あぶはちとらず

井氷鹿

文字の大きさ
17 / 75
第2章 Fall between two stools.1 1995年 崇直編 春

落花情あれども流水意なし6  The love to no avail.

しおりを挟む
「わーちゃんお代わり。ぴっかレモンがあったからレモン水にした」

 とーとつに割り込むなぁ、紅緒は。
 おまえ、それ以上かがむと中身見えるぞ。
 可愛らしい膝小僧出して、亘の隣に座るんだ。
 だったらよく見ろ。
 亘の野郎むちゃ焦ってるの、気付かないのか。

「ああ、ごめん。倒れた拍子にお酒浴びっちゃって。勝手に借りちゃった。風呂場に畳んであったから」

 馬鹿みたいに口開けてんじゃないよ、亘は。
 何処見てんだよ、このスケベ野郎が。

「じーちゃんが嵩ちゃん呼んでくれたのよ。ちょうどこっちに用があって来てるはずだからって」

 正確には行く予定でした。
 ま、アポの相手はそれを忘れて寝てましたけどね。

「紅緒一人じゃ連れて帰れないだろ。樹じゃ役に立たんし。お前、でかすぎるから。まー爺はあの後別件で出かける用があって、お鉢がオレに回ってきた」

「そりゃ、すまなかった。紅緒も、迷惑かけて悪かったな」

 そんなに恐縮しなくても、いいんだけどさ。
 ま、そりゃ恥ずかしいよな。

「いいよ。わたしも何だかテンション上がっちゃって飛びついたから、ごめん」

 おっと、紅緒に肩で小突かれただけでまぁ、亘くんったら、何顔赤くしてるんだい。
 うぶですねぇ。
 そんなお楽しみのところ申し訳ないが。

「そろそろ樹が迎えに来るな」

 わざとらしく腕時計を見ると、亘が急に立ち上り頭を下げた。
 酔って潰れたのはこれが初めてじゃないが、紅緒が居たらそりゃバツが悪いか。
 コイツは平川さんの相手ができるウワバミ級だから、気にしても仕方ないんだが。

「今日はすまなかった。世話になったな、二人とも。ありがとう」

 亘がそう言ってオレたちを帰そうとする。
 樹も呼んで、一服とかないんかーい。

「えーっ。もう追い出す気。ひっどーい」

 もっと言ってやれ紅緒。
 なんならお泊りもいいぞ。

「ベーは、泊まっていくか?」

「いくいくーっ」

 鳩が豆鉄砲食らったような顔って、まさに今のおまえの顔だな亘。
 笑えるわ。

 もう少し虐めてやろうかと思ったら、タイミング悪く樹が来たようで呼び出し音が鳴った。

「ほら、迎えが来たぞ」

 何だ、シラケるな。ホッとしたような顔しやがって。

「忘れ物すんなよ~」 

 渋々と言った体で、紅緒が服を入れたゴミ袋を引っ提げる。

「ゴミ袋1枚もらったよ」

「それ、置いてけ。クリーニング僕が出すから」

「いーよ。どうせ他も出すから」

 莫迦か亘、おまえ。その中にはストッキングとか下着類も入ってんだよ。そんなもん渡せるか。
 つーか、おまえに見せるかよ。オレが止めるわ。
 
 おっと、荷物持ったまま片足上げっから。
 紅緒の二の腕を掴んでバランスを取ってやる。

 ん?

 しゃがんだ紅緒のどこを見てるんだ。あ゙ぁ゙?
 残念ながら、そっちからじゃ中身は見えませーん。

「わーちゃん、明日休みでしょ。トールちゃんが言ってた」

「平川先輩は」

 おお、やっと思い出してきたか。お前さんの上司だろ。

「平川さんなら、まー爺に連れられて出かけていったよ。心配ご無用って伝言頼まれてた」

「なんで……」

 オレと平川さんが知り合いって知らなかったのか。
 へぇー。

「樹と卒業まであそこでバイトしてたんだ。蝶タイ結んで、兄弟仲良くな」

「嵩ちゃんって、女性会員の人気すごかったのよ。じいちゃんは女性目当てで『オレの孫ハンサムだろう』って喜んで連れ回してた」

 お姉さんたちと握手するのがまー爺の若さの秘訣だからな。
 さて、エントランスに出たらさっさと紅緒を帰して、と。
 
「ここで、いいよ」

 どうせオレは戻ってくるし。エレベータまでで充分。

「下まで行くよ」

「ここで良いって。じゃ、また」

「わーちゃん、また明日」

 名残惜しそうな顔しやがって、待ってろや。
 オレ様が戻ってきてやるから。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...