プラヴィテル・ヴレーメニ〜異世界召喚された俺は時を支配して神を超える〜

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第一章二部〜龍の迷宮編〜

第十四話 相棒

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 俺が降りると、そこにはいつものようにゼロが立っている。深層世界の最深部はいつも暗く、光を放っているゼロはすぐに目がつく。

 この光景もこれが最後か……というか、こいつはずっと一人でここにいたんだよな……

「そんな顔をするな、俺はお前の中で生き続けるんだ。顔を合わせることはないかも知れないが、完全なお別れじゃない」

 ゼロは少し寂しそうにする俺を見て、励まそうとする。

「分かったよ」

 俺はゼロの言葉で少し表情が明るくなった。

「よし、じゃあ、今から俺を悠二の魂に同化させる」

 そしてゼロは、同化の手順を説明し始めた。
 俺は、そんなゼロの放つ一言一句を聞き漏らさないようにしっかりと聞く。

「まずは、俺をここに繋ぐ鎖を解く。あとは自由になった俺がその魂同化するんだ」

 そう言って、ゼロは俺からあの特殊な魔法陣を出す。
 そして、ゼロはそれに手を当て、ゆっくりと回して解除していく。
 すると、封印が解けて、ゼロの首に巻きついてたチョーカーのようなものが砕け散る。

「ふぅ、久々の自由だな。でも安心しろ、魂なんて食わねぇからよ」

 そして、ゼロは何やら呪文を唱え出した。ゼロが何を言っているのかは分からないが、俺は黙ってゼロを待った。
 ゼロが一通り唱え終わると、地面に大きめの魔法陣が出現した。
 その魔法陣は白い光を放ち、俺たちを包み込む。そして、ゼロはこちらに近づてくる。

「ったく、そんな顔をするなって言ってんだろ、」

 ゼロは俺の額を小突く。俺は少しよろめくが、まだ何も言えずにいた。

「はぁ、じゃあな」

 ゼロはだんだん身体が薄くなっていく。俺はそんなゼロを見て、焦り、大声を出して呼び止める。

「ッ待てよ!

 俺はどうしたらいい!?この先お前なしでどう道を決めればいい!?」

 ゼロは少し微笑み、俺の頭の上に手を置いて、

「そんなの知ったことかよ」

 ゼロはそれだけを告げると、光の塊となって俺の中に入り込む。
 すると同時に、ものすごい量の情報が俺の頭の中に入り込む。

「これは……」

 それは、全てゼロの記憶だった。
 ゼロが創造神としてこの世界に君臨してた時や、魔界軍と戦った時、そして、俺の中から見ていた時などのゼロの記憶が俺の記憶として刻まれる。
 その中にはメッセージも入っていた。

【あー、あー、聞こえるか?】

 さっきまで目の前にいたのになんだか懐かしく感じてしまう。
 ゼロは音声だけを俺の頭の中に直接、ゼロの記憶として送り込んでくる。

【ったく、たぶんお前のことだ。俺がいなくなって、どうしたらいいのか分からなくなっているんだろ。まぁ、その気持ちは分からんでもない】

 ゼロは俺の気持ちを見透かすかのように、語り始める。

【俺はお前が生まれたときから、ずっと見てきた。

 楽しいときも、悲しいときも全部だ。

 お前はここまでにとてつもない程の苦しみを味わってきたはずだ。

 俺はそれを知っている。お前が一人で泣いていたこととかな。

 そして悠二、お前の心がそれに伴って、強くなっていることもな。

 だから、俺はお前にこうしろとか、ああしろとかなんて言わない。

 お前の望む通りに動けばいい。

 俺はお前が強いのを知っている。

 だから、俺がいなくても、お前なら大丈夫だ。

 俺はお前を……神谷    悠二を信じてる

 そして最後にもう1つだけだが………】

 俺は目に涙を浮かべ、その言葉の一つ一つを噛みしめる。
 声と共に辺りの光が消えると、俺はただ何もない暗闇を見つめていた。
 俺は覚悟を持った。
 ゼロの世界を守ると。
 ゼロの創ったこの世界を救うと。
 数週間、数ヶ月間しか共に会話をしてこなかったが、それでも俺は、ゼロを信じて進むことにした。
 そうして俺は深層世界をあとにする。

 ここともお別れだな…

 俺が深層世界から戻ると、黒騎士は両手の掌を俺に突き出し、その前に黒騎士の背丈ほどある魔法陣を展開していた。
 黒騎士はそのまま俺に向かって打ち込む。それは真っ黒いエネルギー光線で、凄まじいほどの魔力が込められていた。
 俺はそれを直に受ける。俺の身体全体を黒い光が包み込んで服とかがボロボロになっていった。だが、実際にはほとんどダメージは入ってない。
 黒騎士の攻撃が終わり、視界が開けると、黒騎士は驚いた様子でこちらを見ていた。

 《ナゼ、マダ、イキテ、イル?》

 黒騎士は怪訝な面持ちで少し後ずさりながら俺を警戒する。

「残念だが、今の俺にお前の常識は何一つ通用しない」

 俺は少し高揚した気分で、自分の拳を握りしめ、自らの力を確かめる。

 《オマエ、キケン、ココデ、ツブス!》

 黒騎士は剣を構えてこちらに向かって走り出す。俺は何も構えずにただ立っていた。
 黒騎士は一瞬で間合いを詰める。そうして剣を振りかぶる。
 だが、俺にはキマイラのとき以上に動きがゆっくりに見えた。
 俺は黒騎士の剣を片手で止めた。特に魔力とかは使ってない、素の力で止めたのだ。

 これほどまでとは……

 ゼロからもらったその力はとてつもなく強大だった。
 俺はその力に関心する。
 そして俺は黒騎士ごと剣を持ったまま投げ飛ばす。黒騎士は見事に吹っ飛び、壁にめり込んだ。
 俺は隣にはゼロが立っているような気がして、安心して戦いに臨んでいた。

「どうした?そんなんもんか?次はこちらから行くぞ!」

 俺は挑発しながら、立ち上がる黒騎士まで一瞬で詰める。
 そこから俺は黒騎士の右頬を殴ろうとする。しかし、黒騎士は右に飛んでいった。

「この技も健在だ!」

 俺は転移拳撃ワープ・パンチを使って黒騎士を殴る。特に使う必要もないが、気に入っているので使ってみた。
 黒騎士は地面に倒れ込む。立ち上がろうとするところを今度は蹴りを入れる。ただし、俺は先程の殴ったその場から離れていない。

「これは……転移蹴撃ワープ・キックだな」

 俺はすかさず次の攻撃を加える。黒騎士はリンチになっていた。

「便利だな。転移シリーズ」

 俺は新しい必殺技に命名しながら少し離れる。

「せっかくだから魔法も試してやる。いや、魔術か」

 そう言って俺は目の前にボードを出現させ、操作し始める。

「ついでだからな、新しい魔法でも創るか」

 俺は目の前のボードを操作して、魔術式を組み立てる。それをそれぞれ紡いでいって、魔法陣を創りあげた。
 こうして、新たな魔法をこの場で創り上げた。

「だいたいこんなものか?」

 俺はそれを展開する。

「ふぅ、じゃあ遠慮なく喰らえ」

 俺は魔法陣を黒騎士に向けて、それを放つ。

「『転移光線ワープ・ビーム』」

 俺は魔法陣から放たれた、白い光線を転移させる。そして、その光線は黒騎士の真上に転移した。
 そしてそのまま黒騎士に浴びせる。黒騎士はどんどんボロボロになっていって、

 《キサマ、ハ、カナ、ラズ、コロ、ス》

 黒騎士はそう言って、そのまま光となって消えていった。

「まぁ、なかなか強かったよ」

 俺はそう言いながら、黒騎士の剣を取る。

「中々いい剣じゃないか?」

 俺は剣を振り回し、その感触を確かめると、亜空間にしまう。
 ちなみに先程の転移シリーズ唯一の魔法技である、転移光線ワープ・ビームだが、魔力をエネルギー光線に変換させ、ただ撃って、いつものように転移させるという、必殺技でいいのかというぐらい単純だった。

 じゃあ何で魔術式とか言ってたんだって?そんなの見栄えを良くしようとしたに決まっているだろう?

 あの操作ただエネルギー光線に変換させるための式を組んでいただけだった。
 俺は辺りを見回すと、奥に扉があることに気がついた。ここに入るときの扉よりかは小さいが、結構立派な感じだった。

「入ったときには確か……なかったはずだけど……まだ先があるのか?」

 俺は扉にゆっくりと近づく。そして扉を開ける。思いの外、軽かった。
 そして扉の先には……
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