57 / 316
57
しおりを挟む
「それで話し合いの方は如何でしたか?」
「上々よ。二人とも快く改革に賛同してくれたわ」
「それは良かったです。これから忙しくなりますね」
「えぇ、そうね。だから今の内にゆっくり休んでおきなさい。今日の午後は特になにもないから」
「大丈夫です。疲れてはいません」
「ラインハルト、無理すんじゃないの。連日、初対面の人とばかり応対して疲れたって顔に書いてあるわよ?」
するとラインハルトは慌てて鏡を覗き込んだ。もちろん、本当に書いてあると思った訳じゃないだろうが。そんな仕草一つ取って見ても愛らしいんだから~♪ ホント、私からしたら眼福もんだよ~♪
だが確かに疲労の色は濃く顔に残っている。私と同じで人見知りするタイプのラインハルトに取っては、初対面の人を連日相手にするのは相当にストレスの溜まる大変な経験だったことだろう。
でも、そういうのにも次第に慣れて行かないとね。将来、公爵家を背負って立つ者ならそんなこと出来て当然。寧ろ出来なきゃその資格は無いからね。これからますます付き合いのある人達が増えて行くんだから。何事も修行だよ。
ただそうは言っても、適度な休息は必要になって来る訳で。
「シンシア、ラインハルトを部屋に閉じ込めておいて? 今日は部屋から出ないようにあなたが監視していなさい」
「お、お姉様! な、なにもそこまでしなくても...」
ラインハルトは抗議するが私はガン無視する。というか、寧ろシンシアと二人っきりになれるんだから感謝して欲しいくらいだ。部屋の中でシンシアと心行くまでイチャイチャしてりゃいい。
「畏まりましたが、お嬢様は如何されますか?」
「私のことは構わないで平気よ。これからお父様に定期報告の手紙を書くだけだから」
「あぁ、あの週一で報告する義務があると言う...」
「そうよ。面倒だけど仕方ないわ。この義務さえ果たせば後は領地で好き勝手やっていいってのが条件なんだから」
実際、ため息を吐きたくなるほど面倒だ。なにか書くことがある内はまだいいが、なにも書くことがなくなったらどうすればいいんだろう? 一言、
『特に無し』
じゃダメかな? いや、あの父親のことだから...こんなんでアッサリ済ませた日にゃ...速攻で王都に連れ戻されるわな...
私はため息を吐くのを我慢しながら便箋に綴り始めた。
「あ、あの、お姉様! ぼ、僕にも手伝わせて下さい!」
「シンシア、さっさと連れてっちゃって?」
もちろん再びガン無視した。
「畏まりました」
「お、お姉様~!」
私は、シンシアに引き摺られるようにして部屋を出て行くラインハルトを見やりながら、
「後は若いお二人でごゆっくり~♪」
と独り言ちていた。
「上々よ。二人とも快く改革に賛同してくれたわ」
「それは良かったです。これから忙しくなりますね」
「えぇ、そうね。だから今の内にゆっくり休んでおきなさい。今日の午後は特になにもないから」
「大丈夫です。疲れてはいません」
「ラインハルト、無理すんじゃないの。連日、初対面の人とばかり応対して疲れたって顔に書いてあるわよ?」
するとラインハルトは慌てて鏡を覗き込んだ。もちろん、本当に書いてあると思った訳じゃないだろうが。そんな仕草一つ取って見ても愛らしいんだから~♪ ホント、私からしたら眼福もんだよ~♪
だが確かに疲労の色は濃く顔に残っている。私と同じで人見知りするタイプのラインハルトに取っては、初対面の人を連日相手にするのは相当にストレスの溜まる大変な経験だったことだろう。
でも、そういうのにも次第に慣れて行かないとね。将来、公爵家を背負って立つ者ならそんなこと出来て当然。寧ろ出来なきゃその資格は無いからね。これからますます付き合いのある人達が増えて行くんだから。何事も修行だよ。
ただそうは言っても、適度な休息は必要になって来る訳で。
「シンシア、ラインハルトを部屋に閉じ込めておいて? 今日は部屋から出ないようにあなたが監視していなさい」
「お、お姉様! な、なにもそこまでしなくても...」
ラインハルトは抗議するが私はガン無視する。というか、寧ろシンシアと二人っきりになれるんだから感謝して欲しいくらいだ。部屋の中でシンシアと心行くまでイチャイチャしてりゃいい。
「畏まりましたが、お嬢様は如何されますか?」
「私のことは構わないで平気よ。これからお父様に定期報告の手紙を書くだけだから」
「あぁ、あの週一で報告する義務があると言う...」
「そうよ。面倒だけど仕方ないわ。この義務さえ果たせば後は領地で好き勝手やっていいってのが条件なんだから」
実際、ため息を吐きたくなるほど面倒だ。なにか書くことがある内はまだいいが、なにも書くことがなくなったらどうすればいいんだろう? 一言、
『特に無し』
じゃダメかな? いや、あの父親のことだから...こんなんでアッサリ済ませた日にゃ...速攻で王都に連れ戻されるわな...
私はため息を吐くのを我慢しながら便箋に綴り始めた。
「あ、あの、お姉様! ぼ、僕にも手伝わせて下さい!」
「シンシア、さっさと連れてっちゃって?」
もちろん再びガン無視した。
「畏まりました」
「お、お姉様~!」
私は、シンシアに引き摺られるようにして部屋を出て行くラインハルトを見やりながら、
「後は若いお二人でごゆっくり~♪」
と独り言ちていた。
15
あなたにおすすめの小説
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる