あぶはちとらず

井氷鹿

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第5章 Grasp all , Lose all.3 1995年 亘編 夏2

縁は異なもの味なもの3 Love knows no common rule.

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 今日は半日、大学での作業の日だ。
 今朝は久しぶりにBMWに跨り、早朝から遠回りしてツーリング気分で大学へ向かう。
 1時間近くかけ、大学へ到着。
 正門前で降り、エンジンを切って押して構内へ入る。
 研究室のある、新築出来立ての14号棟専用の駐車場へバイクを停めた。

 山下助教授に出席の挨拶に行き、研修のレポートを提出する。
 その後指定の作業を終えて、数カ月ぶりの学食でカツ定食を食べた。
 学食のレベルを超えて、ここのは旨いのよね。

 午後は研修先のラボで昨日のモジュールを確認して、夕飯食ったらシンデレラだ!
 ウキウキで山下助教授やましたせんせいへ終了報告に行くと。

「あ! 日向。ちょうど良かった。いま平川から電話で、折り返し連絡をくれって」

 開けたドアの前に助教授せんせいが立っていた。

「うわっ先生!」

 彼女は、すらりと背の高い白衣が良く似合うスレンダー美人だ。
 肩先まで伸ばしたストレートヘアを、仕事中は後ろで束ねて団子にしている。
 男性社会の工学の世界で負けずに勝ち残り、工学部初の女性助教授になった人でもある。
 未だに男尊女卑とまではいかないが、女というだけで損な扱いは受けているらしいが。
 その気に食わない男どものつむじを、上から眺めてやるのが楽しいんだよ、といつも言って笑っている。
 そんな人柄に学生の人気は高く、彼女のゼミは毎年抽選でメンバーを選んでいるほどだ。

 「トラブルらしいよ。これ使っていいから」
 
 と、目の前の電話を差し出してくれる。
 先輩が、大学のラボへ電話なんて珍しいな。

「はい。ありがとうございます」

 昨日のモジュール、エラー出したのかな。その程度で電話なんかかけて来ないよな。
 ラボ直通ナンバーを押して、呼び出し音が鳴ったと思ったら即つながった。

「日向か?」

「はいっ。どうしたんですか」

「UNIXが止まって、データが飛んだ」

「はぁああ?」

 データが飛んだ? 
 血がサーッと引いていくのが分かった。
 背中がヒヤリとして、言葉が出てこない。
 何したっけ??? モジュール突っ込んで走らせたのまでは確認したよ。
 いつも通りだったし。 何かヘマをやらかしたのか。

「とにかく、そっち終わったらすぐ来い!」

「わ、分かりました。すぐ行きます」

 受話器を置くと山下助教授が両手でそれを抱え、目をキラキラさせて僕を見る。

「ねぇねぇ、何? トラブル。手伝おうか?」

 え? 

「あの、社のサーバが、UNIXが止まって、データが飛んだらしいっす」 

 それを聞き助教授は目を見開き、ちょい待ち、と僕に向かって人差し指を立てた。
 受話器を持ち上げ、どこかに電話をかける。

「もしもし、T大工学部の山下由紀恵と申します。はい。いつも貴社には大変お世話になっております。お忙しいところ、大変申し訳ありません。海外プロジェクト推進研究室、室長の平川亮ひらかわとおるさんお願いします」

 え、マジで来る気?

「あ、平川? あたしだけど、山下。……うん。……そうそう。あたしの研究知ってるよね。うん、……じゃそういうことで」

 え、何が起きた?  

「日向、バイクで来てるんだよね。乗っけってって」

 あ~っ! 山下助教授はデータベース国内トップのスペシャリストだった。
 なにかしたくてウズウズしてたんですね。

「こういう時の為に、あんたのバイク登校許可をもらってんだから」

 あはは。
 フィールドワークの脚代わりでした、そうでした。

「正門前で待ってて、すぐ用意するから」

 10分もしないうちに、背中に大きめのデイパックを背負った助教授がやってきた。
 マイヘルメットも持参して。

「家の研究室、あんたの研修先からいくらもらってると思う。研究成果を見せなきゃ。来年度は予算上乗せしてもらいたいし、ね」

 なるほど。抜け目ないっスね。
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