プラヴィテル・ヴレーメニ〜異世界召喚された俺は時を支配して神を超える〜

401

文字の大きさ
13 / 26
第一章二部〜龍の迷宮編〜

第十三話 レッスンII

しおりを挟む
 迷宮の奥底に落ちてから二週間ほどがたった頃。俺は、二十階程さらに地下へ降りていた。

 ゼロの指導を受けながらモンスターを次々と倒していき、だいぶコツを掴んできたと思う。相手の行動を読み、自分の攻撃につながる。言ってることは簡単だが、戦闘経験の殆どない俺にとってはかなり難航した。

【あ~!もう!なんでそこで一歩踏み出さないんだ!その一歩を詰めれば十秒は速く倒せていた!お前はビビリ過ぎだ!もっと自信持って踏み込め!】

 ゼロの熱血指導はこの二週間、休むことを知らず、寝る間も惜しんで付き合わされた。そのおかげもあってか、大分簡単に敵を倒せるようになってきた。

 身体もすぐにボロボロになるが、ゼロの神力のせいか少し経てばすぐに回復した。神力とは生命いのちを宿す力のことで、体に必要な栄養を供給してくれる。そのため俺はこの二週間なにも食べていない。

「わかってるよ!もう一回だ!」

 このようなやりとりは、既に百を超えていた。しかし、不思議と時間の経過はあまり感じなかった。

 さらに一週間後

「よし!大分良いんじゃないか?」

 俺は深層世界に降りていた。次の段階へ進むため、新しくレクチャーを受けるからだ。

「じゃあ、次はこいつだな」

 そう言ってゼロは右手を前へ突き出す。すると、ゼロの手のひらが赤く光り、文字のような物が書かれた円形の模様が現れた。

「『火炎』」

 そして次の瞬間その模様から炎が吹き出した。

「うおっ!?」

「ハハハ!ビビったか?今のが『魔法』だ。次にお前にはこれを習得してもらう!」

「今のが……」

 魔法という言葉に俺は胸を打たれた。この世界に来てからようやく本物に触れ合えると思うと、涙ぐんでしまいそうだった。

「フッ、まだ感動するのは早いぜ。お前にはこれから、ド基礎の中のド基礎!魔力操作からやってもらう!と、その前に。まずは魔力について教える必要がある」

 すると、どこから取り出してきたのか分からない黒板に白いチョークで書き始めた。

「まずは魔力の素、『魔素』について説明しておこう。魔素とは、すべての個体に存在する特殊なエネルギーを持った粒子の事だ。その主な発生源は深層世界魂の間、その中心核であるが、それはあくまでも一例にしか過ぎない」

「どういう事だ?」

「ああ、実際には発生させるだけではないということだ。この世界には至る所に魔素が漂っている。そして核を持つ個体はそれを吸収している。つまり体内に存在している魔素は自ら作り出した物と、周囲の漂っている物の二種類があるってわけだ」

「なるほど……なら、周囲の魔素を使えば相当強力な魔法も使えるんじゃないか?」

「はい、ブッブー!!ったく、これだから異世界ラノベの読み過ぎは…ブツブツ」

 イラッ!

「なんだと!?このヤロ~!!」

 俺はゼロの胸ぐらでも掴みに掛かろうとするが、簡単にあしらわれてしまう。

「いいか?周囲の魔素を取り込めてもその比は大体8:2が限界だ。それ以上取り込んだらアレルギー反応を起こしてショック死するのが目に見えてる。物事にはそれぞれ相性ってモノがある。魔素もまた然りだ。

 それに魔素には性質があるんだよ。まぁそれは置いといて…今のお前は魔素の感知もできやしねぇ。そのド基礎をできるようなってからだ。幸いにもお前には俺の力が一部譲渡されている。会得するのに3日も掛からんだろう」

 そこからはひたすら体内に流れる魔素を感じ取る練習だった。とはいえ、少し前まで魔力なんて縁のなかった俺には、その存在感じ取るなんて不可能に近い。

【初めは誰もそういうもんだ。ただ、この世界にいる奴らはそれが幼い頃に練習するから身につくのが早いだけ。お前はその分のハンデもあるからな。それに無いところから何かを見つけ出すのは骨が折れるだろう?】

 その瞬間、俺の中で何が通っていくのを感じた。温かい、そして力が漲るようだった。

「これが、魔素の流れ……魔力」

【お?魔素の流れを感じ取れたか?お前一人じゃ自身の魔素を動かせないからな。俺の方で中から少し勢いをつけさせてもらった】

 上から下、下から上、右から左、左から右へと魔素は縦横無尽に駆け巡る。

【よし、なら次はそいつをつかめ!つかんで離すを繰り返すことができたら合格だ】

 俺は手をイメージする。目の前を流れていく光の粒子に手を伸ばす。しかし、触れようとすると、粒子は逃げていく。

「クソッ!もう一回だ!」

 俺はもう一度目を瞑り、暗闇の中から光の粒子を見出していく。しかし、現れる粒子はどれもバラバラで、とても掴めるモノではなかった。

「なぁ……?アンタの力で魔法が使えるようにはならないのか?

 ーー言ってみればアンタの力は間違いなくチート級だ。前みたいに力を渡すことはできないのか?」

 少し疲れたように深層世界で腰を下ろしていた俺は、目の前の白髪のおっさんに聞いてみた。

「あぁ?お前、三歳児に包丁を渡して、今から料理をしろっていうのか?今のお前はそれと同じだ。使い方もろくに分からないガキに力を渡したところで暴走して身を滅ぼすだけだ。

 それに、幸いにもこのダンジョンは“特殊”な力によって守られているみたいだからな。そう易々と見つかることもないだろう」

 呑気だなーー。なんて思いつつ、確かにゼロの言う通りだった。今の俺が、突然大きな力を手にしたところで抱え切れる筈もない。今は従うのが吉だろう。

 再び俺は魔素流れを掴もうと試みる。すると、ゼロ方からアドバイスが飛んできた。

【苦戦しているようだから一つ助言をしてやる。円で捉えてみろ。ま、あとはお前の頑張り次第だな】

「おい!それだけか?ちょっと待てーー。あの野朗、完全に無視してやがる」

 それにしても円とはなんだ?いや、円が何かは勿論分かる。けど、これとなんの関係があるんだ?

「円で……捉える…」

 俺はまた目を閉じる。暗闇の中、今度は円を作ってみることにした。

 弧を描き、その中の魔素を視認する。俺は頭の中で、それに手を伸ばす。しかし、先程と同様に粒子は逃げていってしまった。

 クソッ!なんでだ?

 ゼロの教え通り、俺はまばらだった魔素を一つの円の中に集め、俺はその中に手を伸ばしていた。

 ん?

 ゼロは言ったな。『円』だと。

 俺はそれを確かめるために魔素を感知する。そして先程同様に円を描いた。

 点々の魔素を円の中で感知する。

 俺はそれを円の外から掴んでみた。

「ッ!」

【フッ、ようやく分かったか】

 俺が気付くとゼロが声を掛けてきた。

【『円で捉える』とはつまり、魔素を粒子で数えずに、塊ーー質量で数えろって事だ】

 俺は手に握られた魔素を感知する。俺の右手には確かにそれがあった。

【魔素っていうのは水と同じだ。水は水分子が互いに結びついてようやく水として形を作る。魔素も個々として捉えたら微小過ぎて触れることすらできない。ただそれを一つの大きな塊として捉えたら掴むことができるんだ。

 ま、魔素っていうのは光と同じで実際には掴むことは出来ないけどな。ただ今の感覚は大切だ。魔力とは魔素量示し、魔力を操るには魔素の原理を理解する必要がある。今からお前にその全てを叩き込んでやる】

 ーーこうして、俺とゼロの特訓パート2が始まった。それは最下層に降りるまで続き、その日数は一ヶ月を優に超えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...