転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します

真理亜

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 私が引き取った分のアンドリューの書いた3本の脚本は、1本が喜劇物、1本が推理物、1本が悲劇物というラインナップだった。

 1本ずつ読み進めて行く。まずは喜劇物。

「ブフッ!」

 思わずニヤッとしてしまう風刺の効いたコメディ物じゃなく、爆笑を誘うような抱腹絶倒物だった。私は読みながら何度も吹き出していた。 

 次の推理物は所謂クローズドサークル物で、舞台は大雪に閉じ込められた山小屋。そこに集まった訳有りの人達の間で起きる連続殺人。偶然居合わせた名探偵と真犯人の手に汗握る攻防。奇抜なトリック含め、謎解きの場面はハラハラドキドキの連続だった。

 悲劇物は昔話というかファンタジー物だった。深い深い海の底にある人魚達の国。そこに住むお姫様は人間に憧れていた。人間のように2本の足で大地を踏み締め、太陽の光を浴びながら歩いてみたいと思っていた。 

 そんなある日のこと、とある国の王子様の乗った船が嵐に巻き込まれて転覆してしまう。そこにたまたま通り掛かったお姫様は王子様を助ける。その時、キラキラした王子様の姿に一目惚れしてしまい...

 って、これまんま人魚姫やん!

 ビックリしたなぁもう...まさかこっちの世界で名作劇場にお目に掛かれるとは思ってなかったよ...

 しかも所々に細かな違いはあるものの、最後は人魚姫が泡になって消える所まで同じだったよ。不覚にも涙を流しちゃったよ。

 これはきっとアレなんだろうな。ここは地球と同じような進化の道を辿る平行世界であって、だからこそ同じような文化が育まれて行くってことなんだろうな。私はなんとなくだが、この世界の真理に近付いたような気がした。

 とにもかくにも3作読み終えた私は、ラインハルトの部屋を訪ねた。

 コンコン

「......」

 返事がない。

「ラインハルト? 居ないの?」

 私はちょっとだけドアを開いた。すると、

「お、おねえざまぁ~!」

 滂沱の涙を流しているラインハルトの姿があった。

「ラインハルト!? 一体どうしたの!?」

「うぅぅ...」

 ラインハルトは泣きながらアンドリューの脚本を差し出した。

「が、がなじずぎまずぅ~!」

 そしてますます泣きじゃくってしまった。

 後で詳しく聞いた所によると、私と半分こした脚本は3本全て悲劇物で、続けて読んだらこんな状態になってしまったとのこと。

 ラインハルトが感受性の高い年代だということもあるんだろうが、アンドリューの書いた脚本はそれ以上に構成力や文章の表現力などが優れているものなんだと改めて実感した。
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