転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します

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「お嬢様、如何だったでしょうか?」

「素晴らしかったです!　ヘルマンさん!」

「お褒め頂き恐悦至極に存じます」

「ヘルマンさん、次の王都での公演はこの演目をメインに持って来て下さいね!」

「め、メインですか...」

　ヘルマンさんの顔が強ばってしまった。

「なにか問題でも?」

「問題と言いますか...その...王都は王族の方々のお膝元ですので...このような演目はマズいのではないかと...」

　あぁ、その点を気にしてたのね。確かに、王子様と平民の少女のラブロマンスだもんねぇ。でもね、

「ヘルマンさん、それは寧ろ逆です。こういった演目は王都で上演することにこそ意味があるんですよ」

「とおっしゃいますと?」

「王都に住んでる都民なら、もしかしたら自分がヒロインになれるかもって思うじゃないですか?　なにせ王族が自分達の目の前に住んでいるんだから。地方に暮らす我々と違って、王族との接点を格段に持ち易い環境にある訳なんですよ。こういったシンデレラストーリーに憧れる人は多いでしょうから、間違いなく話題になりますよ!」

「なるほど...確かにそうかも知れませんが、王族の方々からはどう思われるでしょうか...」

「その点は気にしなくて構いませんよ。別に王政を批判するとかの内容じゃないんで、この程度で目くじら立てるようなことは無いと思います。もしなんかごちゃごちゃ言って来たら、ウチの父を間に立てますからご安心を」

「承知致しました。ではメインはこの演目にさせて頂きます」

「よろしくお願いします」

　こうして新作お芝居の観劇は大成功の内に幕を下ろした。


◇◇◇


「マルガ、どう思った?　あなたもシンデレラに憧れたりする?」

　帰りの馬車の中で、私はさりげなくマルガリータに尋ねてみた。

「う～ん...そうですねぇ...今の所、そういった感情は無いかもです。自分をヒロインに見立てて感情移入するっていうより、悪者が退治されて一件落着っていう勧善懲悪物として観ていましたね。見終わった後、スッキリした気分になったって感じです」

「なるほど...」

　確かにそういった見方もあるか。こちらの意図した点ではないけども。

「それに私みたいな平民が王子様と出会うなんてこと、そうそうある訳でもないですし。現実として観るっていうよりも、おとぎ話を観ているような感覚でしたね」

「あら?　そんなこと無いわよ?　王立学園に入ったら、同学年に王子様が居るんだから。接点を持つチャンスはいくらでもあるわよ?」

「えぇっ!?　そうなんですかぁ～!?」

　良し良し。上手く食い付いたな。