6 / 26
第六話・お父さんが考えた「最強怪人弱点なし」
しおりを挟む
しばらくは怪獣の出現が無い、平和な日々が続いた。
(マヤのヤツも、このところは現れないし……昼間から風呂でも入るか)
オレはバスタブにお湯を入れて、しばらく居間でお湯が溜まるのを待った。
巨獣メガテリウム&古代植物怪獣デボンが踏み抜いた屋根は、マヤの復元光線とかで元の状態にもどっていた。
「便利だな破壊されても、元にもどる光線なんて」
マヤの話しだと復元光線は、死んだ生物も甦らせてしまうので、滅多に使いたくないとのコトだった。
「だって、お父さんあたし、侵略者だよ……いちいち壊れた建物を直していたら侵略が進まないじゃない……おばあちゃんの家は特別だから」
マヤの言葉を思い出して苦笑するオレ。
「確かにその通りだな……さてと、バスタブのお湯は溜まったかな?」
オレが浴室の扉を開けると、見知らぬ女の子が一人……入浴をしていた。
「失礼……」
慌てて扉を閉めたオレは、そうっと扉を開けて覗き込む。
お湯がバスタブから溢れているだけで、誰もいなかった。
(なんだ、今の? 幽霊?)
気を取り直して、お湯を止めたオレが脱衣場で脱ぎはじめた時──いきなり、マヤが瞬間移動で現れた。
「うわぁぁぁ!」
「お父さん、知らない人、見なかった?」
オレはさっきの女の子のコトを、言おうとしてやめた……状況がわからないまま、迂闊にマヤに喋るのは良くない気がする、タイムマシンの時の件もあるし。
「いや、見なかったな」
「そっか、転移座標が少しズレていたから別の場所に現れるのかな?」
マヤは腹のポケットを探って、あまり可愛くない眉が太いヌイグルミのキーホルダーを取り出して、オレに渡す……後からわかったコトだが、マヤが衣服の腹ポケットから出しているように見えるのは、腹に開いている袋から出しているらしい……地球人の血が混じったマンコ・カパック星人は先祖返りをして、腹に袋がある有袋人類で誕生するらしかった。
「これ、持っていて」
「なんだ、この殺し屋みたいな目つきが鋭いヌイグルミは?」
「怪獣は巨大だから現れてもすぐにわかるけれど……それ以外の敵の出現を教えてくれる妖精人形」
「可愛くねぇ……それ以外の敵ってなんだ?」
オレがマヤの答えを聞く前に、殺し屋妖精のヌイグルミが凄みのある声で叫ぶ。
「敵だ! 敵だ! 敵だ! 三時の方向に敵だ! 敵だ! 敵だ! ぶっ殺せ!」
マヤが騒ぐヌイグルミの頭を変形するほどの力で押さえつけると、警告の声は止まった。
「お父さん行くよ、今度の敵は強敵だよ」
◇◇◇◇◇◇
オレとマヤがヌイグルミが示した方向に向かうと、児童公園のブランコに一体の怪人が座っていた。
二種混合怪人……イカとカマキリの『イカカマキリ』……オレが作った設定は最強怪人【弱点なし】
「うわぁぁぁ、ヤバいヤツが現れた……どうかしていた、子供の時のオレ」
オレの姿に気づいた怪人イカカマキリは、ブランコから降りると丁重に頭を下げて言った。
「あたし……なんのために生まれてきたんですか? 何をするために存在しているんですか?」
弱点なしのイカカマキリから聞こえてきたのは、女の子の声だった。
「女の子? イカカマキリの中の人は女の子?」
そう言えば、中の人の設定はしてなかったのを、オレは思い出した。
怪人イカカマキリが泣きながら喋る。
「もしも弱点なしの、あたしが倒されちゃったら、後に続く怪人さんたち自信無くしますよ……どうして、一番強い怪人を最初に出したんですか……恨みます」
イカカマキリのカマが、オレに向って飛んできた……ヒーロー因子が組み込まれたオレは寸前でブーメランのようなカマをかわした。
「危ねぇ、何するんだ!」
「だって、あたし負けられないんです……あたしが負けたら他の怪人さんや魔人さんたちが困ります……死んでください」
少し離れた場所からマヤが、ガッツポーズをして言った。
「侵略怪人……止められるもんなら、止めてみな」
そんなに、オレに闘ってもらいたいのか……いいだろう、やってやる。
オレは変身する。
巨大ヒーローの等身サイズで、首にはマフラー、腹に変身アイテムがめり込んでいた。
イカカマキリが、嬉しそうな声を発する。
「相手をしてくれるんですね……じゃあ、あたしも、もう一種追加して三種混合強化怪人になります」
なにぃぃぃ?
イカカマキリにリングが加わって『イカカマキリング』になった。
カマとリングのダブル攻撃に加えて、イカの触手攻撃がオレを襲う。
(ヤバいくらい強い……ちょっと待て、確か前回マヤは「次はお父さんの弱点を責めてくる強敵だよ……覚悟してね」って言っていたような……オレのこのヒーローの弱点……まさか)
イカカマキリングが、いきなりオレに抱きついてきた。
「あたし、おじさまの弱点知っているんですよ……ここが、おじさまの弱点ですよね……コチョコチョ」
イカカマキリングは、オレの体をくすぐりはじめた。
身悶えするオレ。
「や、やめろぅ! くすぐられるのは苦手なんだ! やめてくれぇ!」
「降参するまで、やめません……ここか、ここがいいんかコチョコチョ」
「ぎゃはははっ」
オレはくすぐられて、ギブアップする。
「わ、わかった降参する! だから、やめてくれ……ぎゃはははっ」
オレは、怪人イカカマキリングに敗北を認めた──さすが、弱点なしの怪人強い。
オレに勝利したイカカマキリングは、かぶっていた怪人マスクを外して素顔を晒す。
(お風呂で入浴していた女の子? 怪人の頭はマスクだったのか?)
怪人マスクをかぶり直したイカカマキリングが、ペコリと一礼する。
「闘っていただいて、ありがとうございます……約束します、もうおじさまを困らせる侵略はしません、おじさまがピンチになった時には駆けつけます……それでは、おじさまごきげんよう」
そう言ってイカカマキリングは、無人で走行してきたオートバイに乗って走り去ってしまった。
変身を解いたオレは首をかしげる。
「なんだったんだ……いったい?」
腕組みをして考えていたマヤが呟く。
「そう言えば、ノートのページに鉛筆で書いた文字を消しゴムで消した跡がある『ヒーローの味方になる怪人』って書いてあった……って連絡が怪獣工場の方から、弱点なしのアノ怪人がヒーローの味方になる裏切り怪人だったか……失敗したぁ」
(マヤのヤツも、このところは現れないし……昼間から風呂でも入るか)
オレはバスタブにお湯を入れて、しばらく居間でお湯が溜まるのを待った。
巨獣メガテリウム&古代植物怪獣デボンが踏み抜いた屋根は、マヤの復元光線とかで元の状態にもどっていた。
「便利だな破壊されても、元にもどる光線なんて」
マヤの話しだと復元光線は、死んだ生物も甦らせてしまうので、滅多に使いたくないとのコトだった。
「だって、お父さんあたし、侵略者だよ……いちいち壊れた建物を直していたら侵略が進まないじゃない……おばあちゃんの家は特別だから」
マヤの言葉を思い出して苦笑するオレ。
「確かにその通りだな……さてと、バスタブのお湯は溜まったかな?」
オレが浴室の扉を開けると、見知らぬ女の子が一人……入浴をしていた。
「失礼……」
慌てて扉を閉めたオレは、そうっと扉を開けて覗き込む。
お湯がバスタブから溢れているだけで、誰もいなかった。
(なんだ、今の? 幽霊?)
気を取り直して、お湯を止めたオレが脱衣場で脱ぎはじめた時──いきなり、マヤが瞬間移動で現れた。
「うわぁぁぁ!」
「お父さん、知らない人、見なかった?」
オレはさっきの女の子のコトを、言おうとしてやめた……状況がわからないまま、迂闊にマヤに喋るのは良くない気がする、タイムマシンの時の件もあるし。
「いや、見なかったな」
「そっか、転移座標が少しズレていたから別の場所に現れるのかな?」
マヤは腹のポケットを探って、あまり可愛くない眉が太いヌイグルミのキーホルダーを取り出して、オレに渡す……後からわかったコトだが、マヤが衣服の腹ポケットから出しているように見えるのは、腹に開いている袋から出しているらしい……地球人の血が混じったマンコ・カパック星人は先祖返りをして、腹に袋がある有袋人類で誕生するらしかった。
「これ、持っていて」
「なんだ、この殺し屋みたいな目つきが鋭いヌイグルミは?」
「怪獣は巨大だから現れてもすぐにわかるけれど……それ以外の敵の出現を教えてくれる妖精人形」
「可愛くねぇ……それ以外の敵ってなんだ?」
オレがマヤの答えを聞く前に、殺し屋妖精のヌイグルミが凄みのある声で叫ぶ。
「敵だ! 敵だ! 敵だ! 三時の方向に敵だ! 敵だ! 敵だ! ぶっ殺せ!」
マヤが騒ぐヌイグルミの頭を変形するほどの力で押さえつけると、警告の声は止まった。
「お父さん行くよ、今度の敵は強敵だよ」
◇◇◇◇◇◇
オレとマヤがヌイグルミが示した方向に向かうと、児童公園のブランコに一体の怪人が座っていた。
二種混合怪人……イカとカマキリの『イカカマキリ』……オレが作った設定は最強怪人【弱点なし】
「うわぁぁぁ、ヤバいヤツが現れた……どうかしていた、子供の時のオレ」
オレの姿に気づいた怪人イカカマキリは、ブランコから降りると丁重に頭を下げて言った。
「あたし……なんのために生まれてきたんですか? 何をするために存在しているんですか?」
弱点なしのイカカマキリから聞こえてきたのは、女の子の声だった。
「女の子? イカカマキリの中の人は女の子?」
そう言えば、中の人の設定はしてなかったのを、オレは思い出した。
怪人イカカマキリが泣きながら喋る。
「もしも弱点なしの、あたしが倒されちゃったら、後に続く怪人さんたち自信無くしますよ……どうして、一番強い怪人を最初に出したんですか……恨みます」
イカカマキリのカマが、オレに向って飛んできた……ヒーロー因子が組み込まれたオレは寸前でブーメランのようなカマをかわした。
「危ねぇ、何するんだ!」
「だって、あたし負けられないんです……あたしが負けたら他の怪人さんや魔人さんたちが困ります……死んでください」
少し離れた場所からマヤが、ガッツポーズをして言った。
「侵略怪人……止められるもんなら、止めてみな」
そんなに、オレに闘ってもらいたいのか……いいだろう、やってやる。
オレは変身する。
巨大ヒーローの等身サイズで、首にはマフラー、腹に変身アイテムがめり込んでいた。
イカカマキリが、嬉しそうな声を発する。
「相手をしてくれるんですね……じゃあ、あたしも、もう一種追加して三種混合強化怪人になります」
なにぃぃぃ?
イカカマキリにリングが加わって『イカカマキリング』になった。
カマとリングのダブル攻撃に加えて、イカの触手攻撃がオレを襲う。
(ヤバいくらい強い……ちょっと待て、確か前回マヤは「次はお父さんの弱点を責めてくる強敵だよ……覚悟してね」って言っていたような……オレのこのヒーローの弱点……まさか)
イカカマキリングが、いきなりオレに抱きついてきた。
「あたし、おじさまの弱点知っているんですよ……ここが、おじさまの弱点ですよね……コチョコチョ」
イカカマキリングは、オレの体をくすぐりはじめた。
身悶えするオレ。
「や、やめろぅ! くすぐられるのは苦手なんだ! やめてくれぇ!」
「降参するまで、やめません……ここか、ここがいいんかコチョコチョ」
「ぎゃはははっ」
オレはくすぐられて、ギブアップする。
「わ、わかった降参する! だから、やめてくれ……ぎゃはははっ」
オレは、怪人イカカマキリングに敗北を認めた──さすが、弱点なしの怪人強い。
オレに勝利したイカカマキリングは、かぶっていた怪人マスクを外して素顔を晒す。
(お風呂で入浴していた女の子? 怪人の頭はマスクだったのか?)
怪人マスクをかぶり直したイカカマキリングが、ペコリと一礼する。
「闘っていただいて、ありがとうございます……約束します、もうおじさまを困らせる侵略はしません、おじさまがピンチになった時には駆けつけます……それでは、おじさまごきげんよう」
そう言ってイカカマキリングは、無人で走行してきたオートバイに乗って走り去ってしまった。
変身を解いたオレは首をかしげる。
「なんだったんだ……いったい?」
腕組みをして考えていたマヤが呟く。
「そう言えば、ノートのページに鉛筆で書いた文字を消しゴムで消した跡がある『ヒーローの味方になる怪人』って書いてあった……って連絡が怪獣工場の方から、弱点なしのアノ怪人がヒーローの味方になる裏切り怪人だったか……失敗したぁ」
1
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる