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第一章:面影
第二話:保健室の少女
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古びたパイプベッドが時折、モゾモゾと動く。三台ある保健室のベッド。一番端っこが蓮波綾の指定席になっていた。
濡れて泥まみれになった靴下は、流石に脱いだ。掛け布団にくるまれながら、半井ゼンジから貰ったスポーツタオルを抱え、ひっそりと身を捩る。
――半井君……学年で有名な人。運動神経がとてもいい人。一度だけ、バスケやってるとこを見た。かっこよかった……半井君の匂い……柔軟剤の匂い。
今朝の事を思い出すだけで、カッカと顔が火照ってくる。綾は自分でも、驚きを隠せなかった。ああいう普通の人に慣れてないから、きっと少しびっくりしただけ。きっとそれだけ。
ベッド脇のカーテンがヒラヒラと動いて、綾は身体を起こした。顔を覗かせたのは、保健師の下田だった。
「靴下、誰かが置いてった物しかないのよね。一応、洗濯してあるから。これ、履く?」
「はい、いつもありがとうございます」
白衣から、ほんのりとタバコの匂いがする。この人は、女性なのにタバコを吸う。最初は不思議で仕方がなかったけれど、ストレス解消だと聞いてそういう方法もあるのかと思った。
綾には、かなり世間ズレした所がある。小さな頃から、周囲とはあまり関わろうとしない子供だった。それは、彼女の母親も同じだった。それでも父親が生きていた頃は、家族仲良く幸せな生活を送っていた。
父親が亡くなって、しばらく経ってからだ。綾の様子が、如実におかしくなっていったのは。
「カウンセリングの事、考えてくれてる?」
声に反応して本能的に下田から距離を取ると、綾は黙ったまま俯いた。
「お母様、心配してらしたわよ。もうあの人はいないのにって。学校でのイジメも心配してらしたけど……そんな事実はないって、気がつくのも時間の問題なんじゃないかしら」
お母さんは何もかも、自分のせいだと言う。お父さんが死んだ後、電気代をどう払えば良いか分からなかった事。税金の払い方を知らなかった事。神様に頼ってしまった事。
あの人を家に招き入れてしまった事。
お母さんから謝罪の言葉を聞く度に、私は息が出来なくなりそうになる。お母さんは、私を見ながら私を見ていない。胃がせり上がってくるような感覚に眉をしかめた綾は、ゼンジから貰ったスポーツタオルをギュッと握りしめた。
あの人が家からいなくなって、一年が経った。
入れ替わるようにして、家には福祉の人が来るようになった。お母さんは心を入れ替えたと言って、朝から晩まで働くようになった。けれども、私と福祉の人は知ってる。お母さんがまだ、偽物の神様を信じている事を。
私達親子の会話は一年経った今でも、福祉の人と先生を通した、虚しい伝言ゲームでしかない。
すれ違い続ける、一方的な伝言ゲーム。
誰も、私の秘密は知らない。
「話したくなったら……」
下田の声がした。
「いつでも、話してね」
それだけ言うと、彼女はカーテンの向こうに消えていった。
どうしようもない居心地の悪さを覚えた綾は、借りた靴下を履くと、保健室を後にした。
◆
「だからダメだって。放課後は制服の採寸があるって、何回言えば分かるんだよ」
学食のパンを食べていた半井ゼンジは、アラタと弥生カップルにそっけなく答えて話を終わらせようとしていた。
「部活に入れって言ってるワケじゃないじゃん。ただ、練習試合に人が足りないから出て欲しいって言って……」
「それ!」
ゼンジにコロッケパンを向けられた弥生は、顔をしかめて手で払う仕草をした。横にいたアラタはまたやってる……とでも言わんばかりに、呆れた顔で二人の様子を眺めていた。
ゼンジは、入学当時から部活動を頑なに嫌がってきた。運動神経は抜群なのに、体育の授業もいつだってあまり気乗りしないようだった。アラタはその理由を、とっくに本人から聞いていた。
でも、弥生には話にくいんだよなあ……恋人とは言え、友人のプライベートを話すのは気が引ける。
ゼンジとアラタは高校に入学して、直ぐに仲良くなった。親友と言っていい存在だ。お互い、似たりよったりの背格好。同じように制服もダボダボだったので、入学当時はよく間違われたりもした。
共にこの一年で、随分と背が伸びた。けれども、アラタは制服が丁度良いサイズになったのに対して、今のゼンジは誰がどう見ても長身だ。そういや、よく膝が痛いって言ってたっけな。
そして、アラタに弥生という恋人が出来ても、何だかんだと一緒にいる事が多い。昼食は三人で食べていたし、試験勉強も三人でする事が多かった。弥生の二人きりを強要しない小ざっぱりとした性格を、アラタは好きになった。
弥生が「んもう!」と言いながら、腕組みをしてゼンジを睨みつけた。
「半井は、自分のモテを活かそうとか考えないわけ?」
「はあ?何が」
自信満々に弥生が鼻を膨らませる。
「とぼけないでくれる?髪なんか伸ばしちゃってさ。一年の時、地味なたわしみたいだったじゃん」
「地味なたわしってお前……」
各自、思い思いに昼食をとっていたクラスメイト達が、一斉に聞き耳を立て始めた。
女子に囲まれてジュースを飲みながら、ヘラヘラと笑っていた望月リクが、声に反応して視線をゼンジに向けていた。一瞬だけ、目が合う。小馬鹿にしたような顔で直ぐに視線を逸らすいけ好かなさは、いつも通りの望月だった。今朝のは、やっぱり俺の勘違いだったのかもしれない。
「お願い!前半戦だけでいいから試合出て。ランチ奢るから」
「好きにしろよ……めんどくせえなあ」
露骨にガタンと椅子から立ち上がる音がして、教室の視線が音の方へ集中した。望月だった。突然何?という顔をした女子グループの輪から離れ、自席に向かって歩いていく。
そして頬杖をつくと、またいつものように外を眺め始めた。
変なヤツ
外ならずっと雨なのに
望月のいちいち演技がかった態度が鼻につく。
そんなのは俺だけかもしんないけど。
白けた表情で窓際を見やったゼンジは、残りのコロッケパンを口に放り込んだ。
◆
放課後
皆、雨で他にやる事がないからか、練習試合には思いのほか沢山の生徒が集まっていた。弥生の目的は、分かりやすい。バスケ部への新入生勧誘だ。その為のサクラがゼンジ、というわけだった。
騙すようにして入部させた所で……その先の事は弥生がどうにかする話で、俺には関係ない話なんだけど。
離れた所で座っていたゼンジに、バスケ部所属の元クラスメイトが話かけてきた。
「よう、お前また背伸びた?」
「んあ」
「これで合うかな……着替え、あっちでしてきて」
投げられたウェアを受け取ったゼンジは、体育館併設の更衣室を見た。他の部員が出入りを繰り返している。
人前で着替えるのには、どうにも抵抗感があるんだよな。
「いや、いい。適当に着替えてくるわ」
元クラスメイトにそう伝えたゼンジは、誰も知らない自分だけの更衣場へと向かった。
取り壊しが決まっている、殆ど使用されていない校舎。その屋上前の踊り場が、ゼンジだけの更衣場だった。体育館からは離れているけれど、人が来る事はまずないから安心して着替えられる。
ゼンジには肩から背中にかけて、大きな裂傷痕があった。
まだ小学校低学年の頃だった。庭でボール遊びをしていて、そのまま勢いで道路に飛び出してしまった。ちょうど目の前まで走ってきていた、車の下敷きになって出来た傷だ。
俺自身は男だし、特に気にしてはいない。
そもそも、原因は俺だ。ボール遊びで夢中になって、飛び出した俺が悪かった。
ただ、事ある毎に祖母がその事故の話を持ち出しては、母親を責めるようになった。ゼンジはいつからか、人前で裸を見せることに、強い抵抗感を覚えるようになってしまっていた。
近所の人だって、皆知ってる。そして、誰もその事について何も言わない。
祖母と母親だけが、あの事故で時が止まってしまったかのように、いつまでもいがみ合っている。
シャツを脱ぎ捨てたゼンジは、背中の傷に手をやった。春の身体測定では180cmになってた。一年で16cm伸びた事になる。更に伸びて、今は183cmくらいといった所だろうか。
身長が伸びた分、傷も伸びたりするんだろうか?背中なんて、傷がなくても自分じゃ滅多に見ないしな。よく分かんねえ。
――……なんだ?
今、人の呼吸が聞こえなかったか。
のんびりと着替えていたゼンジは、人の気配があった事に気づいて振り返った。今まで一度も、ここで誰かと鉢合わせた事なんてなかったのに。
「誰だ!」
思わず声を荒らげると、階段を早足でパタパタと降りてゆく後ろ姿だけが見えた。
サラサラの茶色い髪
華奢な身体
あれは……望月?
ゼンジは無意識に舌打ちをしてしまっていた。
「よりによってアイツかよ。こんな所で何してたんだ」
ぶつくさと独りごちた後で、自分だってこんな所で着替えてるじゃないか、という思いが頭をもたげる。分かってはいるが、自分勝手な不快感を隠せずにいた。
気分わる。
あんなヤツの事は、とっとと忘れるに限る。
ゼンジはウェアを素早く羽織ると、踊り場を後にした。
◆
普段なら絶対、こんな事しないのに。いっぱい人がいる。女の子も、沢山。半井君の事を、かっこいいって言う女の子は多い。彼の名前を知ったのも、そういう噂話が聞こえてきてしまっていたから。
まるでアイドルのファンみたい。私も、その一人になってしまったんだろうか。
体育館の入口に蓮波綾はいた。中に入る勇気がなく、往来の多い入り口で10分近くも突っ立ったままだった。それが通行人の邪魔になっている、という自覚が彼女にはない。「どいて」と言われても、ポーッとしたまま心ここにあらずだった。
「あれ、蓮波さんも来たの?」
名前を呼ばれて初めて、綾は入り口から脇の花壇へと移動して身構えた。同じクラスの女子が二人、私に向かって笑ってる。名前は……えっと、佐伯さん。私に時たま話かけてくる、大人しい感じの人。一緒にいるもう一人は、名前が分からない。
おどおどしてる綾の手を、佐伯が優しく引っ張った。いつもなら咄嗟に手を振り払ってしまう所だが、不思議とそうはならなかった。大人しく引かれるまま、体育館の中へと入っていく。
「もう少し奥へ行かない?半井君がバスケ部に顔出すなんて、久しぶりだもんね」
「ね、かっこいいよね。アイドル、アイドル」
佐伯が名前の分からないもう一人と、ニコニコ笑っていた。
綾は、所謂ガールズトークに慣れていない。経験が圧倒的に少ないので、どうしたら良いか分からなくなってしまうのだ。だから、いとも簡単に混乱してしまう。
中学時代にいじめられていた事も原因ではあったが、母親が入信していた閉鎖的な新興宗教の影響が最も大きかった。
自分が普通でない事は、自分が一番良く知っている。
普通の人が笑顔で楽しむような場所になんて、来るんじゃなかった。
逃げたい思いで頭がいっぱいになった綾にとって、出てくる単語は最早1つ。
「トイレ……」
なんとかそれだけ言うと、綾はその場を走り去って行ってしまった。
「あの子、笑ったら可愛いのにね」
佐伯が少し寂しげに、もう一人へと語りかけていた。
◆
時折、キャーと言う声援が聞こえる。練習試合が始まったのだ。
「なんかやってるみたいだから行こーぜー」
新入生らしき男子生徒の声が、パタパタと言う上履きの音と共に、通り過ぎては消えてゆく。
体育館から逃げ出した綾は、途中何度も躓きながら声援とは真逆の方向に走っていた。そうして周囲を見渡して誰も居ないのを確認すると、随分前から粗大ゴミ置き場なっている用具室の扉を開けた。
「なんだ、今日は来ないかと思った」
聞き慣れた声に、酷く安堵する。
仄暗い用具室の奥に、望月リクは座っていた。
ついに誰の足音も聞こえなくなって、静まり返った頃、リクがポケットから剃刀を取り出して綾に渡した。
「う……」
剃刀でスパッと手首に傷をつける。切れ味が良すぎて傷が広がらず、思ったよりも血が出ない。
リクが近寄ってきて、舌で犯すようにして傷口を広げた。滴り落ちる血に舌を這わせると、ズボンの中に手を入れて弄り始めた。
痛みで歪んでいた綾の顔から生気が失せ、虚ろな目をした人形のようになる。
これが、私たちの秘密。
いつもの、儀式。
フー、フー
リクは額に汗を滲ませながら、その指を尻の方へと伝わせていった。持て余した熱で、腰が自然とうねっていた。慣れた手つきでベルトを外し、そのままパンツごと上手にするりと脱ぐ。
クチュ
クチャ
淫猥な音だけが空間を支配する。それは確実に、リクの精神的な酩酊を誘っていた。
粘膜をこする音が大きくなるにつれて、その華奢な身体が、跳ねるように痙攣し始めていた。
「――……手伝おうか」
珍しく綾が声をかけたが、リクは眉間にシワを寄せると、首を横に振った。
この快感は俺だけのものだ、お前は入ってくるな。
本能の赴くまま、尻の中を指でピストンし続ける。
クチュ
ヌチュッ
「っあっ……」
切ない声が漏れて、しばらくした後、勢いよく白濁した液体が薄汚れた床に飛び散った。
結局、リクは三回果ててようやく落ち着いた。
儀式の最中、彼はずっと半井ゼンジの背中をおかずにしていた。
別に深い意味があったわけじゃない。本当に、たまたまだった。ウェアを手に持った半井の姿が目に入ってきたのは。気がついたら後をつけていた。そういえば、アイツはいつも更衣室を使わない。一体、どこで着替えてるんだろう。
同級生の着替えを見て欲情するほど、男に困っているわけじゃない。卒業するまで遊べないと言ったって、ちょこちょことヤることはヤっている。
ただ、なんというか。
好奇心で見た同級生の半裸に、あそこまで興奮するとは思わなかった。
半井が気づかないでいたら、あの場所でオナニーをしていたかもしれない。
それぐらい、筋肉質の背中に広がった傷痕は美しく、欲情をかき立てるものだった。
儀式が終わると着替えを済ませ、蓮波に膝枕をして貰いながら、髪を撫でてもらう。そうして、気が向いたらポツリポツリと会話のようなものをする。会話と言っても、リクが一方的に話すだけだったが。
これが、僕たちの日常。
今日のリクは、機嫌がよく饒舌だった。
「蓮波はさ、俺と結婚すればいいんだよ。俺はゲイだし、あの人みたいな事はしないよ。君は、安定した生活を手に入れられる。だからさ、高校を出たら結婚しよう」
綾はその言葉に、否定もしなければ肯定もしなかった。普段からそういう所はあったが、いつにも増して心ここにあらずな状態になっている。
機嫌の良かったリクは、何処かへ消え去っていた。気難しい表情を浮かべて、綾を睨みつけている。睨まれている事にすら気づかない綾を見ていると、許せないという気持ちが湧き上がってきた。
結婚は、大事なフレーズだ。いつもなら、必ず「うん」って言うじゃないか。
絶対に肯定しなきゃダメな事なんだ。
……だってこれは、俺たち二人の呪文なんだから。
「蓮波、さっきまで何処で何してたの?」
「――……」
答えない。
「バスケの試合、見に行こうとした?」
やっぱり答えない。
イライラする。すごく。
リクは玩具を取られた赤ん坊のようだった。癇癪を起こして、今にも泣き喚かんとする赤ん坊。
「まさか、タオル貰ったから好きになっちゃったとか?」
「――……分からない」
「分からないって、なんだよ。半井は、俺とは違うからね。あの人みたいな事を絶対にするよ。泣いたって、絶対に止めてくれない」
まだ出血の止まっていない綾の腕を乱暴につかんだリクは、その手に力を込めて問い詰めた。
「イヤイヤ切ったから、思った以上に力が入ったんじゃないの。なんでまだ血が止まらないんだよ」
「違う……」
分からないとか違うとか、そんな言葉は求めてない。
リクは彼女の鞄を漁ると、ゼンジのスポーツタオルを取り出し、無理やり傷を塞いだ。
「嫌だ。止めて」
目に涙を浮かべた綾が身を捩って抵抗するの様を見ていたリクは、最早怒りを感じていた。
普段なら、こんな風に口答えなんてしないのに。
「他の誰も要らないよ。俺たちは、二人だけで生きてくんだ」
リクはタオルを綾の傷から離すと、自分の口周りについていた血を拭った。微かに半井の匂いがする。
半井の、汗の匂い。
なんでこれをお前が持ってるんだよ!
無性に腹が立って仕方がない。目の前でみすぼらしく座っている蓮波に、手を上げそうになる。
でも、それだけはやったらダメだ。
おそらく、もう二度と儀式は成立しなくなる。
だから、代わりに思いっきり意地悪をしてやる事にした。
「変なもん持って帰ると、おばさん心配しちゃうだろ。これ、ウチで洗ってきてやるよ。それにさ、ちょっと優しくされた位ですぐに勘違いしちゃう所、おばさんにそっくりだよね。やっぱり親子なんだな」
「うぅ……」
ついに泣き出した蓮波を見て、ようやく満足をした。なんなら興奮もしたけれど、それはSEXをしたいとか言うのとは、また全く別のものだった。
独占欲?
まさか
今日の俺は情緒不安定なのかもしれない。今度は、無性にムラムラしてきた。なんでもいいから、滅茶苦茶にされたい。SEXしたい。
抑えきれない。
◆
ゼンジがバスケの練習試合に出場し(結局、後半途中までいた)、制服の採寸を済ませてようやく学校から解放された頃、リクは古びたホテルにいた。
汚らしい身なりの中年男性を相手に、罵倒されながら手錠プレイに勤しんでいた。
半井のタオルを猿轡のようにして咥える。
血の匂いと汗の匂いが入り混じって、それだけでクラクラした。
「ウ――!」
「おい変態、もっと腰を振れ。中に出すぞ」
コクコクと頷と尻を思い切り叩かれて、背中がピンと攣った。
ビュル!
ビュッビュッ
「アグッ!」
果てる瞬間、リクは半井の傷痕にぶちまけているような錯覚に囚われていた。
あの傷痕を、俺のモノで思い切り穢してみたい。
恍惚とした表情のリクは、身体を震わせてもう一度果てると、タオルを咥えたまま眠るようにして気を失った。
濡れて泥まみれになった靴下は、流石に脱いだ。掛け布団にくるまれながら、半井ゼンジから貰ったスポーツタオルを抱え、ひっそりと身を捩る。
――半井君……学年で有名な人。運動神経がとてもいい人。一度だけ、バスケやってるとこを見た。かっこよかった……半井君の匂い……柔軟剤の匂い。
今朝の事を思い出すだけで、カッカと顔が火照ってくる。綾は自分でも、驚きを隠せなかった。ああいう普通の人に慣れてないから、きっと少しびっくりしただけ。きっとそれだけ。
ベッド脇のカーテンがヒラヒラと動いて、綾は身体を起こした。顔を覗かせたのは、保健師の下田だった。
「靴下、誰かが置いてった物しかないのよね。一応、洗濯してあるから。これ、履く?」
「はい、いつもありがとうございます」
白衣から、ほんのりとタバコの匂いがする。この人は、女性なのにタバコを吸う。最初は不思議で仕方がなかったけれど、ストレス解消だと聞いてそういう方法もあるのかと思った。
綾には、かなり世間ズレした所がある。小さな頃から、周囲とはあまり関わろうとしない子供だった。それは、彼女の母親も同じだった。それでも父親が生きていた頃は、家族仲良く幸せな生活を送っていた。
父親が亡くなって、しばらく経ってからだ。綾の様子が、如実におかしくなっていったのは。
「カウンセリングの事、考えてくれてる?」
声に反応して本能的に下田から距離を取ると、綾は黙ったまま俯いた。
「お母様、心配してらしたわよ。もうあの人はいないのにって。学校でのイジメも心配してらしたけど……そんな事実はないって、気がつくのも時間の問題なんじゃないかしら」
お母さんは何もかも、自分のせいだと言う。お父さんが死んだ後、電気代をどう払えば良いか分からなかった事。税金の払い方を知らなかった事。神様に頼ってしまった事。
あの人を家に招き入れてしまった事。
お母さんから謝罪の言葉を聞く度に、私は息が出来なくなりそうになる。お母さんは、私を見ながら私を見ていない。胃がせり上がってくるような感覚に眉をしかめた綾は、ゼンジから貰ったスポーツタオルをギュッと握りしめた。
あの人が家からいなくなって、一年が経った。
入れ替わるようにして、家には福祉の人が来るようになった。お母さんは心を入れ替えたと言って、朝から晩まで働くようになった。けれども、私と福祉の人は知ってる。お母さんがまだ、偽物の神様を信じている事を。
私達親子の会話は一年経った今でも、福祉の人と先生を通した、虚しい伝言ゲームでしかない。
すれ違い続ける、一方的な伝言ゲーム。
誰も、私の秘密は知らない。
「話したくなったら……」
下田の声がした。
「いつでも、話してね」
それだけ言うと、彼女はカーテンの向こうに消えていった。
どうしようもない居心地の悪さを覚えた綾は、借りた靴下を履くと、保健室を後にした。
◆
「だからダメだって。放課後は制服の採寸があるって、何回言えば分かるんだよ」
学食のパンを食べていた半井ゼンジは、アラタと弥生カップルにそっけなく答えて話を終わらせようとしていた。
「部活に入れって言ってるワケじゃないじゃん。ただ、練習試合に人が足りないから出て欲しいって言って……」
「それ!」
ゼンジにコロッケパンを向けられた弥生は、顔をしかめて手で払う仕草をした。横にいたアラタはまたやってる……とでも言わんばかりに、呆れた顔で二人の様子を眺めていた。
ゼンジは、入学当時から部活動を頑なに嫌がってきた。運動神経は抜群なのに、体育の授業もいつだってあまり気乗りしないようだった。アラタはその理由を、とっくに本人から聞いていた。
でも、弥生には話にくいんだよなあ……恋人とは言え、友人のプライベートを話すのは気が引ける。
ゼンジとアラタは高校に入学して、直ぐに仲良くなった。親友と言っていい存在だ。お互い、似たりよったりの背格好。同じように制服もダボダボだったので、入学当時はよく間違われたりもした。
共にこの一年で、随分と背が伸びた。けれども、アラタは制服が丁度良いサイズになったのに対して、今のゼンジは誰がどう見ても長身だ。そういや、よく膝が痛いって言ってたっけな。
そして、アラタに弥生という恋人が出来ても、何だかんだと一緒にいる事が多い。昼食は三人で食べていたし、試験勉強も三人でする事が多かった。弥生の二人きりを強要しない小ざっぱりとした性格を、アラタは好きになった。
弥生が「んもう!」と言いながら、腕組みをしてゼンジを睨みつけた。
「半井は、自分のモテを活かそうとか考えないわけ?」
「はあ?何が」
自信満々に弥生が鼻を膨らませる。
「とぼけないでくれる?髪なんか伸ばしちゃってさ。一年の時、地味なたわしみたいだったじゃん」
「地味なたわしってお前……」
各自、思い思いに昼食をとっていたクラスメイト達が、一斉に聞き耳を立て始めた。
女子に囲まれてジュースを飲みながら、ヘラヘラと笑っていた望月リクが、声に反応して視線をゼンジに向けていた。一瞬だけ、目が合う。小馬鹿にしたような顔で直ぐに視線を逸らすいけ好かなさは、いつも通りの望月だった。今朝のは、やっぱり俺の勘違いだったのかもしれない。
「お願い!前半戦だけでいいから試合出て。ランチ奢るから」
「好きにしろよ……めんどくせえなあ」
露骨にガタンと椅子から立ち上がる音がして、教室の視線が音の方へ集中した。望月だった。突然何?という顔をした女子グループの輪から離れ、自席に向かって歩いていく。
そして頬杖をつくと、またいつものように外を眺め始めた。
変なヤツ
外ならずっと雨なのに
望月のいちいち演技がかった態度が鼻につく。
そんなのは俺だけかもしんないけど。
白けた表情で窓際を見やったゼンジは、残りのコロッケパンを口に放り込んだ。
◆
放課後
皆、雨で他にやる事がないからか、練習試合には思いのほか沢山の生徒が集まっていた。弥生の目的は、分かりやすい。バスケ部への新入生勧誘だ。その為のサクラがゼンジ、というわけだった。
騙すようにして入部させた所で……その先の事は弥生がどうにかする話で、俺には関係ない話なんだけど。
離れた所で座っていたゼンジに、バスケ部所属の元クラスメイトが話かけてきた。
「よう、お前また背伸びた?」
「んあ」
「これで合うかな……着替え、あっちでしてきて」
投げられたウェアを受け取ったゼンジは、体育館併設の更衣室を見た。他の部員が出入りを繰り返している。
人前で着替えるのには、どうにも抵抗感があるんだよな。
「いや、いい。適当に着替えてくるわ」
元クラスメイトにそう伝えたゼンジは、誰も知らない自分だけの更衣場へと向かった。
取り壊しが決まっている、殆ど使用されていない校舎。その屋上前の踊り場が、ゼンジだけの更衣場だった。体育館からは離れているけれど、人が来る事はまずないから安心して着替えられる。
ゼンジには肩から背中にかけて、大きな裂傷痕があった。
まだ小学校低学年の頃だった。庭でボール遊びをしていて、そのまま勢いで道路に飛び出してしまった。ちょうど目の前まで走ってきていた、車の下敷きになって出来た傷だ。
俺自身は男だし、特に気にしてはいない。
そもそも、原因は俺だ。ボール遊びで夢中になって、飛び出した俺が悪かった。
ただ、事ある毎に祖母がその事故の話を持ち出しては、母親を責めるようになった。ゼンジはいつからか、人前で裸を見せることに、強い抵抗感を覚えるようになってしまっていた。
近所の人だって、皆知ってる。そして、誰もその事について何も言わない。
祖母と母親だけが、あの事故で時が止まってしまったかのように、いつまでもいがみ合っている。
シャツを脱ぎ捨てたゼンジは、背中の傷に手をやった。春の身体測定では180cmになってた。一年で16cm伸びた事になる。更に伸びて、今は183cmくらいといった所だろうか。
身長が伸びた分、傷も伸びたりするんだろうか?背中なんて、傷がなくても自分じゃ滅多に見ないしな。よく分かんねえ。
――……なんだ?
今、人の呼吸が聞こえなかったか。
のんびりと着替えていたゼンジは、人の気配があった事に気づいて振り返った。今まで一度も、ここで誰かと鉢合わせた事なんてなかったのに。
「誰だ!」
思わず声を荒らげると、階段を早足でパタパタと降りてゆく後ろ姿だけが見えた。
サラサラの茶色い髪
華奢な身体
あれは……望月?
ゼンジは無意識に舌打ちをしてしまっていた。
「よりによってアイツかよ。こんな所で何してたんだ」
ぶつくさと独りごちた後で、自分だってこんな所で着替えてるじゃないか、という思いが頭をもたげる。分かってはいるが、自分勝手な不快感を隠せずにいた。
気分わる。
あんなヤツの事は、とっとと忘れるに限る。
ゼンジはウェアを素早く羽織ると、踊り場を後にした。
◆
普段なら絶対、こんな事しないのに。いっぱい人がいる。女の子も、沢山。半井君の事を、かっこいいって言う女の子は多い。彼の名前を知ったのも、そういう噂話が聞こえてきてしまっていたから。
まるでアイドルのファンみたい。私も、その一人になってしまったんだろうか。
体育館の入口に蓮波綾はいた。中に入る勇気がなく、往来の多い入り口で10分近くも突っ立ったままだった。それが通行人の邪魔になっている、という自覚が彼女にはない。「どいて」と言われても、ポーッとしたまま心ここにあらずだった。
「あれ、蓮波さんも来たの?」
名前を呼ばれて初めて、綾は入り口から脇の花壇へと移動して身構えた。同じクラスの女子が二人、私に向かって笑ってる。名前は……えっと、佐伯さん。私に時たま話かけてくる、大人しい感じの人。一緒にいるもう一人は、名前が分からない。
おどおどしてる綾の手を、佐伯が優しく引っ張った。いつもなら咄嗟に手を振り払ってしまう所だが、不思議とそうはならなかった。大人しく引かれるまま、体育館の中へと入っていく。
「もう少し奥へ行かない?半井君がバスケ部に顔出すなんて、久しぶりだもんね」
「ね、かっこいいよね。アイドル、アイドル」
佐伯が名前の分からないもう一人と、ニコニコ笑っていた。
綾は、所謂ガールズトークに慣れていない。経験が圧倒的に少ないので、どうしたら良いか分からなくなってしまうのだ。だから、いとも簡単に混乱してしまう。
中学時代にいじめられていた事も原因ではあったが、母親が入信していた閉鎖的な新興宗教の影響が最も大きかった。
自分が普通でない事は、自分が一番良く知っている。
普通の人が笑顔で楽しむような場所になんて、来るんじゃなかった。
逃げたい思いで頭がいっぱいになった綾にとって、出てくる単語は最早1つ。
「トイレ……」
なんとかそれだけ言うと、綾はその場を走り去って行ってしまった。
「あの子、笑ったら可愛いのにね」
佐伯が少し寂しげに、もう一人へと語りかけていた。
◆
時折、キャーと言う声援が聞こえる。練習試合が始まったのだ。
「なんかやってるみたいだから行こーぜー」
新入生らしき男子生徒の声が、パタパタと言う上履きの音と共に、通り過ぎては消えてゆく。
体育館から逃げ出した綾は、途中何度も躓きながら声援とは真逆の方向に走っていた。そうして周囲を見渡して誰も居ないのを確認すると、随分前から粗大ゴミ置き場なっている用具室の扉を開けた。
「なんだ、今日は来ないかと思った」
聞き慣れた声に、酷く安堵する。
仄暗い用具室の奥に、望月リクは座っていた。
ついに誰の足音も聞こえなくなって、静まり返った頃、リクがポケットから剃刀を取り出して綾に渡した。
「う……」
剃刀でスパッと手首に傷をつける。切れ味が良すぎて傷が広がらず、思ったよりも血が出ない。
リクが近寄ってきて、舌で犯すようにして傷口を広げた。滴り落ちる血に舌を這わせると、ズボンの中に手を入れて弄り始めた。
痛みで歪んでいた綾の顔から生気が失せ、虚ろな目をした人形のようになる。
これが、私たちの秘密。
いつもの、儀式。
フー、フー
リクは額に汗を滲ませながら、その指を尻の方へと伝わせていった。持て余した熱で、腰が自然とうねっていた。慣れた手つきでベルトを外し、そのままパンツごと上手にするりと脱ぐ。
クチュ
クチャ
淫猥な音だけが空間を支配する。それは確実に、リクの精神的な酩酊を誘っていた。
粘膜をこする音が大きくなるにつれて、その華奢な身体が、跳ねるように痙攣し始めていた。
「――……手伝おうか」
珍しく綾が声をかけたが、リクは眉間にシワを寄せると、首を横に振った。
この快感は俺だけのものだ、お前は入ってくるな。
本能の赴くまま、尻の中を指でピストンし続ける。
クチュ
ヌチュッ
「っあっ……」
切ない声が漏れて、しばらくした後、勢いよく白濁した液体が薄汚れた床に飛び散った。
結局、リクは三回果ててようやく落ち着いた。
儀式の最中、彼はずっと半井ゼンジの背中をおかずにしていた。
別に深い意味があったわけじゃない。本当に、たまたまだった。ウェアを手に持った半井の姿が目に入ってきたのは。気がついたら後をつけていた。そういえば、アイツはいつも更衣室を使わない。一体、どこで着替えてるんだろう。
同級生の着替えを見て欲情するほど、男に困っているわけじゃない。卒業するまで遊べないと言ったって、ちょこちょことヤることはヤっている。
ただ、なんというか。
好奇心で見た同級生の半裸に、あそこまで興奮するとは思わなかった。
半井が気づかないでいたら、あの場所でオナニーをしていたかもしれない。
それぐらい、筋肉質の背中に広がった傷痕は美しく、欲情をかき立てるものだった。
儀式が終わると着替えを済ませ、蓮波に膝枕をして貰いながら、髪を撫でてもらう。そうして、気が向いたらポツリポツリと会話のようなものをする。会話と言っても、リクが一方的に話すだけだったが。
これが、僕たちの日常。
今日のリクは、機嫌がよく饒舌だった。
「蓮波はさ、俺と結婚すればいいんだよ。俺はゲイだし、あの人みたいな事はしないよ。君は、安定した生活を手に入れられる。だからさ、高校を出たら結婚しよう」
綾はその言葉に、否定もしなければ肯定もしなかった。普段からそういう所はあったが、いつにも増して心ここにあらずな状態になっている。
機嫌の良かったリクは、何処かへ消え去っていた。気難しい表情を浮かべて、綾を睨みつけている。睨まれている事にすら気づかない綾を見ていると、許せないという気持ちが湧き上がってきた。
結婚は、大事なフレーズだ。いつもなら、必ず「うん」って言うじゃないか。
絶対に肯定しなきゃダメな事なんだ。
……だってこれは、俺たち二人の呪文なんだから。
「蓮波、さっきまで何処で何してたの?」
「――……」
答えない。
「バスケの試合、見に行こうとした?」
やっぱり答えない。
イライラする。すごく。
リクは玩具を取られた赤ん坊のようだった。癇癪を起こして、今にも泣き喚かんとする赤ん坊。
「まさか、タオル貰ったから好きになっちゃったとか?」
「――……分からない」
「分からないって、なんだよ。半井は、俺とは違うからね。あの人みたいな事を絶対にするよ。泣いたって、絶対に止めてくれない」
まだ出血の止まっていない綾の腕を乱暴につかんだリクは、その手に力を込めて問い詰めた。
「イヤイヤ切ったから、思った以上に力が入ったんじゃないの。なんでまだ血が止まらないんだよ」
「違う……」
分からないとか違うとか、そんな言葉は求めてない。
リクは彼女の鞄を漁ると、ゼンジのスポーツタオルを取り出し、無理やり傷を塞いだ。
「嫌だ。止めて」
目に涙を浮かべた綾が身を捩って抵抗するの様を見ていたリクは、最早怒りを感じていた。
普段なら、こんな風に口答えなんてしないのに。
「他の誰も要らないよ。俺たちは、二人だけで生きてくんだ」
リクはタオルを綾の傷から離すと、自分の口周りについていた血を拭った。微かに半井の匂いがする。
半井の、汗の匂い。
なんでこれをお前が持ってるんだよ!
無性に腹が立って仕方がない。目の前でみすぼらしく座っている蓮波に、手を上げそうになる。
でも、それだけはやったらダメだ。
おそらく、もう二度と儀式は成立しなくなる。
だから、代わりに思いっきり意地悪をしてやる事にした。
「変なもん持って帰ると、おばさん心配しちゃうだろ。これ、ウチで洗ってきてやるよ。それにさ、ちょっと優しくされた位ですぐに勘違いしちゃう所、おばさんにそっくりだよね。やっぱり親子なんだな」
「うぅ……」
ついに泣き出した蓮波を見て、ようやく満足をした。なんなら興奮もしたけれど、それはSEXをしたいとか言うのとは、また全く別のものだった。
独占欲?
まさか
今日の俺は情緒不安定なのかもしれない。今度は、無性にムラムラしてきた。なんでもいいから、滅茶苦茶にされたい。SEXしたい。
抑えきれない。
◆
ゼンジがバスケの練習試合に出場し(結局、後半途中までいた)、制服の採寸を済ませてようやく学校から解放された頃、リクは古びたホテルにいた。
汚らしい身なりの中年男性を相手に、罵倒されながら手錠プレイに勤しんでいた。
半井のタオルを猿轡のようにして咥える。
血の匂いと汗の匂いが入り混じって、それだけでクラクラした。
「ウ――!」
「おい変態、もっと腰を振れ。中に出すぞ」
コクコクと頷と尻を思い切り叩かれて、背中がピンと攣った。
ビュル!
ビュッビュッ
「アグッ!」
果てる瞬間、リクは半井の傷痕にぶちまけているような錯覚に囚われていた。
あの傷痕を、俺のモノで思い切り穢してみたい。
恍惚とした表情のリクは、身体を震わせてもう一度果てると、タオルを咥えたまま眠るようにして気を失った。
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