転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します

真理亜

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「この別館の役割を教えてちょうだい」

 私はハインツにそう尋ねた。

「はい、遠方より我が領地にお越し頂いたお客様の方々にお泊まり頂くための施設となっております」

「なるほど...」

 王都にある屋敷と基本的には同じ使い方か。

「それで今現在、泊まっている人は何人くらい居るの?」

「いらっしゃいません」

「はいっ!?」

「ですから、一人もいらっしゃいません」

「そう...ちなみにそんな状態は良くあることなのかしら?」

「というより、お客様がいらっしゃる方が稀でございますね」 

「ちょっと待ってちょっと待って...だったらあなた達は普段、なにをして過ごしているっていうのよ!?」

 たまにしか客が訪れない屋敷を維持する意義ってなに!? 私は理解に苦しんだ。

「この別館には先代様がお住まいになっておられますので、主に先代様のお世話をさせて頂いております」

「あぁ、そういうこと...」

 王都にあんなバカデカい屋敷を作って、私の父親に譲った張本人か。ということは、ここの領主館も別館も先代の趣味っていうことだな。典型的な貴族の在り方ってヤツか。こりゃあ私の改革案を聞いたら激怒しそうだな。

「先代様はいらっしゃる? ご挨拶したいんだけど?」

 本当は会いたくないが、シカトする訳にもいかないだろう。ところで、ベアトリーチェは孫なんだから当然何度も会っているんだろうな。

 私は名前も顔も知らない先代とやらに、どうやって接すればいいのかちょっと悩んだ。おじいちゃん、おばあちゃんに甘えるような感じでいいのかな?

「いえ、先代様、フランクリン様は奥様のエリザベス様を伴って旅行中でございます」

 フランクリンとエリザベスね。良しメモった。不在と分かってちょっとホッとしたけどね。

「そうなのね。いつ頃お戻りになる予定なのかしら?」

「申し訳ございません。伺っておりません」

「えっ!? どういうこと!? そんなことが有り得るの!?」

「えぇ、なにせ諸国漫遊の旅に出ておられますから。今頃どこでどうしておられるのやら。私共では分かりかねます」

 なるほどね。前世で言うところのアレか? 引退した大富豪が豪華客船に乗って世界一周の旅に出るようなもんなんだな。

 呑気なことだ...領民が苦しんでいるっていうのに...私は呆れるしかなかった。逆に言えばさっさと隠居して貰った方が良かったのかも知れないな。いつまでも先代が領主をしていたら、間違いなく暴動が起きていただろうから。

「そう、分かったわ。それじゃあ先代様がお戻りになったら、ベアトリーチェが会いたがっていると伝えてちょうだいな」

「畏まりました」
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