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第2章 Fall between two stools.1 1995年 崇直編 春
灰吹から蛇が出る5 Out of the blue comes green.
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田中め。
何を楽しげに話してやがるんだよ。
サンシャインシティに着くまで、亘の別れ話を聞かされる羽目になったじゃないかよ。
お陰で数メートルも水を開けられたぞ。
アイツラ、歩くの早えーよ。
「先輩に話したら、めちゃくちゃ笑われてさ」
おまえ、さっきから失恋話の割に楽しそうだな。
「寧ろ良かったんじゃないの、平川さんに話して。笑い飛ばしてくれたんだろ」
「確かに、もやもやがふっ切れた」
そりゃ、傷が浅くてよかったな。相手の女性はその前に上手く逃げたんだよ。
「嵩ちゃん、入口ここで良かったっけ」
声でけーよ。
紅緒が高架下広場にある入口を指さしている。
合ってる合ってる、イケイケと手で合図したらそのまま早足で入っていく。
何をそんなに急ぐんだよと、亘と追いかけたら。
ホールにでかでかと飾られた水族館のパネルに、紅緒が釘付けになっていた。
そこには『世界の毒毒猛毒展』という文字が。
「わーちゃん。どうしよう、ヤドクガエル来てる! テレビでやってたんだよね。生で見られるよ」
「べー、ヒョウモンダコも居るぞ。マンバは無理でもアダーあたりは来てて欲しいが。ブラック・ウィドウは居るんじゃね」
おまえら目がハートになってるぞ。
それに比べどうした田中、顔色悪いな。
10階に着くやいなや、亘たちは入場券買いに走りだし、速攻特別展示場へと消えていく。
「何で水族館なのに、爬虫類やら虫までがいるんだよ」
田中は脚が多くても少なくても駄目なタイプだったらしい。いや、残念むねん。
「知らねーの。ここ常設で爬虫・両生類展示してるぞ。ウーパールーパーとか大人気じゃん」
「トカゲとかヘビ無理。蜘蛛とか絶対無理!」
首を振って嫌がってる。なかなか中身は乙女だったんだ。知らなかった。
亘と紅緒はまだ特別展示場に入り浸ってて出てくる様子はまったくねーし。
「ウーパーさんは両生類。しゃーねーな、ちょっと待ってろ」
亘に事情を伝え、屋上のアシカショーで落ち合うことにする。
出口で振り返ったら、二人とも大はしゃぎじゃねーかよ。
この中身小学生コンビが。
ここまで嬌声が聞こえて来たワ。
大満足の爬虫類組とサンゴ礁とマンボウで気力を取り戻した田中と、最後にアシカのトレーニング姿を拝見しオレらはサンシャインを後にした。
「あのさ、夕飯食って帰るんなら行きたいとこがあるんだ。ビストロなんだけど美味いよ、行く?」
「いいねぇ」
元気になったら腹が減ったのか、田中が聞いてきた。
今から食っても門限まで全然余裕だし、なんなら呑んで帰ってもいいぞ。
紅緒の隣で鼻歌歌ってる亘を引率する体で田中と並んで歩いてるんだが、人増えてきたなぁ。
それにすれ違うたびに振り返られてる気がするのは、気のせいか。
頭一つオレと亘は人混みから出てる。
それは何時ものことなんで気にはならんが、通りすがりに見上げられたり振り返られたりすると丸分かりなんだよな。
下手したら目が合っちまうもん。
「笠神ぃ、自覚ないみたいだからさ言うけどさ」
何だよ、改まって。
「高校の頃っから、お前ら目立ってたんだよ」
でかいからか?
「双子だからか」
「昔はね。面のいい双子が並べばそりゃ目立つよ」
「嵩ちゃんって人に見られるのも知らない人に声かけられるのも、苦手過ぎて無駄に愛想が良くなったんだよね」
お、さすが紅緒。オレは知らないやつが馴れ馴れしく声かけてくるの大ッきらいなんだよ。
「なんで?」
「無視した方が良いってのか? オレ生徒会長だったし、キャプテンだったし。知らないやつにも、愛想だけは振りまくクセが付いたんだよ。和を以て貴しとなすだ」
神社の長男で、日本人なんだよ。
「司法研修所でも、おまえ目立ってるから覚えられやすいんだよな」
そこで田中はオレの顔をじっと見て、何故か頷いた。
「そうか、目立つってけっこうハードなんだな。知らなくて飲み会の度、おまえの名前をダシに声かけてた」
「あ゙ぁ゙?」
「女子が速攻参加するんだよ、笠神の名前使うと」
すまんかったと両手を合わせ、謝ってきた。
このやろう。こっちは知らないやつなんか覚えられねーつうの。
「今度からクラス違いは呼ばないでくれると助かる」
「分かった」
後ろの二人が笑いを必死で我慢してやがる。息が漏れてっぞ。笑いたきゃ笑え。
本心を出すのが怖ぇーんだよ。だったら。
「まぁ、愛想くらいならいくらでも振りまいてやるよ」
ムカつくこともあるけど、それで周りが平和なら。
「あ、お店この地下。シェフが塾の先生だったんだ。面白い経歴の人でね、笠神を紹介したかったんだよ」
「ふーん」
地下のへの階段を降り、突き当たった先に看板が出ていた。
黒板にチョークアートが施され、今日のオススメが描かれている。
フレンチ・ビストロだってさ。
何を楽しげに話してやがるんだよ。
サンシャインシティに着くまで、亘の別れ話を聞かされる羽目になったじゃないかよ。
お陰で数メートルも水を開けられたぞ。
アイツラ、歩くの早えーよ。
「先輩に話したら、めちゃくちゃ笑われてさ」
おまえ、さっきから失恋話の割に楽しそうだな。
「寧ろ良かったんじゃないの、平川さんに話して。笑い飛ばしてくれたんだろ」
「確かに、もやもやがふっ切れた」
そりゃ、傷が浅くてよかったな。相手の女性はその前に上手く逃げたんだよ。
「嵩ちゃん、入口ここで良かったっけ」
声でけーよ。
紅緒が高架下広場にある入口を指さしている。
合ってる合ってる、イケイケと手で合図したらそのまま早足で入っていく。
何をそんなに急ぐんだよと、亘と追いかけたら。
ホールにでかでかと飾られた水族館のパネルに、紅緒が釘付けになっていた。
そこには『世界の毒毒猛毒展』という文字が。
「わーちゃん。どうしよう、ヤドクガエル来てる! テレビでやってたんだよね。生で見られるよ」
「べー、ヒョウモンダコも居るぞ。マンバは無理でもアダーあたりは来てて欲しいが。ブラック・ウィドウは居るんじゃね」
おまえら目がハートになってるぞ。
それに比べどうした田中、顔色悪いな。
10階に着くやいなや、亘たちは入場券買いに走りだし、速攻特別展示場へと消えていく。
「何で水族館なのに、爬虫類やら虫までがいるんだよ」
田中は脚が多くても少なくても駄目なタイプだったらしい。いや、残念むねん。
「知らねーの。ここ常設で爬虫・両生類展示してるぞ。ウーパールーパーとか大人気じゃん」
「トカゲとかヘビ無理。蜘蛛とか絶対無理!」
首を振って嫌がってる。なかなか中身は乙女だったんだ。知らなかった。
亘と紅緒はまだ特別展示場に入り浸ってて出てくる様子はまったくねーし。
「ウーパーさんは両生類。しゃーねーな、ちょっと待ってろ」
亘に事情を伝え、屋上のアシカショーで落ち合うことにする。
出口で振り返ったら、二人とも大はしゃぎじゃねーかよ。
この中身小学生コンビが。
ここまで嬌声が聞こえて来たワ。
大満足の爬虫類組とサンゴ礁とマンボウで気力を取り戻した田中と、最後にアシカのトレーニング姿を拝見しオレらはサンシャインを後にした。
「あのさ、夕飯食って帰るんなら行きたいとこがあるんだ。ビストロなんだけど美味いよ、行く?」
「いいねぇ」
元気になったら腹が減ったのか、田中が聞いてきた。
今から食っても門限まで全然余裕だし、なんなら呑んで帰ってもいいぞ。
紅緒の隣で鼻歌歌ってる亘を引率する体で田中と並んで歩いてるんだが、人増えてきたなぁ。
それにすれ違うたびに振り返られてる気がするのは、気のせいか。
頭一つオレと亘は人混みから出てる。
それは何時ものことなんで気にはならんが、通りすがりに見上げられたり振り返られたりすると丸分かりなんだよな。
下手したら目が合っちまうもん。
「笠神ぃ、自覚ないみたいだからさ言うけどさ」
何だよ、改まって。
「高校の頃っから、お前ら目立ってたんだよ」
でかいからか?
「双子だからか」
「昔はね。面のいい双子が並べばそりゃ目立つよ」
「嵩ちゃんって人に見られるのも知らない人に声かけられるのも、苦手過ぎて無駄に愛想が良くなったんだよね」
お、さすが紅緒。オレは知らないやつが馴れ馴れしく声かけてくるの大ッきらいなんだよ。
「なんで?」
「無視した方が良いってのか? オレ生徒会長だったし、キャプテンだったし。知らないやつにも、愛想だけは振りまくクセが付いたんだよ。和を以て貴しとなすだ」
神社の長男で、日本人なんだよ。
「司法研修所でも、おまえ目立ってるから覚えられやすいんだよな」
そこで田中はオレの顔をじっと見て、何故か頷いた。
「そうか、目立つってけっこうハードなんだな。知らなくて飲み会の度、おまえの名前をダシに声かけてた」
「あ゙ぁ゙?」
「女子が速攻参加するんだよ、笠神の名前使うと」
すまんかったと両手を合わせ、謝ってきた。
このやろう。こっちは知らないやつなんか覚えられねーつうの。
「今度からクラス違いは呼ばないでくれると助かる」
「分かった」
後ろの二人が笑いを必死で我慢してやがる。息が漏れてっぞ。笑いたきゃ笑え。
本心を出すのが怖ぇーんだよ。だったら。
「まぁ、愛想くらいならいくらでも振りまいてやるよ」
ムカつくこともあるけど、それで周りが平和なら。
「あ、お店この地下。シェフが塾の先生だったんだ。面白い経歴の人でね、笠神を紹介したかったんだよ」
「ふーん」
地下のへの階段を降り、突き当たった先に看板が出ていた。
黒板にチョークアートが施され、今日のオススメが描かれている。
フレンチ・ビストロだってさ。
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