転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します

真理亜

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「本当はね? もうちょっとゆっくり時間を掛けて外堀から埋めて行くつもりだったんだけどね...悠長なことを言ってられなくなっちゃった...」

「そうだったんですね...」

「うん、せめて学生時代くらいはマルガリータに窮屈な思いをさせたくなくて、平民のままで居させてあげようと思ってたのよ。ほら、同じ学園内に居れば私が守ってあげられるじゃない?」

「確かに」

「煩わしい貴族のゴタゴタに巻き込まれるのは学園を卒業してからでいいって...親心としてはそう思ってた訳よ...」

「気持ちは分かりますが親って...」

 そこはスルーしとけよ。

「ジークフリート王子の動きが予想外だったなぁ...まさかそんなに早く婚約するなんて思ってなかったよ...」

「恐らくかなり前から動き出していたんでしょうね」

「そうね...あぁ、完全に後手を踏んだなぁ...」

 私はすっかり冷めてしまったコーヒーで喉を潤した。

「実を言うとね? 私の中でマルガリータの引き受け先として想定してたのは、ウチと懇意にしているオールトン侯爵家だったのよ」

「えっ!? そうだったんですか!?」

「うん、オールトン侯爵家は古くからある名家だから、そこなら王妃様も納得してくれるかなって思ってね」

「あぁ、私も名前は聞いたことがあります。確か金鉱山を所有している裕福な家でしたよね?」

「えぇ、そうよ。良く知ってたわね?」

「これでも一応貴族の端くれですから」

 端くれって...一応もなにもお前は伯爵令嬢やろがい。

「まぁとにかく、そうなればウチは王位継承争いに巻き込まれなくて済むかなって思ってたのよねぇ...」

「こっちの想定通りには動いてくれませんよね...」

「本当にね...」

 人生、なかなかそう上手くはいかないもんだ。私はつくづくそう思っていた。

「お茶入れ直しますね」

「コーヒーをお願い」

「はいはい」

 苦笑しながら立ち上がるシンシアを見送りながら、私はこのことをいつマルガリータに伝えようかと考えていた。

「お姉様、ちょっと失礼します」

 その時、領内の視察に行っていたはずのラインハルトが入室して来た。

「あら? ラインハルト、どうしたの?」

「実はつい先程、懇意にしている商人から得た情報なんですが、例のレインボーローズを扱っている隣国の商人が、たまたまウチの領都に商談で来ているらしいんです」

「本当に!? それはラッキーだわね。ラインハルト、その商人とアポイントメント取ってみてくれる?」

「分かりました」

「シンシア、カルロスさんを呼んでくれる?」

「了解しました」
 
 二つの事柄が一気に動き出しそうだ。私は気を引き締めた。
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