がいてくれるからだ。
 比良里はすぐ怒るから言い合いになる事が多いけど、本当は優しいのを知ってるんだ。
 そして何よりも俺の事を好きなのも♡

 ハラリ、俺も大事なものを忘れずに生きて行くよ。
 もしまたどこかで会う事があったらその時は一緒に笑い合おうな。

 ベランダから部屋の中へ入る前に上を見上げて夜空を見ると、そこにはたくさんの星が光り輝いていた。




✳︎✳︎✳︎完✳︎✳︎✳︎


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