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——シャーロットと出会ってから二週間——
駄目だ。
もう何度目かも分からない。ヴィクトリアは、無理矢理飲み込んだ人間の肉を吐き出した。
いつだったか、古い友人が言った言葉を思い出す。
『人の子を好きになってしまった。もう人間を食べられない』
馬鹿かと、その時のヴィクトリアは思った。
食い物に恋愛する間抜けが一体何処にいるのかと。
友人は気恥ずかしそうに頬を掻きながら、ただ笑っていた。
理解出来なかった。
『食べ物』に恋をし、食事が食えなくなり、身体がみるみる衰えている。このままだと、死ぬ。見ているだけのヴィクトリアにも分かる程だ。本人も必ず分かっているだろう。
なのに、何故此奴は食べずに微笑みながら、死ぬ事を選ぶのか。
本当に、分からなかった。
だが今なら、友人が人間を食べられなくなった、食べなくなった理由を理解出来る。
思い出すのだ。
人間を襲ったとき、好きになった彼女を思い出す。人間の怯える姿が、彼女と重なる。やっと手に掛け食べようとした肉が、彼女の肉に思えてしまう。
大好きな彼女がこんな肉片になることを想像しただけで、吐き気を催す。
もう、以前のようには暮らせないことが嫌でも分かった。
ヴィクトリアの体も、みるみる衰えている。
友人は食事をやめ、幸せそうに死んでいった。どんな事を考えていたのかは、大方想像できる。今のヴィクトリアと同じ事を考えていただろう。
ただ、ヴィクトリアは今ここで食事をやめる訳にはいかなかった。
席を外し、仕留めてきた獣を倉庫から食堂まで引き摺り出す。
それにナイフを突き刺して、溢れてきた血を啜った。
「おぇ...」
不味い。物凄く不味い。
人間を食べたときとはまた違った嘔吐感を催したが、我慢して血を吸い続けた。
これはただの延命に過ぎない。
あくまで主食を食べない以上、長くは生きられないのだ。だが、それでも今はよかった。
やがて夜が深まり、ヴィクトリアも就寝する時間となる。棺桶の中、ヴィクトリアは楽しそうに笑う彼女に想いを馳せた。
明日も、あの子に会いに行こう。
翌日。
日傘を刺して、ヴィクトリアは外に出た。
あの場所に、彼女は今日も来ているだろうから。
駄目だ。
もう何度目かも分からない。ヴィクトリアは、無理矢理飲み込んだ人間の肉を吐き出した。
いつだったか、古い友人が言った言葉を思い出す。
『人の子を好きになってしまった。もう人間を食べられない』
馬鹿かと、その時のヴィクトリアは思った。
食い物に恋愛する間抜けが一体何処にいるのかと。
友人は気恥ずかしそうに頬を掻きながら、ただ笑っていた。
理解出来なかった。
『食べ物』に恋をし、食事が食えなくなり、身体がみるみる衰えている。このままだと、死ぬ。見ているだけのヴィクトリアにも分かる程だ。本人も必ず分かっているだろう。
なのに、何故此奴は食べずに微笑みながら、死ぬ事を選ぶのか。
本当に、分からなかった。
だが今なら、友人が人間を食べられなくなった、食べなくなった理由を理解出来る。
思い出すのだ。
人間を襲ったとき、好きになった彼女を思い出す。人間の怯える姿が、彼女と重なる。やっと手に掛け食べようとした肉が、彼女の肉に思えてしまう。
大好きな彼女がこんな肉片になることを想像しただけで、吐き気を催す。
もう、以前のようには暮らせないことが嫌でも分かった。
ヴィクトリアの体も、みるみる衰えている。
友人は食事をやめ、幸せそうに死んでいった。どんな事を考えていたのかは、大方想像できる。今のヴィクトリアと同じ事を考えていただろう。
ただ、ヴィクトリアは今ここで食事をやめる訳にはいかなかった。
席を外し、仕留めてきた獣を倉庫から食堂まで引き摺り出す。
それにナイフを突き刺して、溢れてきた血を啜った。
「おぇ...」
不味い。物凄く不味い。
人間を食べたときとはまた違った嘔吐感を催したが、我慢して血を吸い続けた。
これはただの延命に過ぎない。
あくまで主食を食べない以上、長くは生きられないのだ。だが、それでも今はよかった。
やがて夜が深まり、ヴィクトリアも就寝する時間となる。棺桶の中、ヴィクトリアは楽しそうに笑う彼女に想いを馳せた。
明日も、あの子に会いに行こう。
翌日。
日傘を刺して、ヴィクトリアは外に出た。
あの場所に、彼女は今日も来ているだろうから。
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