プラヴィテル・ヴレーメニ〜異世界召喚された俺は時を支配して神を超える〜

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第一章一部〜異世界へ〜

第七話 誘惑

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 俺が牢屋に入れられるという事件を起こしてから一週間ほどが経とうとしていた。あの事件のせいで俺には監視役が付き、さらに勇者の行動に制限を設けられてしまっていた。そのおかげで俺はクラスの連中から蔑まれ、一層ぼっち力が増しているのだった。

 それにしても、みんな様になってるよなぁ~

 相変わらず何の能力もない俺は、監視という制限により暇を潰す方法を限定されたため、今はこうやってみんなの訓練を見学してるのだった。
 話を戻すが確かに彼らの成長は著しいものだった。いくらステータスによる補正が入るとはいえ、全くの素人が戦いに出ればすぐにやられることもあるだろう。ここでの訓練でレベルが上がることは多くないだろうが動きはだいぶ変わってきていることは完全素人の俺でも分かる。言ってみれば今はゲーム序盤のチュートリアル的段階だ。操作性を学ぶことは大事なことである。

 と、すると。そろそろ最初のイベントが来る頃かもしれないな

 と、そこで、団長のメリアから集合がかかった。普段このタイミングで召集をかけられることはないので、余程の緊急事態か俺の予測通り、チュートリアルの最終段階が来るかどうかの二択だろう。しかし、周囲の騎士達を見ると焦った様子は特になく、寧ろ何かに納得しているようなそんな感じも見て取れた。

「うむ、君達は初めに比べ成長してきた。ステータスは変わらずとも武器の扱いや攻撃の立ち回りなどは慣れてきているはずだ。そこで君達には訓練の最終段階に移行してもらう」

 クラスの奴らは「最終段階?」「やっぱ、モンスター倒すとか?」「私なんて私なんて、グスン」「先生、遊び人は武器とか使わないから仕方ないですよ」とざわざわと小声で喋り始めた。

 っていうか先生!?何で泣いたんだよ!遊び人としての職業があるだけましじゃねぇか!こちとらステータスすらねぇんだぞ?あぁん!?

 俺も心の中で発狂しつつぼっちフィールドをしっかりと発動していた。そしてメリアが声を発したことにより再び場は静まる。

「静粛に、君達に科す最終訓練とはーー」

 その先が気になるのか、みんな一斉にゴクリと飲み込む。

「実戦演習として迷宮ダンジョンに潜入してもらう」

「「「お、おおぉぉー!!!」」」

 俺以外のほぼ全員が立ち上がり、盛り上がっていた。

 それからダンジョンの詳細と潜入日程を説明された後、今日の訓練は終了し、俺達は解散することになった。

 いや、待て
 このまま解散でいいのか?いや、よくない
 俺はどうなる?あんな事件を起こした後だから俺を勇者達から引き離そうとは考えにくい
 となるとやはり俺はダンジョンに同行することになるのか?
 うーん、分からん

「あ、あのぉ」

 俺は戻ろうとするメリアに声をかけて引き留める。

「む、君は……確か…無能力者だったか?」

「え、?あ、はい。まぁ、そうですね……」

 あまりにもドストレートなその言葉は俺の紙切れでできたか弱いハートをズタズタに切り裂いていった。

 いや、そこまではいかないというか…確かに何の能力もないけれども…

「それで?用件はなんだ?」

 そう言ってこちらを振り向く際、金色に輝く髪をなびかせる様は一瞬見惚れてしまうほど美しかった。

「あっと、あのぉ…ですね。ダンジョン、あっ、迷宮のことなんですけど……」

 俺はもじもじと下を向きながら小声で喋る。やはりクラスの連中とも殆ど話したことのない俺に、初対面の美人と喋る能力は当然備わってるはずもないわけだった。

「なんだ、もっとはっきりと喋れ。私は忙しいんだ、早くしろ」

 その態度に若干苛立ちを覚えたが、俺は気を取り直してしっかりと話す。

「はい、その迷宮での僕の扱いなんですけど、そもそも僕はどう行動すればいいのでしょうか?」

 まぁ、単純に付いていかないとダメなのかどうかの確認である。

「うん?ああ、君は確か勝手な行動をして監視をつけられている奴だったか。そうだな、君は元々ついて来させるつもりはなかったが、規律違反の罰則として荷物持ちとしてついてきてもらおうか」

 そう淡々と話すメリアに俺の思考は少し追いつけていない。

 え?俺、これ、もしかしてだけど、余計なことした?
 いや、今完全について来させる気ないって言ってたよね!?マジか!マジでか!やらかした~!!うおぉ!!巻き戻してぇ!数分前の俺に戻りてぇ!!

 俺が一人で頭を抱えて悩んでいるうちにメリアは何かを喋って戻って行ってしまった。しかし、俺はそのことにすら気づけないまま脳内で叫びまくっていた。

 それから数日が経ち、実戦演習、すなわちダンジョン潜入の前日を迎えていた。今日の訓練は明日のこともあるからと早めに切り上げ、準備に取り掛かった。
 そして、結局ついて行く羽目になった俺に与えられた役は、全班の荷物持ちだった。今回の潜入にあたっては、班ごとでの潜入となり、各班20階層のイエローオオムカデを討伐して帰還するまでが内容だった。そして俺はその行程に4回も付き合わないといけないのである。騎士の人達が付き添ってくれるとはいえ、4周も俺の体力が持つかどうか、不安を抱えつつ、俺も明日の準備をしていた。

 俺の場合、鎧や武器の所持はできないので特に準備をすることはないのだが、みんなに合わせてそれとなくそれっぽいことをしていたりした。

 それから夜になり、風呂から上がって部屋に戻ると先に戻ったはずの雨宮は居らず、トイレか何かだろうと思い、とりあえずベッドに横たわった。

 コンコン

 俺がゴロゴロと寝転がってボーッとしていると、突然ドアをノックする音が聞こえる。わざわざノックするのだから雨宮ではないだろうと思い、少しめんどくさいながらも、雨宮の友人達の誰かだろうかと予想を立ててドアに向かう。そして俺は頭を掻きつつ、あくびを見せながらドアを開けた。

「悪いが今、雨宮はいないん…だが………」

 しかし、そこにいたのは、俺の予想とは全く的外れな人物だった。

「あ、あのぉ……こんな時間に、ごめんね」

 そう言って目の前に立つのは小鳥遊綾音、クラスで美人と言われるその人だった。

 え?あれ?何でだ?

 俺の足りない脳味噌ではどうにも思考が追いつかない。そもそも男子に与えられた部屋と女子の部屋では階が違う。何十階まであるかもわからない城ではあるが、女子と男子では3、4階ほどの差はあったはずだ。よっぽどの用事でもない限りわざわざ足を運びたいと思うはずもない。ではなぜここに来るに至ったか。俺が唯一思い浮かぶ目的はこれしかない。

「悪いが雨宮はいなんだ。日を改めるか、伝言を紙に書いて渡してくれ」

 俺は自分の出した答えに自信があった。故に俺は一瞬でペンと紙を渡すことができたし、小鳥遊相手に堂々と喋ることもできた。我ながら完璧すぎて恐ろしい。

「あ、あのぉ……私、別に雨宮君に会いに来たわけでもないだけど」

 小鳥遊は苦笑いを浮かべてそう言った。

 なんだと!?交友関係以外において全ての事象を普通で通ってきたこの俺が読みを外すなんて!

「う、うんと……ね、今日は神谷君に話があってきたんだ。少し、いいかな?」



 ーー俺と小鳥遊は俺のベッドに並んで座った。

 や、やべぇ……。

 俺と小鳥遊との間に半人分のスペースがあるとはいえかなり近い。手なんて伸ばさなくてもすぐに触れてしまうことも可能な状況だ。

 横目で見る彼女は風呂上がりなのだろうか。少し体は火照っており、艶やかな髪は小鳥遊のさらなる魅力を引き出しているようにみえる。こんなにも可愛く、美しい女の子と二人だけの空間に閉じ込められるなんて、世の大多数の男子高校生に知れたら俺は、生き延びることが果たしてできるのだろうか。

「ね、ねぇ……。」

 すると突然、小鳥遊の方から声がかかった。異性とのドキドキ無言タイム、これにて終了!名残惜しいが聞かないわけにもいかない。貴重な経験であった。

「あ、あのさ……。さ、最近は、どう……なのかな……?」

「え……?」

「あ、いや、別に大した意味はないよ!?た、ただ、この世界に来て、神谷君、一人でいること多いし、ちょっと心配……いやいや、別に変なことは思ってないよ……!」

 うん?うーん?今、小鳥遊さんの言葉に大変引っかかる内容が……いや、そもそも全体的に引っかかってるんだけれども

「…えっ…と……、もしかして、俺のことを、心配して……たり?」

「……ッ!!」

 俺が少し自信なさげに聞いてみると、小鳥遊はボッと顔を赤くし俯いてしまった。

 ………

 えぇぇぇぇぇぇ!?!?!?
 な、なんだ?夢か!?夢なのか?
 約17年間生きてきて初めてのこの状況に俺は嬉しいやら不安やらで頭の中が大混乱していた。

 お、落ち着け。まずは現実かどうか確かめるために手をつねろう。
 俺は左手の甲を爪を立ててつねる。

 痛い、痛いぞ!これは現実、つまり俺は勝ち組!

「そ、それでさ…」

 俺が心の中でサンバを踊っていると、小鳥遊が再び顔を上げて、今度はこちらを向いて話しかけてきた。俺はその目を見る。不思議とその目に吸い込まれるような感覚だった。

 はっ……ってあれ?今、何か……?

「じゃあ、そういうことだから、また明日ね」

「うん?あ、ああ。また明日……」

 俺は部屋を出て行く小鳥遊に手を振る。
 うーん何か引っかかる気もするが……ま、いっか

 俺はベッドに寝転がる。こんなにも明日が待ち遠しいなんていつぶりだろうか。突然の事ではあったが、それでもクラスの美少女に好意を持たれていたのは単純に嬉しい。俺は雨宮にでも自慢しようとも思ったが、なんか面倒臭くなって、結局寝てしまった。
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