あぶはちとらず

井氷鹿

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第5章 Grasp all , Lose all.3 1995年 亘編 夏2

恋愛は銘々稼ぎ3 Love finds its way.

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 今日は崇直の誕生日だ。
 僕の仕事が終わり次第、池袋に集合。
 時間があれば和光まで迎えに行こうと、紅緒と決めたのだ。

 タイムカードの前で、あと30秒と待っていたら、先輩に肩を叩かれる。
「分かりやすいな、おまえは」  
「うわっ」
 びっくりした、もう!
 
「5時になったぞ!」
 そう言って、先輩が意味ありげに笑う。
 愛想を返したつもりだけど、上手く笑えないや。
「お、お疲れ様です」
 カードを打刻したら、先輩も続けてカードを突っ込んだ。

「え、先輩も定時っすか?」
「俺は管理職。いつ打っても関係ないんだよ。定額働きほーだい」
 うわぁ、社畜道まっしぐらだ。

 エレベータに乗り、1階で降りる。
「これから大阪だ。日向、今週はご苦労さんだったな。また、来週も頼むわ」
 そう言って、二指の敬礼を投げてくる。
 はは、そっくりだよ先生と。
 
「ども。気を付けて行ってきてください」 
 僕も真似をして、やってみた。
 先輩は笑顔で手を振り、エレベーターから降りると、玄関先の呼んでいたタクシーへと走って行った。
 羽田直行で、大阪か。
 あの人、いつ休むんだろう。

 これから僕は霞が関まで歩いて、丸の内で池袋だ♬~
 ビルに移る自分の姿を見て、とりあえずチェックする。
 髪の毛は、大丈夫だよな。シャツも……
 
 後ろを通るOLさんに笑われた気がして、慌てて目を逸らす。
 この日の為に買ったんだけど、下ろし立てに見えるのかな。
 このカーゴパンツ、気に入ってるんだけどな。
 やっぱり気になるので、駅までショーウインドウやビルに映る度、目が行ってしまう。

 うーん。先に先輩に見てもらえばよかったか。
 いや、聞いたところで揶揄からかわれるだけだしな。
 そんなことを考えながら、地下鉄に乗るとあっという間に池袋に着いてしまう。

 地下1階への階段を上がり改札へ向かう。
 東上線の中央改札入り口で待ち合わせ、なんだが……
 居たよ。
 改札抜けた直ぐ先に。

 昔みたいに髪の毛を後ろで束ねた、ポニーテール。
 今は制服じゃなくて、Gパン穿いてた。
「わーちゃん、来た!」
 と駆け寄ってきた。
 
「よぉ」
「切符買っといたよ~」
 そう言って、僕に切符を渡し笑顔で僕の隣に並び歩き出す。

 待ったとか聞くのも、デートみたいだし。
 何ていえばいいんだ、こういう時は。
「まだ時間あるけど、何か飲む?」
「向こうに行ってから、時間潰すか?」

 あはは。お互い考えることは同じか。
 切符もあるし、
「先に行くか?」
「うん」

 始発なので、余裕で座れた。
 それでも、出発の時刻には立ってる人も増えてくる。

 人が増え、自然と角に座った紅緒の方へ詰める形になる。
 僕の二の腕辺りに、紅緒の肩が当たる。
 う、これは下手に腕を動かしたら、紅緒の胸に当たりそうだ。
 「あのさぁ」
 
 うぉあ、思う間もなくこっち向くか、おい。
 当たってるよ!
「な、なに」
 じっと僕の顔を見る。
 
 紅緒の瞳に僕の顔が映っている。
「いや、マジでわーちゃんの顔って左右対称だよね」
 それ以上見つめられたら、ちょっと辛いぞ。
 当たってるし、な。

 大きく揺れ、電車が動き出した。
 ああ、僕の腕、このまま死んでもいいくらい幸せだ。      
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