あぶはちとらず

井氷鹿

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第2章 Fall between two stools.1 1995年 崇直編 春

灰吹から蛇が出る2 Out of the blue comes green.

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 ……布団出すの面倒だから、一緒でいいよな

  はぁ?

  思わず餃子を前に大口開けたまま、亘を目で追ってしまった。

「ついでにパジャマも出しとくよ」

  それは面倒じゃないん……だ。

 
 子供の頃は、社務所で合宿みたいに雑魚寝してたよなオレたち。
 夏はじーちゃんに蚊帳吊ってもらって、縁側全開で蚊取り線香焚いて。
 寒くなったら行火あんか作って、布団に入れて。
 亘は行火知らなくて、風呂の焚口に豆炭まめたんを入れて火を熾すところからやったんだよな。
 

 亘が一人になってからは……、そうだった。
 
『一人で飯を食わすな』

 まー爺が半強制で呼んでたんだ。
 家に来る理由なんて必要ないのに、律儀に亘は課題を持参して一緒に勉強してたな。
 帰る時間になると、たまにソワソワすることがあって。
 
 ひとりになる夜が、淋しく感じる日があったんだろうか。
 突然、一度に家族を失う喪失感って。
 紅緒の両親の時のショックとは比べ物にならないんだろうなぁ、と当時は想像するしか無かったが。

 泊まる時は別に布団用意するっていっても断って、オレらの誰かの布団に潜り込んでた。
 そういえば樹とよく寝てたな。

「いいけどさ」

 餃子を口に放り込む。
 とっくに亘は風呂へ消えてた。
 

 翌朝は紅緒らの襲撃で起こされることになる。

 連打される呼び出し音に続いて騒がしい声が響く。
 時計を見たら10時を少し回っていた。

『わーちゃん、嵩ちゃーんっ。買い出し行ってきたよーーーっ』
『わーちゃん、二日酔いなってない』

 スピーカーから脳天気で賑やかな声が響いてきた。
 とたん亘が、変な声を上げてオレの背中をつつく。

「お゙あ゙ぁっ」

「何?」

 おまえ二日酔いか?
 起き上がるのも面倒で、寝返りをうったら目の前に亘の顔が。

「うわっ、びっくりした。何赤くなってんだよ」
 
「崇直、ベー怒ってないよね」
 
「なんで」

「いや、その、アレだ」

 何だよ。

「自分で確かめろよ」

 面倒クセェなぁ、もう。

 亘を乗り越えベッドから降り、パジャマ姿のままエレベータで迎えに降りる。

「おはよう、崇ちゃん。おお、頭が爆発してる」
 
「おう。朝だからな」

 樹もベーも両手にパンパンのスーパーのレジ袋を下げていた。
 お前ら、朝から元気だな。

「ママがね、一緒にスーパーに行って買い出ししてくれたんだ」

「母さんったらべーからわーちゃんちの冷蔵庫が空だったって聞いて、ついでに見繕って買って行きなって」

 ここ迄車で送ってくれたらしい。
 やれやれ。お袋もわーちゃんのファンだったな、そーいえば。
 欠伸を噛み殺しながら、紅緒から買い出しの袋を受け取る。何買ってきたんだ?

「魚と肉と野菜とか。あと、お豆腐でしょ、納豆に卵と牛乳それと」

 お袋よ、買えばいいってもんじゃねーだろう。誰が作るんだ?

「お昼はすき焼きにしようと思って」

「そりゃ豪勢だな」

「お肉が特売だったんだよ」

 樹が自分の手柄のように言う。

「あ、でも僕はわーちゃんの顔見たら出かけるから、すき焼き食べられない」

 なーんと、樹のくせに今日はデートだとさ。
 生意気な。 

 部屋に戻ると亘の野郎は着替えて身なりをしっかり整えてやがった。
 オレの寝癖頭とヨレヨレのパジャマ姿は引き立て役かよ。
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