プラヴィテル・ヴレーメニ〜異世界召喚された俺は時を支配して神を超える〜

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第一章二部〜龍の迷宮編〜

第十二話 レッスン

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 迷宮の奥底に落ちてから二週間ほどがたった頃。俺は、二十階程さらに地下へ降りていた。

 ゼロの指導を受けながらモンスターを次々と倒していき、だいぶコツを掴んできたと思う。相手の行動を読み、自分の攻撃につながる。言ってることは簡単だが、戦闘経験の殆どない俺にとってはかなり難航した。

【あ~!もう!なんでそこで一歩踏み出さないんだ!その一歩を詰めれば十秒は速く倒せていた!お前はビビリ過ぎだ!もっと自信持って踏み込め!】

 ゼロの熱血指導はこの二週間、休むことを知らず、寝る間も惜しんで付き合わされた。そのおかげもあってか、大分簡単に敵を倒せるようになってきた。

 身体もすぐにボロボロになるが、ゼロの神力のせいか少し経てばすぐに回復した。神力とは生命いのちを宿す力のことで、体に必要な栄養を供給してくれる。そのため俺はこの二週間なにも食べていない。

「わかってるよ!もう一回だ!」

 このようなやりとりは、既に百を超えていた。しかし、不思議と時間の経過はあまり感じなかった。

 さらに一週間後

「よし!大分良いんじゃないか?」

 俺は深層世界に降りていた。次の段階へ進むため、新しくレクチャーを受けるからだ。

「じゃあ、次はこいつだな」

 そう言ってゼロは右手を前へ突き出す。すると、ゼロの手のひらが赤く光り、文字のような物が書かれた円形の模様が現れた。

「『火炎』」

 そして次の瞬間その模様から炎が吹き出した。

「うおっ!?」

「ハハハ!ビビったか?今のが『魔法』だ。次にお前にはこれを習得してもらう!」

「今のが……」

 魔法という言葉に俺は胸を打たれた。この世界に来てからようやく本物に触れ合えると思うと、涙ぐんでしまいそうだった。

「フッ、まだ感動するのは早いぜ。お前にはこれから、ド基礎の中のド基礎!魔力操作からやってもらう!と、その前に。まずは魔力について教える必要がある」

 すると、どこから取り出してきたのか分からない黒板に白いチョークで書き始めた。

「まずは魔力の素、『魔素』について説明しておこう。魔素とは、すべての個体に存在する特殊なエネルギーを持った粒子の事だ。その主な発生源は深層世界魂の間、その中心核であるが、それはあくまでも一例にしか過ぎない」

「どういう事だ?」

「ああ、実際には発生させるだけではないということだ。この世界には至る所に魔素が漂っている。そして核を持つ個体はそれを吸収している。つまり体内に存在している魔素は自ら作り出した物と、周囲の漂っている物の二種類があるってわけだ」

「なるほど……なら、周囲の魔素を使えば相当強力な魔法も使えるんじゃないか?」

「はい、ブッブー!!ったく、これだから異世界ラノベの読み過ぎは…ブツブツ」

 イラッ!

「なんだと!?このヤロ~!!」

 俺はゼロの胸ぐらでも掴みに掛かろうとするが、簡単にあしらわれてしまう。

「いいか?周囲の魔素を取り込めてもその比は大体8:2が限界だ。それ以上取り込んだらアレルギー反応を起こしてショック死するのが目に見えてる。物事にはそれぞれ相性ってモノがある。魔素もまた然りだ。

 それに魔素には性質があるんだよ。まぁそれは置いといて…今のお前は魔素の感知もできやしねぇ。そのド基礎をできるようなってからだ。幸いにもお前には俺の力が一部譲渡されている。会得するのに3日も掛からんだろう」

 そこからはひたすら体内に流れる魔素を感じ取る練習だった。とはいえ、少し前まで魔力なんて縁のなかった俺には、その存在感じ取るなんて不可能に近い。

【初めは誰もそういうもんだ。ただ、この世界にいる奴らはそれが幼い頃に練習するから身につくのが早いだけ。お前はその分のハンデもあるからな。それに無いところから何かを見つけ出すのは骨が折れるだろう?】

 その瞬間、俺の中で何が通っていくのを感じた。温かい、そして力が漲るようだった。

「これが、魔素の流れ……魔力」

【お?魔素の流れを感じ取れたか?お前一人じゃ自身の魔素を動かせないからな。俺の方で中から少し勢いをつけさせてもらった】

 上から下、下から上、右から左、左から右へと魔素は縦横無尽に駆け巡る。

【よし、なら次はそいつをつかめ!つかんで離すを繰り返すことができたら合格だ】

 俺は手をイメージする。目の前を流れていく光の粒子に手を伸ばす。しかし、触れようとすると、粒子は逃げていく。

「クソッ!もう一回だ!」

 俺はもう一度目を瞑り、暗闇の中から光の粒子を見出していく。しかし、現れる粒子はどれもバラバラで、とても掴めるモノではなかった。

「なぁ……?アンタの力で魔法が使えるようにはならないのか?

 ーー言ってみればアンタの力は間違いなくチート級だ。前みたいに力を渡すことはできないのか?」

 少し疲れたように深層世界で腰を下ろしていた俺は、目の前の白髪のおっさんに聞いてみた。

「あぁ?お前、三歳児に包丁を渡して、今から料理をしろっていうのか?今のお前はそれと同じだ。使い方もろくに分からないガキに力を渡したところで暴走して身を滅ぼすだけだ。

 それに、幸いにもこのダンジョンは“特殊”な力によって守られているみたいだからな。そう易々と見つかることもないだろう」

 呑気だなーー。なんて思いつつ、確かにゼロの言う通りだった。今の俺が、突然大きな力を手にしたところで抱え切れる筈もない。今は従うのが吉だろう。

 再び俺は魔素流れを掴もうと試みる。すると、ゼロ方からアドバイスが飛んできた。

【苦戦しているようだから一つ助言をしてやる。円で捉えてみろ。ま、あとはお前の頑張り次第だな】

「おい!それだけか?ちょっと待てーー。あの野朗、完全に無視してやがる」

 それにしても円とはなんだ?いや、円が何かは勿論分かる。けど、これとなんの関係があるんだ?

「円で……捉える…」

 俺はまた目を閉じる。暗闇の中、今度は円を作ってみることにした。

 弧を描き、その中の魔素を視認する。俺は頭の中で、それに手を伸ばす。しかし、先程と同様に粒子は逃げていってしまった。

 クソッ!なんでだ?

 ゼロの教え通り、俺はまばらだった魔素を一つの円の中に集め、俺はその中に手を伸ばしていた。

 ん?

 ゼロは言ったな。『円』だと。

 俺はそれを確かめるために魔素を感知する。そして先程同様に円を描いた。

 点々の魔素を円の中で感知する。

 俺はそれを円の外から掴んでみた。

「ッ!」

【フッ、ようやく分かったか】

 俺が気付くとゼロが声を掛けてきた。

【『円で捉える』とはつまり、魔素を粒子で数えずに、塊ーー質量で数えろって事だ】

 俺は手に握られた魔素を感知する。俺の右手には確かにそれがあった。

【魔素っていうのは水と同じだ。水は水分子が互いに結びついてようやく水として形を作る。魔素も個々として捉えたら微小過ぎて触れることすらできない。ただそれを一つの大きな塊として捉えたら掴むことができるんだ。

 ま、魔素っていうのは光と同じで実際には掴むことは出来ないけどな。ただ今の感覚は大切だ。魔力とは魔素量示し、魔力を操るには魔素の原理を理解する必要がある。今からお前にその全てを叩き込んでやる】

 ーーこうして、俺とゼロの特訓パート2が始まった。それは最下層に降りるまで続き、その日数は一ヶ月を優に超えていた。
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