上 下
2 / 4

男?女?

しおりを挟む
「この子、ちょうだい。」
そう言った声の主はどうも中性的な見た目の、真っ黒な珍しい目をした人物だった。
「なっ・・・、なんなんだ!この僕が買おうとしていたんだぞ!取り消せよ!」
「あら、契約は成立してなかったんでしょう?なら店主の判断に委ねるべきじゃないかしら。」
あぁ、この人になら買われてもいい。むしろ買って欲しいくらいだ。
「おい店主!どうなんだ!?どっちが買うべきだ!?」
憤慨した様子で彼は店主に問う。店主は困った表情で、
「そうですねぇ・・・。ご主人は最後まで言い切っていなかったですし、あの方が買われるのが正しいかと・・・。」

「じゃ、契約成立ね。はいこれ、お釣りいらないからもらってね。いい人を紹介してくれてありがとう。」
そう言ってその人は腰に巻いていた小さな鞄から硬貨を片手にいっぱい掴んで店主に渡した。

驚愕。その一言に尽きる。ものの価値をわかっているのだろうか?金貨なんてそうそう平民が出せるものじゃないのにこんなに沢山・・・

その頃、顔を真っ赤にした男は、
「なっ、な、なんだって言うんだ!大体こんなやつのどこがいいんだよ!小汚いガキのどこが!趣味わるーっ!お前もお前だ!何だこの女々しい男は!僕みたいに男らしく居ろってんだ!」
そう捲し立てて息を弾ませていた。

私は青筋を立てて堪えていた。何故なら奴隷という立場だからだ。ふと前を見てみると、私はあの人の性別に確信を持った。その刹那、鈍い音と貴婦人の悲鳴が耳を貫いた。

「男じゃないわ。女よ。」

右手を握りしめ、私と同じく青筋を立てた彼女を───
しおりを挟む

処理中です...