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第一章:面影
第三話:面影
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-----翌日-----
今年はどうやら、雨の多い梅雨になりそうだった。制服は10日以内に仕立て終わるとの事で、半井ゼンジはホッとした気持ちになっていた。流石にもう、サイズの合わない制服を着続けているのは恥ずかしかった。
弥生の言ってた事は図星なんだよな、と思う。
モテて悪い気はしないし、恋人だって欲しい、本音を言えばSEXだってしてみたい。けれども、肝心の好きという感情が今ひとつよく分からない。
高校に入って、数人の女子から告白をされた。どの子も学年で可愛いと評判の子だったが、何回かデートをして断ってしまった。楽しくなかった訳じゃない。ただ、なんというか。ずっと一緒にいたいと、単純に思えなかった。
かといって、初恋めいた経験がない訳じゃない。中学の時に、気になる存在の女子はいた。酷く天邪鬼な子で、クラスでも浮いた存在だった。確か、野路って名前だった。
ツンデレなんだろう。憎まれ口ばかりきいていたかと思えば、ゼンジの前ではやけに素直だったりする。恋愛感情云々というよりは、生意気な弟と一緒にいる感じ。見た目も、ショートカットで少年のようだった。
グループからあぶれがちだった野路とゼンジは、何故か気が合った。
中2の夏に林間学校のレクリエーションで、花火をすることになった。小さく灯る火花に照らされた彼女の横顔を見ていて、生まれて初めて触ってみたいと思った。
二学期が始まると直ぐに、実家の都合とかで転校していってしまったけれども。
今日も相変わらずの雨で、色とりどりの傘が学校に向かって流れてゆく。
もし野路がまだ近くにいたら、今頃どうなってたんだろうか。
付き合ったりしてたのかな。
そんな事を考えながらゼンジは傘の群れと共に歩き、校門をくぐり抜けて行った。
傘を傾けて、自分のクラスを見る。頬杖をついていた望月リクが、今日は確実にゼンジを睨みつけていた。昨日、俺の着替えを見ていたのは、やっぱりアイツなんだろう。ゼンジはカチンときて睨み返したが、リクはいつものようには視線を逸らさなかった。
朝っぱらから睨み合う形になって、突然、ゼンジは気づいた。
望月の顔は、どことなく野路と似ている。
ツリ目がちの大きな目、プライドの高そうな鼻、全体的に薄い色素。
なんだって、今更そんな事に気づいたんだろう。
彼女の事を考えていたからか。
だからと言って、俺がアイツを恋愛対象として見るなんて事は、永遠に訪れない。相手は男だ。それ以前に、嫌いとすら思ってる人間を、何処の誰が触れてみたいだなんて思うんだ。
見た目だけの、まさに他人の空似。
それ以上でも、以下でもない。
まだ校舎まで少し距離があったが、ゼンジは何となく雨に濡れたくなった。リクは相変わらずゼンジを睨んでいたが、無視して傘を閉じるとゆっくり校舎へ向かって歩いていった。
いつもの教室
いつもの光景
「おはよ」
「おはー」
アラタがビタミンゼリーをくわえながら、ヨッと手を小さく振る。
「なん、ゼンジ。めっちゃ濡れてんじゃん。傘壊れたん?」
「ビニ傘だかんな」
タオルで身体を拭きながら、鞄を席に置くと、リクの姿が目に入った。この蒸し暑さの中、クラスでたった一人長袖シャツを着ている。
つくづく変なヤツだな。
望月みたいなどうでもいいヤツの事まで考えてしまうのは、きっと面影が重なったせいだ。とゼンジは結論づける事にした。
◆
4限目は体育だった。昨日の今日でまたバスケ。
半井ゼンジは思わず「また?」と、うんざりした声を漏らしてしまっていた。アラタが少しだけ気まずそうにしながら、ゼンジの横顔を見ていた。
「まあ、いいか。今日は弥生から、ランチを奢ってもらう約束もんな」
そうアラタに笑いかけたゼンジは、早めにいつもの踊り場で着替えようと教室を出ていった。その瞬間だった。小さな黒髪が、ゼンジの胸とぶつかったのは。ワタワタと何だか酷く慌てている。
黒髪の主は、蓮波綾だった。綾は顔を見上げて、ぶつかってしまったのがゼンジだと気づくと更に慌てて「ヒャッ」っと言いながら、足を滑らせた。
ゼンジが咄嗟に腕を引っ張りあげると、今日はまた盛大に腕に包帯が巻いてあるのが目に入った。
「す……すみません!」
「いや、俺も急いでたから」
申し訳なさそうにアタフタしている綾に声をかけると、彼女の視線が動いて硬直した。
そのまま廊下を行き交う生徒などお構い無しに後ずさろうとしたので、ゼンジはもう一度、綾の腕を引っ張り上げた。
思った以上に、鈍臭い子だな。
「後ろ、気をつけないと」
「あっ……あっごめんなさい」
噂好きな生徒たちの視線が集中してくる。綾は顔を真っ赤にして手を振り払うと、ゼンジに何度も礼をしつつ、パタパタと走り去っていった。その間も、二度ほど躓いてすっ転びそうになっていた。
やっぱり、鈍臭いんだな。蓮波って。
「半井。着替え、間に合わないね」
声がして振り返ると、教室の扉にもたれかかりながら望月リクが立っていた。足をプラプラとさせ腕組みをしながら、何がおかしいのかニヤニヤと笑っている。
「遅れて行くからいいよ」
そっけなく答えて歩き出したゼンジに対して、そんな言葉、まるで意に介さないとでも言いたげな顔でリクが話を続けた。
「大丈夫だよ、俺にも今日は傷があるんだ」
やっぱり、着替えを見ていたのは望月だったのか。まあ、どうでもいい。コイツが何をどう思っていようが、俺には関係のない事だ。
無視して歩き出したゼンジの後ろを、リクが早足でついて行った。
「ねえ、無視しないでよ。面白いものあるんだけど、見る?」
「見ない」
振り返る事もなくゼンジが答えると、いきなり細くて長い指が腕に絡みついてきた。
「なにすんだよ……」
ようやく振り向いたゼンジは、リクが見せた面白いものを凝視しながら愕然としていた。シャツが捲れて、奇妙な形の擦り傷が剥き出しになっている。
縄か何かで縛られて出来た傷としか思えない。
「どうせ誰も見てなんかいないよ」
呆気に取られている隙に、リクはゼンジの前に周り込んでいた。挑発するような目が、どうしても野路と重なる。
「もう、更衣室で着替えなよ」
そう言うと、リクはクスクスと笑ってみせた。
ゼンジは面影の先にある彼女からからかわれたような気がして、酷く恥ずかしい気分になっていた。
◆
「雨っつうとバスケ。この学校って、芸がないよな」
横に座っていたアラタが飴を口の中で転がしながら、愚痴っていた。夏に入れば本格的に講習が始まり、早い生徒は二学期で部活動を引退する。進学校の体育なんて、こんなもんなのかもなあと半井ゼンジは思っていた。
「あ、そだ。今日、新宿付き合ってよ。遠くてわりいんだけど」
「良いけど、なんで?」
アラタが少し困ったような表情で答えた。
「そろそろ、予備校を決めなきゃなんなくって。弥生はまだ何も考えてないみたいでさ。何か、話しにくいんだよね」
「そういうもんなの?」
「うーん。もしかしたら俺、地方の大学受けるかもしんないんだよ。遠距離になるかも、みたいな話でアイツと揉めたくないっていうか」
そんな事で揉めるのか……と思ったが、ゼンジは言わずにいた。
二人の間には、二人にしか分からない事がきっとあるんだろう。
「おーい、そこの二人。ヤル気ないぞー」
体育教師の声がする。
「お互い様でーす」
二人は立ち上がると教師に向かって声をかけた。
授業に参加しみたはいいものの……なんというか、バスケが全く成立していないというか。ダンゴになって、ワーキャー言いながらボールを追っかけ回してるだけの集団を、二人は面倒くさそうに見やっていた。
望月リクが、一際はしゃいでボールを追っかけまわしていた。かと思うと、ボールを怖がってよけてみたりしている。ゼンジはそんなリクを、白けた気分で眺めていた。
やっぱり俺、望月のこと嫌いかもしんない。大して楽しくもないくせに、わざとらしい。周りもなんでそれに気づかないんだ。
身長は165cmくらいだろう。骨格が小さいせいで余計、小柄に見える。顔だって、女性的だ。けれども纏っている雰囲気は不思議なまでに、しっかりと男性のそれなのだ。
そんなリクへ向けられる男子の視線に、性的なものが含まれている事に気づいたゼンジは、気分が悪くなった。
そういう目で見てるから、あの白々しい演技を見逃してるっていうのか。
ゼンジは近くにあったボールを拾い上げると、思い切りロングシュートをかました。
「あれ。一緒に着替えんの?」
心底驚いた表情のアラタが、ゼンジの顔を見ていた。
「やられた」
「は?」
さっきは授業の直前だった事もあって、更衣室にはゼンジとリクの他に、もう一人しかいなかった。挑発された苛立ちも手伝って、そのまま制服を置きっぱなしにしてしまったのだった。
「鞄、取ってきてやろうか?」
背中の傷の事を知っているアラタが、気を遣って声をかけた。
「いや、いい」
ゼンジはムキになっていた。
とは言え
もう何年も、マトモに男子更衣室で着替えていない。こんなに男の裸だらけとは、むさ苦しくて開けっぴろげなものだったか?と、ゼンジは困惑を隠せないでいた。
AVがどうのだの、どのクラスの誰がエロい身体をしてるだの、そんな話ばかりだ。
むせっ返るような独特の雰囲気に慣れていないゼンジは、早いところ着替えて更衣室を出ようと思った。
部屋の隅でTシャツを脱ぎ、汗を拭いていると、ドッと賑わう声が聞こえて来る。
「望月の手首って、昨日、女王様にやって貰ったんだってよ!」
「うわー、変態じゃん。お前」
「気持ちいいんだよ」
「なあ、最後ってやっぱ、女王様とやるわけ?」
下衆な話題だな……と呆れて話の方向に目を向けると、ボクサーパンツ一枚の望月が、クラスメイトに囲まれて話をしてた。わざとらしい表情に当てられてるやつもいた。
「最後はさあ……してもらうんだよ」
と、股間に手を当てて擦るマネをする。リクのボクサーからはソレの形がクッキリと浮き出ていた。ゴクリと言う、欲望の生唾が聞こえてきそうだった
アラタは聞こえないフリをしているものの、あからさまに赤面していた。他のクラスメイトも、似たり寄ったりだった。
――いつもこんな話してるのか……
ゼンジはアンダーシャツだけ着ると、残りの制服を鞄に詰めて、更衣室を後にした。
なんだろう、本当に気持ちが悪い。吐き気がする。
湿気が身体にまとわりついてきて、ベタベタする。俺だって、普通にオナニーはする。SEXをしてみたいとも思う。けれど、あんなのは……他人のオナニーを見せつけられてるのと同じだ。そういう趣味は、俺にはない。
踊り場に到着したゼンジは、乱暴にアンダーシャツを脱ぎ捨てた。あんなくだらない挑発になんて乗るんじゃなかった、と後悔しながら。
望月は野路なんかじゃない。少しも似てない。ただのクソ野郎だ。
◆
ザーッと雨足の強くなる音がする。
このまま屋上に出て雨を浴びた方が、よっぽどスッキリするんじゃないかと思った。半井ゼンジはノブを何度が回してみたが、扉は錆びついておりビクともしなかった。雑に放置してあるマットにもたれかかると、少し冷静になった方が良さそうだと感じていた。
けれども
「最後はさあ……してもらうんだよ」
あの光景が頭から離れない。望月リクに対して嫌悪感しかないのに、ゼンジのソレは今にもはち切れんばかりにガチガチになっていた。
とっくに昼休みに入っていたので、流石にトイレで処理をする自信はなかった。しばらく落ち着くのを待ってみたりもしたが、一向に治まる気配がない。
もう、ここで処理するしかない。
ゼンジ仕方なく、ベルトを外してズボンを膝まで下ろした。
「ン…………クッ」
出来るだけ早く済まそうと、機械的に擦る。溜まっているのだから、直ぐにでもイケそうなものなのに中々イケない。
野路の裸を思い浮かべてみようとしてみても、出てくるのはリクの白い身体だけだった。
ふと、背後に気配を感じた。
またか。
今度は誰か、すぐに分かった。
「うわあ、変態じゃん」
リクが悪戯っ子のような顔をして、笑っていた。急にゼンジは全てがバカバカしくなってきて、何とも言えない情けない気持ちになっていた。
「生理現象」
それだけ言うと、ボクサーを履こうと膝立ちになった。
その瞬間だった、リクが抱きついてきたのは。
「やめないで」
真剣な声だった。
ゼンジの裂傷痕に頬を埋めている。
ゾクッとするほど、冷たい頬だった。
「離れろ」
そう言いつつも、ゼンジは腕を振り解く事が出来ないでいた。
長いまつ毛が瞬きをする度に、敏感になっている背中をイヤと言うほど刺激した。ゼンジのモノが再び、大きくそそり上がってくる。
押し当てられていたリク頬は、いつしか唇に変わり、ゼンジの背中を愛撫し始めていた。
「ねえ、この傷っていつ出来たの?」
「――……」
ツツーッと傷痕に舌を這わせる。ゼンジの身体が堪えきれず、ビクッと少しだけ反応した。火照って汗ばんだ上半身を、蛇が這っているようだった。
生まれて初めての感覚を、俺はどうする事も出来ない。
リクは唇を離すと、今度はその傷痕に細い指を這わせ愛撫した。傷痕をなぞられる度に、鳥肌の立つような快感が襲ってくる。
ゼンジがどれだけ我慢しようとも、身体は正直だった。乳首まで硬く尖っている。何とか声を漏らさないようにするので、精一杯だった。
そのままゼンジのボクサーまで指を這わせたリクは、まるでそうするのが当たり前だとでも言うように、彼の下半身をしごき始めた。
再びゼンジの身体がビクッと震えると、次第にお互いの呼吸が荒くなっていった。
ハァー
ハァー
二人の吐息しか聞こえない、踊り場。
閉じていた目を開くと、リクの手が視界に入ってきた。痛々しさしか感じなかった手首の傷痕が、熱に浮かされ赤く膨らんでいる。ああもう、内臓を引っ掻き回されているみたいだ。ゼンジは、クラクラとするような眩暈を覚えていた。
それはリクもまた、同じだった。
「ねえ……ハァ……俺も、いい?」
ゼンジは無言だった。
正解は、お前がとっくに知っているんだろう。
さっきから抵抗をしていない。出来ないんだ。
つまりは、そういう事だった。
リクはズボンを脱いで、熱くなった自分のモノをゼンジの背中に押し付けると、腰を動かし始めた。既に先端は、ヌルヌルとした透明の液体まみれになっている。
「…………ぅうん……」
リクが声を漏らすとゼンジの先端からも同じ液体が出てきて、ヌチヌチと淫猥な音を立て始めた。
ハァハァ
段々とお互いの吐息が早く、切なくなってくる。
「ああっ……もうっ」
リクの上ずった声に呼応するように、ゼンジの下半身がパンパンに膨れあがった。
「イッ……イクッ!」
「……!」
リクが仰け反りながら射精したのと同時に、ゼンジもブルッと身体を震わせながら射精した。
ゼンジの背中にある傷痕は彼が夢想した通り、リクの白い分身で穢されていた。
「ねえ。男とこういう事すんのって、初めて?」
身体を拭きながらリクがまだ、熱を帯びた声で聞いてきた。
もうさっきからずっと、アイツを見ることが出来ない。してしまった事の恥ずかしさに、ゼンジは押し潰されそうになっていた。
「当たり前だろ、そんなの」
「ふうん、じゃあ女とは?」
「――……」
「半井って、童貞なんだ。ウケる」
ゼンジの背中を穢した自分の白い液体を拭いながら、リクは心底満足そうに笑っていた。
俺が童貞だろうと、この行為はオナニーの延長線でしかない。それは、お前だって同じじゃないか。
「また、しようよ」
背後から浮かれた声が聞こえてくる。
「ごめんだね。これっきりだ」
素っ気なく答えたゼンジは着替えもそこそこに、鞄を掴んで立ち上がった。
この場から、一刻も早く立ち去りたい。そして金輪際、コイツとは関わりを持ちたくない。
足早に階段へと向かってゆく。
もう二度と、ここへも来ない。
すれ違いざま、さっきまでとは真逆の、酷く醒めきったリクの声が踊り場に響き渡った。
「ねえ。誰かを本当に好きになった事って、ある?」
コイツ、人をバカにすんのも大概にしろよ!
カッとして振り返ると、リクは背中を向けたまま微動だにせずポツンと座っていた。ゼンジは、小さな子供を見ているかのような錯覚に囚われていた。
初めて、素の望月を見たような気がする。
束の間、沈黙が流れる。
無視する事も出来た。ふざけるなと言って、殴る事も出来た。
けれど、そうするには余りにも小さな背中だった。
処理能力が追いつかない。感情と気持ちがバラバラになってしまいそうで、眩暈がする。
「まだ……そう言うのは分からない」
辛うじてそれだけ言うと、ゼンジは駆け足で階段を降りて行った。二度と関わりたくないと思っているのに「ちくしょう」という言葉が何度も口から出てきて、それが堪らなく悔しかった。
今年はどうやら、雨の多い梅雨になりそうだった。制服は10日以内に仕立て終わるとの事で、半井ゼンジはホッとした気持ちになっていた。流石にもう、サイズの合わない制服を着続けているのは恥ずかしかった。
弥生の言ってた事は図星なんだよな、と思う。
モテて悪い気はしないし、恋人だって欲しい、本音を言えばSEXだってしてみたい。けれども、肝心の好きという感情が今ひとつよく分からない。
高校に入って、数人の女子から告白をされた。どの子も学年で可愛いと評判の子だったが、何回かデートをして断ってしまった。楽しくなかった訳じゃない。ただ、なんというか。ずっと一緒にいたいと、単純に思えなかった。
かといって、初恋めいた経験がない訳じゃない。中学の時に、気になる存在の女子はいた。酷く天邪鬼な子で、クラスでも浮いた存在だった。確か、野路って名前だった。
ツンデレなんだろう。憎まれ口ばかりきいていたかと思えば、ゼンジの前ではやけに素直だったりする。恋愛感情云々というよりは、生意気な弟と一緒にいる感じ。見た目も、ショートカットで少年のようだった。
グループからあぶれがちだった野路とゼンジは、何故か気が合った。
中2の夏に林間学校のレクリエーションで、花火をすることになった。小さく灯る火花に照らされた彼女の横顔を見ていて、生まれて初めて触ってみたいと思った。
二学期が始まると直ぐに、実家の都合とかで転校していってしまったけれども。
今日も相変わらずの雨で、色とりどりの傘が学校に向かって流れてゆく。
もし野路がまだ近くにいたら、今頃どうなってたんだろうか。
付き合ったりしてたのかな。
そんな事を考えながらゼンジは傘の群れと共に歩き、校門をくぐり抜けて行った。
傘を傾けて、自分のクラスを見る。頬杖をついていた望月リクが、今日は確実にゼンジを睨みつけていた。昨日、俺の着替えを見ていたのは、やっぱりアイツなんだろう。ゼンジはカチンときて睨み返したが、リクはいつものようには視線を逸らさなかった。
朝っぱらから睨み合う形になって、突然、ゼンジは気づいた。
望月の顔は、どことなく野路と似ている。
ツリ目がちの大きな目、プライドの高そうな鼻、全体的に薄い色素。
なんだって、今更そんな事に気づいたんだろう。
彼女の事を考えていたからか。
だからと言って、俺がアイツを恋愛対象として見るなんて事は、永遠に訪れない。相手は男だ。それ以前に、嫌いとすら思ってる人間を、何処の誰が触れてみたいだなんて思うんだ。
見た目だけの、まさに他人の空似。
それ以上でも、以下でもない。
まだ校舎まで少し距離があったが、ゼンジは何となく雨に濡れたくなった。リクは相変わらずゼンジを睨んでいたが、無視して傘を閉じるとゆっくり校舎へ向かって歩いていった。
いつもの教室
いつもの光景
「おはよ」
「おはー」
アラタがビタミンゼリーをくわえながら、ヨッと手を小さく振る。
「なん、ゼンジ。めっちゃ濡れてんじゃん。傘壊れたん?」
「ビニ傘だかんな」
タオルで身体を拭きながら、鞄を席に置くと、リクの姿が目に入った。この蒸し暑さの中、クラスでたった一人長袖シャツを着ている。
つくづく変なヤツだな。
望月みたいなどうでもいいヤツの事まで考えてしまうのは、きっと面影が重なったせいだ。とゼンジは結論づける事にした。
◆
4限目は体育だった。昨日の今日でまたバスケ。
半井ゼンジは思わず「また?」と、うんざりした声を漏らしてしまっていた。アラタが少しだけ気まずそうにしながら、ゼンジの横顔を見ていた。
「まあ、いいか。今日は弥生から、ランチを奢ってもらう約束もんな」
そうアラタに笑いかけたゼンジは、早めにいつもの踊り場で着替えようと教室を出ていった。その瞬間だった。小さな黒髪が、ゼンジの胸とぶつかったのは。ワタワタと何だか酷く慌てている。
黒髪の主は、蓮波綾だった。綾は顔を見上げて、ぶつかってしまったのがゼンジだと気づくと更に慌てて「ヒャッ」っと言いながら、足を滑らせた。
ゼンジが咄嗟に腕を引っ張りあげると、今日はまた盛大に腕に包帯が巻いてあるのが目に入った。
「す……すみません!」
「いや、俺も急いでたから」
申し訳なさそうにアタフタしている綾に声をかけると、彼女の視線が動いて硬直した。
そのまま廊下を行き交う生徒などお構い無しに後ずさろうとしたので、ゼンジはもう一度、綾の腕を引っ張り上げた。
思った以上に、鈍臭い子だな。
「後ろ、気をつけないと」
「あっ……あっごめんなさい」
噂好きな生徒たちの視線が集中してくる。綾は顔を真っ赤にして手を振り払うと、ゼンジに何度も礼をしつつ、パタパタと走り去っていった。その間も、二度ほど躓いてすっ転びそうになっていた。
やっぱり、鈍臭いんだな。蓮波って。
「半井。着替え、間に合わないね」
声がして振り返ると、教室の扉にもたれかかりながら望月リクが立っていた。足をプラプラとさせ腕組みをしながら、何がおかしいのかニヤニヤと笑っている。
「遅れて行くからいいよ」
そっけなく答えて歩き出したゼンジに対して、そんな言葉、まるで意に介さないとでも言いたげな顔でリクが話を続けた。
「大丈夫だよ、俺にも今日は傷があるんだ」
やっぱり、着替えを見ていたのは望月だったのか。まあ、どうでもいい。コイツが何をどう思っていようが、俺には関係のない事だ。
無視して歩き出したゼンジの後ろを、リクが早足でついて行った。
「ねえ、無視しないでよ。面白いものあるんだけど、見る?」
「見ない」
振り返る事もなくゼンジが答えると、いきなり細くて長い指が腕に絡みついてきた。
「なにすんだよ……」
ようやく振り向いたゼンジは、リクが見せた面白いものを凝視しながら愕然としていた。シャツが捲れて、奇妙な形の擦り傷が剥き出しになっている。
縄か何かで縛られて出来た傷としか思えない。
「どうせ誰も見てなんかいないよ」
呆気に取られている隙に、リクはゼンジの前に周り込んでいた。挑発するような目が、どうしても野路と重なる。
「もう、更衣室で着替えなよ」
そう言うと、リクはクスクスと笑ってみせた。
ゼンジは面影の先にある彼女からからかわれたような気がして、酷く恥ずかしい気分になっていた。
◆
「雨っつうとバスケ。この学校って、芸がないよな」
横に座っていたアラタが飴を口の中で転がしながら、愚痴っていた。夏に入れば本格的に講習が始まり、早い生徒は二学期で部活動を引退する。進学校の体育なんて、こんなもんなのかもなあと半井ゼンジは思っていた。
「あ、そだ。今日、新宿付き合ってよ。遠くてわりいんだけど」
「良いけど、なんで?」
アラタが少し困ったような表情で答えた。
「そろそろ、予備校を決めなきゃなんなくって。弥生はまだ何も考えてないみたいでさ。何か、話しにくいんだよね」
「そういうもんなの?」
「うーん。もしかしたら俺、地方の大学受けるかもしんないんだよ。遠距離になるかも、みたいな話でアイツと揉めたくないっていうか」
そんな事で揉めるのか……と思ったが、ゼンジは言わずにいた。
二人の間には、二人にしか分からない事がきっとあるんだろう。
「おーい、そこの二人。ヤル気ないぞー」
体育教師の声がする。
「お互い様でーす」
二人は立ち上がると教師に向かって声をかけた。
授業に参加しみたはいいものの……なんというか、バスケが全く成立していないというか。ダンゴになって、ワーキャー言いながらボールを追っかけ回してるだけの集団を、二人は面倒くさそうに見やっていた。
望月リクが、一際はしゃいでボールを追っかけまわしていた。かと思うと、ボールを怖がってよけてみたりしている。ゼンジはそんなリクを、白けた気分で眺めていた。
やっぱり俺、望月のこと嫌いかもしんない。大して楽しくもないくせに、わざとらしい。周りもなんでそれに気づかないんだ。
身長は165cmくらいだろう。骨格が小さいせいで余計、小柄に見える。顔だって、女性的だ。けれども纏っている雰囲気は不思議なまでに、しっかりと男性のそれなのだ。
そんなリクへ向けられる男子の視線に、性的なものが含まれている事に気づいたゼンジは、気分が悪くなった。
そういう目で見てるから、あの白々しい演技を見逃してるっていうのか。
ゼンジは近くにあったボールを拾い上げると、思い切りロングシュートをかました。
「あれ。一緒に着替えんの?」
心底驚いた表情のアラタが、ゼンジの顔を見ていた。
「やられた」
「は?」
さっきは授業の直前だった事もあって、更衣室にはゼンジとリクの他に、もう一人しかいなかった。挑発された苛立ちも手伝って、そのまま制服を置きっぱなしにしてしまったのだった。
「鞄、取ってきてやろうか?」
背中の傷の事を知っているアラタが、気を遣って声をかけた。
「いや、いい」
ゼンジはムキになっていた。
とは言え
もう何年も、マトモに男子更衣室で着替えていない。こんなに男の裸だらけとは、むさ苦しくて開けっぴろげなものだったか?と、ゼンジは困惑を隠せないでいた。
AVがどうのだの、どのクラスの誰がエロい身体をしてるだの、そんな話ばかりだ。
むせっ返るような独特の雰囲気に慣れていないゼンジは、早いところ着替えて更衣室を出ようと思った。
部屋の隅でTシャツを脱ぎ、汗を拭いていると、ドッと賑わう声が聞こえて来る。
「望月の手首って、昨日、女王様にやって貰ったんだってよ!」
「うわー、変態じゃん。お前」
「気持ちいいんだよ」
「なあ、最後ってやっぱ、女王様とやるわけ?」
下衆な話題だな……と呆れて話の方向に目を向けると、ボクサーパンツ一枚の望月が、クラスメイトに囲まれて話をしてた。わざとらしい表情に当てられてるやつもいた。
「最後はさあ……してもらうんだよ」
と、股間に手を当てて擦るマネをする。リクのボクサーからはソレの形がクッキリと浮き出ていた。ゴクリと言う、欲望の生唾が聞こえてきそうだった
アラタは聞こえないフリをしているものの、あからさまに赤面していた。他のクラスメイトも、似たり寄ったりだった。
――いつもこんな話してるのか……
ゼンジはアンダーシャツだけ着ると、残りの制服を鞄に詰めて、更衣室を後にした。
なんだろう、本当に気持ちが悪い。吐き気がする。
湿気が身体にまとわりついてきて、ベタベタする。俺だって、普通にオナニーはする。SEXをしてみたいとも思う。けれど、あんなのは……他人のオナニーを見せつけられてるのと同じだ。そういう趣味は、俺にはない。
踊り場に到着したゼンジは、乱暴にアンダーシャツを脱ぎ捨てた。あんなくだらない挑発になんて乗るんじゃなかった、と後悔しながら。
望月は野路なんかじゃない。少しも似てない。ただのクソ野郎だ。
◆
ザーッと雨足の強くなる音がする。
このまま屋上に出て雨を浴びた方が、よっぽどスッキリするんじゃないかと思った。半井ゼンジはノブを何度が回してみたが、扉は錆びついておりビクともしなかった。雑に放置してあるマットにもたれかかると、少し冷静になった方が良さそうだと感じていた。
けれども
「最後はさあ……してもらうんだよ」
あの光景が頭から離れない。望月リクに対して嫌悪感しかないのに、ゼンジのソレは今にもはち切れんばかりにガチガチになっていた。
とっくに昼休みに入っていたので、流石にトイレで処理をする自信はなかった。しばらく落ち着くのを待ってみたりもしたが、一向に治まる気配がない。
もう、ここで処理するしかない。
ゼンジ仕方なく、ベルトを外してズボンを膝まで下ろした。
「ン…………クッ」
出来るだけ早く済まそうと、機械的に擦る。溜まっているのだから、直ぐにでもイケそうなものなのに中々イケない。
野路の裸を思い浮かべてみようとしてみても、出てくるのはリクの白い身体だけだった。
ふと、背後に気配を感じた。
またか。
今度は誰か、すぐに分かった。
「うわあ、変態じゃん」
リクが悪戯っ子のような顔をして、笑っていた。急にゼンジは全てがバカバカしくなってきて、何とも言えない情けない気持ちになっていた。
「生理現象」
それだけ言うと、ボクサーを履こうと膝立ちになった。
その瞬間だった、リクが抱きついてきたのは。
「やめないで」
真剣な声だった。
ゼンジの裂傷痕に頬を埋めている。
ゾクッとするほど、冷たい頬だった。
「離れろ」
そう言いつつも、ゼンジは腕を振り解く事が出来ないでいた。
長いまつ毛が瞬きをする度に、敏感になっている背中をイヤと言うほど刺激した。ゼンジのモノが再び、大きくそそり上がってくる。
押し当てられていたリク頬は、いつしか唇に変わり、ゼンジの背中を愛撫し始めていた。
「ねえ、この傷っていつ出来たの?」
「――……」
ツツーッと傷痕に舌を這わせる。ゼンジの身体が堪えきれず、ビクッと少しだけ反応した。火照って汗ばんだ上半身を、蛇が這っているようだった。
生まれて初めての感覚を、俺はどうする事も出来ない。
リクは唇を離すと、今度はその傷痕に細い指を這わせ愛撫した。傷痕をなぞられる度に、鳥肌の立つような快感が襲ってくる。
ゼンジがどれだけ我慢しようとも、身体は正直だった。乳首まで硬く尖っている。何とか声を漏らさないようにするので、精一杯だった。
そのままゼンジのボクサーまで指を這わせたリクは、まるでそうするのが当たり前だとでも言うように、彼の下半身をしごき始めた。
再びゼンジの身体がビクッと震えると、次第にお互いの呼吸が荒くなっていった。
ハァー
ハァー
二人の吐息しか聞こえない、踊り場。
閉じていた目を開くと、リクの手が視界に入ってきた。痛々しさしか感じなかった手首の傷痕が、熱に浮かされ赤く膨らんでいる。ああもう、内臓を引っ掻き回されているみたいだ。ゼンジは、クラクラとするような眩暈を覚えていた。
それはリクもまた、同じだった。
「ねえ……ハァ……俺も、いい?」
ゼンジは無言だった。
正解は、お前がとっくに知っているんだろう。
さっきから抵抗をしていない。出来ないんだ。
つまりは、そういう事だった。
リクはズボンを脱いで、熱くなった自分のモノをゼンジの背中に押し付けると、腰を動かし始めた。既に先端は、ヌルヌルとした透明の液体まみれになっている。
「…………ぅうん……」
リクが声を漏らすとゼンジの先端からも同じ液体が出てきて、ヌチヌチと淫猥な音を立て始めた。
ハァハァ
段々とお互いの吐息が早く、切なくなってくる。
「ああっ……もうっ」
リクの上ずった声に呼応するように、ゼンジの下半身がパンパンに膨れあがった。
「イッ……イクッ!」
「……!」
リクが仰け反りながら射精したのと同時に、ゼンジもブルッと身体を震わせながら射精した。
ゼンジの背中にある傷痕は彼が夢想した通り、リクの白い分身で穢されていた。
「ねえ。男とこういう事すんのって、初めて?」
身体を拭きながらリクがまだ、熱を帯びた声で聞いてきた。
もうさっきからずっと、アイツを見ることが出来ない。してしまった事の恥ずかしさに、ゼンジは押し潰されそうになっていた。
「当たり前だろ、そんなの」
「ふうん、じゃあ女とは?」
「――……」
「半井って、童貞なんだ。ウケる」
ゼンジの背中を穢した自分の白い液体を拭いながら、リクは心底満足そうに笑っていた。
俺が童貞だろうと、この行為はオナニーの延長線でしかない。それは、お前だって同じじゃないか。
「また、しようよ」
背後から浮かれた声が聞こえてくる。
「ごめんだね。これっきりだ」
素っ気なく答えたゼンジは着替えもそこそこに、鞄を掴んで立ち上がった。
この場から、一刻も早く立ち去りたい。そして金輪際、コイツとは関わりを持ちたくない。
足早に階段へと向かってゆく。
もう二度と、ここへも来ない。
すれ違いざま、さっきまでとは真逆の、酷く醒めきったリクの声が踊り場に響き渡った。
「ねえ。誰かを本当に好きになった事って、ある?」
コイツ、人をバカにすんのも大概にしろよ!
カッとして振り返ると、リクは背中を向けたまま微動だにせずポツンと座っていた。ゼンジは、小さな子供を見ているかのような錯覚に囚われていた。
初めて、素の望月を見たような気がする。
束の間、沈黙が流れる。
無視する事も出来た。ふざけるなと言って、殴る事も出来た。
けれど、そうするには余りにも小さな背中だった。
処理能力が追いつかない。感情と気持ちがバラバラになってしまいそうで、眩暈がする。
「まだ……そう言うのは分からない」
辛うじてそれだけ言うと、ゼンジは駆け足で階段を降りて行った。二度と関わりたくないと思っているのに「ちくしょう」という言葉が何度も口から出てきて、それが堪らなく悔しかった。
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