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第5章 Grasp all , Lose all.3 1995年 亘編 夏2
縁は異なもの味なもの2 Love knows no common rule.
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今日から僕以外は現場入りで、ラボ内に人が居ない。
ガランとした室内を見渡すと、今朝は慌しかったんだろうというのがよく分かる。
半開きのファイリングキャビネットに、閉められてない袖引き出しがあっちにも、こっちにも。
大量のプリント用紙を束ねて突っ込んでいたのを取り出して、そのまま出て行ったんだろうなぁ。
知らない人が見たら、空き巣にでも入られたのかと心配されそうだよ。
さて、僕も集中して出入庫と在庫管理の統合モジュールを仕上げないと間に合わないな。
えっと、工程表に書いたほうがいいのかな。
ラボの入り口横の壁にA0サイズのガントチャートが、張り出されているんだが。
うわぁ、見るたびにこのチャートのカオスが広がってんだけど。
赤と青と黄色と黒のマジックが、ガントチャートのプラ枠に紐で吊るされてぶら下がっていた。
修正は赤で入れることになっているが、その修正にさらに修正が重なり、結局今は黄色が最新版になっているはずだ。
が、さらに新しい色が追加されると、それが最新になるルールなんだが。
わ、緑色発見したよ。
反対の角に緑のマジックがぶら下がってたよ。
「日向、居るか~?」
ドアが開き、先輩が入ってきた。
真横に立っていたので、驚かせたようだ。
「おおっ、そこに居たか。スマンが、こいつのマーカーの個所の英訳頼めるか?」
渡されたのは印刷された紙の束。
え、ドキュメント?
「来月の出張までに、仕様書と設計の一部、ドキュメントも併せて英文翻訳の確認と追加頼むわ」
「モジュールは」
「あー、それ」
と言って先輩は、人差し指でこめかみをつつき思案する。
「そっち優先で、翻訳の方は今から俺も手伝うわ」
紙の束を僕の手から取り上げ、僕のデスクに置くとそのまま腰かけた。
「モジュール、早めでイケそうか」
「家でも組んでたんで、今夜にでもツッコめますよ。頑張れば」
「おまえ、趣味が仕事になるタイプだな」
「は? 論文のためですけど。それと安定した就職先確保のためですね」
「卒業は再来年だろ、準備怠りなしだな」
破顔一笑、そう言って先輩は早速紙の束との格闘を開始した。
負けずに僕もIBMを立ち上げ、持参したFDDを読み込ませる。
さて、やりますか。
よし、できたぞ。
こいつをFDに書き込んで、と。
時間を見たら、もうすぐ8時だ。
椅子から立ち上がり、端末の島から僕のデスクを見たらまだ先輩がいた。
「お疲れ様です。モジュール完成しました。いまフロッピーに書き込んでます」
「お、ああ。お疲れ。それ、終わったら呼んでくれ」
目頭を押さえながら、顔を上げる。
この人も集中すると、時間が飛ぶんだ。
「コード書いてると、集中力が研ぎ澄まされるよな」
「はい。もう8時ですよ、びっくりしました」
そう言うと先輩は時計を見て、納得の顔をする。
「昼飯、すっかり忘れてたな」
言われて空腹に気が付き、思わず腹を手で押さえてしまった。
「モジュール突っ込んだら、今夜はあがるか」
「飯、行きますか」
しょうがねーな、と先輩が笑う。
「じゃ、突っ込んできます」
僕は急いで端末に戻り、書き終わったFDを取り出して、今度はX端末に差し込んだ。
「今日も無事に走り切りますように」
そう言って、祈りを込めてエンターキーを叩いた。
ガランとした室内を見渡すと、今朝は慌しかったんだろうというのがよく分かる。
半開きのファイリングキャビネットに、閉められてない袖引き出しがあっちにも、こっちにも。
大量のプリント用紙を束ねて突っ込んでいたのを取り出して、そのまま出て行ったんだろうなぁ。
知らない人が見たら、空き巣にでも入られたのかと心配されそうだよ。
さて、僕も集中して出入庫と在庫管理の統合モジュールを仕上げないと間に合わないな。
えっと、工程表に書いたほうがいいのかな。
ラボの入り口横の壁にA0サイズのガントチャートが、張り出されているんだが。
うわぁ、見るたびにこのチャートのカオスが広がってんだけど。
赤と青と黄色と黒のマジックが、ガントチャートのプラ枠に紐で吊るされてぶら下がっていた。
修正は赤で入れることになっているが、その修正にさらに修正が重なり、結局今は黄色が最新版になっているはずだ。
が、さらに新しい色が追加されると、それが最新になるルールなんだが。
わ、緑色発見したよ。
反対の角に緑のマジックがぶら下がってたよ。
「日向、居るか~?」
ドアが開き、先輩が入ってきた。
真横に立っていたので、驚かせたようだ。
「おおっ、そこに居たか。スマンが、こいつのマーカーの個所の英訳頼めるか?」
渡されたのは印刷された紙の束。
え、ドキュメント?
「来月の出張までに、仕様書と設計の一部、ドキュメントも併せて英文翻訳の確認と追加頼むわ」
「モジュールは」
「あー、それ」
と言って先輩は、人差し指でこめかみをつつき思案する。
「そっち優先で、翻訳の方は今から俺も手伝うわ」
紙の束を僕の手から取り上げ、僕のデスクに置くとそのまま腰かけた。
「モジュール、早めでイケそうか」
「家でも組んでたんで、今夜にでもツッコめますよ。頑張れば」
「おまえ、趣味が仕事になるタイプだな」
「は? 論文のためですけど。それと安定した就職先確保のためですね」
「卒業は再来年だろ、準備怠りなしだな」
破顔一笑、そう言って先輩は早速紙の束との格闘を開始した。
負けずに僕もIBMを立ち上げ、持参したFDDを読み込ませる。
さて、やりますか。
よし、できたぞ。
こいつをFDに書き込んで、と。
時間を見たら、もうすぐ8時だ。
椅子から立ち上がり、端末の島から僕のデスクを見たらまだ先輩がいた。
「お疲れ様です。モジュール完成しました。いまフロッピーに書き込んでます」
「お、ああ。お疲れ。それ、終わったら呼んでくれ」
目頭を押さえながら、顔を上げる。
この人も集中すると、時間が飛ぶんだ。
「コード書いてると、集中力が研ぎ澄まされるよな」
「はい。もう8時ですよ、びっくりしました」
そう言うと先輩は時計を見て、納得の顔をする。
「昼飯、すっかり忘れてたな」
言われて空腹に気が付き、思わず腹を手で押さえてしまった。
「モジュール突っ込んだら、今夜はあがるか」
「飯、行きますか」
しょうがねーな、と先輩が笑う。
「じゃ、突っ込んできます」
僕は急いで端末に戻り、書き終わったFDを取り出して、今度はX端末に差し込んだ。
「今日も無事に走り切りますように」
そう言って、祈りを込めてエンターキーを叩いた。
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