あぶはちとらず

井氷鹿

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第2章 Fall between two stools.1 1995年 崇直編 春

灰吹から蛇が出る4 Out of the blue comes green.

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 早めに亘のマンションを出たのは良いが、どこへ行こう。
 昼に爆食いしたから、腹減ってないしなぁ。

「池袋で時間潰していく? わーちゃんサンシャイン行けるよ」

「お、水族館。ペンギン見たい」

 わーかりましたよ。路線図を見て、と。

「新宿で乗り換え、の池袋」

「うーっす」
 
 ちょうど空いていた券売機で池袋までの切符を亘が3枚購入した。
 はい、はい、と出てきた切符をそれぞれ受け取り改札へ向かう。
 なんだか昔に戻った気分だな。

 電車に乗って入口付近で突っ立てるだけで、特に話すこともしないんだよな。
 流石に山手線は混んでたのでひっついてたけどな。
 窓から見える風景にあーだこーだとツッコミを入れてる間に、池袋に到着したよ。

「超ぉ久しぶりのぉ~サンシャイン」

 紅緒が鼻歌交じりにスキップしてる。そんなに嬉しいのかね。
 亘もその隣で歌でも歌いそうだなぁ、おい。
 そんな二人を背中に引率して、東口を出て階段を降りたら後ろから声をかけられた。

「笠神!」

 振り向いたら、田中じゃん。何だおまえも外出してたのか。

「お前も今から帰り?」

「おおおっ、もしかしてナオト先輩?」

 横から紅緒が覗き込む。
 へ、紅緒、田中知ってるの?

 紅緒が田中に笑いかけてる。ああ、そうだ、そこに居たんだよな。
 思い出したよ。 
 田中尚途たなかなおみち、直樹の親友だ。
 背番号4番。
 オレって、直樹の思い出と一緒に記憶まで封印しちゃってんじゃん。
 高校の3年間、一緒に戦ってきたチームメイトなのに。
 あー、嫌になるよこういう時。

「あー、べーちゃんだ。久しぶり。相変わらず美人さんだね」

「褒めたってなーにも出ないよ。それより弁護士なったんだ、先輩。おめでとう。やるねぇ、現役じゃん」

 と肘で田中の胸を小突く。

「それが、まだ弁護士じゃないのよ」

「崇直は現役で試験通ったからもう弁護士かと思ってた」

 そう言いながら、さり気なく亘は田中に場所を譲り、自分は一歩下がる。
 そういうところだよ、おまえ。  
  
「まだなってねーのよ、オレら。司法研修生はただ試験に合格しただけの無知な役立たずだ」

 田中の肩を組んで亘の方を向かせる。

「な。これ田中。直樹の親友で、高校時代のチームメイトで、大学の仲間で今は研修生の同期。
 こっち、幼馴染で、友人の日向亘ね。オレらと同じ大学のまだ学生やってる」

「田中尚途なおみちです」

「ひ、日向亘です。工学部システム工学科の院生してます」

 なんか変な空気になったぞ。直樹の名前だしたからか。田中、お前こういうの和ませるの得意だろ、おい。 

「あ、そうだ。あたしら今からサンシャイン水族館行くんだけど、ナオト先輩も行く?」

 おんぅ、おまえが誘うか? 

「え、混ぜてもらっていいの。行くよ、もちろん」

 それが合図のように、信号が青に変わった。
 いつの間にやら紅緒の横に田中、オレと亘がその後ろを歩いている。
 こりゃ旗色悪いなぁ、亘よ。
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