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第1章 Grasp all , Lose all.1 1995年 亘編 春
本木にまさる末木なし1 The first is the best.
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僕らは再び電車に揺られ、良い機会だからと先輩がある店に連れて行ってくれることになった。
「家の近所なんだ、これが」
「へぇ~」
先輩と僕は最寄り駅が同じだ。
でも、通勤も帰りも一緒になることはまずないんだよね。
「南口から出るぞ」
「賑やかな方ですね」
「そうそう」
先輩は得意気に頷く。
「会員制の店なんだが、紹介したい人がいてさ」
会員制? 思わず眉が上がるよ。
高級店なんて行ったこと無いから緊張するなぁ。
「お前が考えてるようなのじゃないからな。社交クラブみたいなもんだ」
社交クラブって、もっと分からん。
頭をひねりながら改札を抜けて、いつもと違う出口へ向かう。
「ちょっと歩くぞ」
「うっす」
酔冷ましにちょうどいいや。少し先をスタスタ歩く先輩に付いていく。
「日向って帰国子女だよな」
「そーっすよ」
そういう先輩は米大の学士持ちじゃないですか。
繁華街をどんどん歩いていく。
僕が住んでる側はマンションと住宅とお寺と神社と静かなところなのに、反対側はこんな賑やかとは知らなかった。
客の呼び込み、景気の良い挨拶が飛び交っている。
人も多いなぁ。
北と南で、全く街の顔が変わるんだ。
「お前の英語キレイだもんなぁ。イギリス英語って、何と言うか上品でいいよな」
上品、僕の英語が、えへへ。
「気取ってるとか聞き取りづらいとか、よく言われてたんスよ。だから上品なんて先輩に言われたら、めちゃ嬉しいッスね」
流石先輩、分かってらっしゃる。
「でも、僕の英語、ネイティブといえどお子様英語なんっスよ。何せ16で帰国してますから」
2度目はFifth form(高1)で帰国したからなぁ。
まだまだ子供だったよなぁ。
「へぇ~、そういうもんか」
「先輩みたいに向こうの大学出た人のほうが、全然上っす。僕、女性口説けませんもん」
先輩が間をおいて、鼻で笑った。
「なるほどね~」
気がつくと繁華街を抜けていた。
一気に静寂に包まれ、遠く電車の音が響いている。
「ところでただの好奇心で聞くんだが、生まれたのはどこ。あ、言いたくなきゃ……」
「ドイツです。ノルトライン・ヴェストファーレン州の州都、デュッセルドルフ」
繁華街の先はここも静かな住宅街になるんだ。
どちらかと言うと僕の住んでる側と違い戸建てが多いな。
「デュッセルドルフか。流石に行ったことねーや」
デュッセルドルフねぇ、と言いながら先輩はブリーフケースを持ったまま両手を上げ大きく伸びをした。
「そこからフランス、イギリスですね」
「オレなんか日本の片田舎だぜ。生まれたときから世界を知ってるってすげー強みだぞ」
振り返り、先輩がこぶしを握ってうんうんとうなずく。
そんなに凄いことなんですかね、帰国子女って。
「だといいですが。子供すぎて、記憶にあるのはイギリスだけっすよ」
先を歩いていた先輩が、また振り返る。
「親が外交官って、やっぱり大変だったか。引っ越し先が異国じゃ簡単に友だちなんかできないだろうし」
「ええ、簡単じゃなかったかな。だから小学生で帰国した時できた友達は、今でも大切な親友なんですよ」
小3の春出会ったあの4人は、僕にとって生涯の親友なんだ。
「そういうことか。そりゃ、慎重になるな」
「そういうことっす」
「家の近所なんだ、これが」
「へぇ~」
先輩と僕は最寄り駅が同じだ。
でも、通勤も帰りも一緒になることはまずないんだよね。
「南口から出るぞ」
「賑やかな方ですね」
「そうそう」
先輩は得意気に頷く。
「会員制の店なんだが、紹介したい人がいてさ」
会員制? 思わず眉が上がるよ。
高級店なんて行ったこと無いから緊張するなぁ。
「お前が考えてるようなのじゃないからな。社交クラブみたいなもんだ」
社交クラブって、もっと分からん。
頭をひねりながら改札を抜けて、いつもと違う出口へ向かう。
「ちょっと歩くぞ」
「うっす」
酔冷ましにちょうどいいや。少し先をスタスタ歩く先輩に付いていく。
「日向って帰国子女だよな」
「そーっすよ」
そういう先輩は米大の学士持ちじゃないですか。
繁華街をどんどん歩いていく。
僕が住んでる側はマンションと住宅とお寺と神社と静かなところなのに、反対側はこんな賑やかとは知らなかった。
客の呼び込み、景気の良い挨拶が飛び交っている。
人も多いなぁ。
北と南で、全く街の顔が変わるんだ。
「お前の英語キレイだもんなぁ。イギリス英語って、何と言うか上品でいいよな」
上品、僕の英語が、えへへ。
「気取ってるとか聞き取りづらいとか、よく言われてたんスよ。だから上品なんて先輩に言われたら、めちゃ嬉しいッスね」
流石先輩、分かってらっしゃる。
「でも、僕の英語、ネイティブといえどお子様英語なんっスよ。何せ16で帰国してますから」
2度目はFifth form(高1)で帰国したからなぁ。
まだまだ子供だったよなぁ。
「へぇ~、そういうもんか」
「先輩みたいに向こうの大学出た人のほうが、全然上っす。僕、女性口説けませんもん」
先輩が間をおいて、鼻で笑った。
「なるほどね~」
気がつくと繁華街を抜けていた。
一気に静寂に包まれ、遠く電車の音が響いている。
「ところでただの好奇心で聞くんだが、生まれたのはどこ。あ、言いたくなきゃ……」
「ドイツです。ノルトライン・ヴェストファーレン州の州都、デュッセルドルフ」
繁華街の先はここも静かな住宅街になるんだ。
どちらかと言うと僕の住んでる側と違い戸建てが多いな。
「デュッセルドルフか。流石に行ったことねーや」
デュッセルドルフねぇ、と言いながら先輩はブリーフケースを持ったまま両手を上げ大きく伸びをした。
「そこからフランス、イギリスですね」
「オレなんか日本の片田舎だぜ。生まれたときから世界を知ってるってすげー強みだぞ」
振り返り、先輩がこぶしを握ってうんうんとうなずく。
そんなに凄いことなんですかね、帰国子女って。
「だといいですが。子供すぎて、記憶にあるのはイギリスだけっすよ」
先を歩いていた先輩が、また振り返る。
「親が外交官って、やっぱり大変だったか。引っ越し先が異国じゃ簡単に友だちなんかできないだろうし」
「ええ、簡単じゃなかったかな。だから小学生で帰国した時できた友達は、今でも大切な親友なんですよ」
小3の春出会ったあの4人は、僕にとって生涯の親友なんだ。
「そういうことか。そりゃ、慎重になるな」
「そういうことっす」
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