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「ラインハルト、ちょっと待っててね?」
そう言って私は席を立つと、ドアを開けて外を覗いた。するとすぐ側に、ニタニタ笑いを浮かべたシンシアが佇んでいた。
そのニヤけ顔にまたムカついた。良し! ここからは制裁の時間だ! 私は物も言わずシンシアを手招きした。
シンシア嬉々として部屋に入って来た。そこで私はラインハルトに向かい、
「ねぇ、ラインハルト。あなたもう筆下ろしは済ませた?」
直球でそう切り込んだ。
「ブッホゥッ! ゲホッ! ゲホッ!」
ラインハルトはちょうどお茶を飲んでいたところだったが、思いっきり噎せ返り、飲んだお茶を全て吐き出してしまった。どうでもいいけど汚いな...
その反応を見て二つのことが分かった。筆下ろしの意味を理解していること。そしてまだ済ませてないということ。
「お、お姉様...な、なにを...ゲホッ! ゲホッ!」
「まだみたいね?」
「そ、それは...そ、その...ゴニョゴニョ...」
「いいのよ? 気にしないで? 初体験の年齢なんて人それぞれなんだから。そんなラインハルトに朗報があるのよ」
「朗報?」
「えぇ、なんとこちらにおわすシンシアお姉さんが、手取り股取り教えてくださるそうよ?」
『ふぇっ!?』
私の言葉に二人が全く同じような反応を返したのはちょっと面白かった。
「ほら見て? シンシアお姉さんはこんな物まで用意してたの。準備万端みたいよ?」
そう言って私は、シンシアが置いて行ったコンドーさんを差し出した。
「ブッホゥッ!」
それを見たラインハルトがまた噎せた。汚いからあんまり吐き出すなよな...ちなみにシンシアはといえば、自身の目論見が意外な方向に向かったことに戸惑いを隠せないようだった。
「じゃあ後は若いお二人でごゆっくり」
「ちょ、ちょっと! お姉様!?」
「ちょ、ちょっと! お嬢様!?」
二人の慌てた声を聞き流しながら、私はそそくさと部屋を後にした。
◇◇◇
「あ、お父様」
部屋を出た辺りで父親とバッタリ遭遇した。確か今日は所用で出掛けていたはずだが帰って来たらしいな。
「やぁ、リーチェ」
「お帰りなさい。今日は早かったんですね?」
「ただいま。あぁ、大した用じゃなかったからね」
「そうですか...あの、お父様?」
「うん? なんだい?」
「実はですね...」
私はラインハルトの件を話して聞かせた。すると父親は、
「そうか! そうか! いやめでたい! 今夜は赤飯だな!」
あんたもかい! なんだそれ!? だから赤飯って言葉、一体全体どっから出て来んだよ! この世界にゃ米ももち米も味噌も醤油もごま塩も油揚げも無いんだってば! 何べんも言わすな!
そう言って私は席を立つと、ドアを開けて外を覗いた。するとすぐ側に、ニタニタ笑いを浮かべたシンシアが佇んでいた。
そのニヤけ顔にまたムカついた。良し! ここからは制裁の時間だ! 私は物も言わずシンシアを手招きした。
シンシア嬉々として部屋に入って来た。そこで私はラインハルトに向かい、
「ねぇ、ラインハルト。あなたもう筆下ろしは済ませた?」
直球でそう切り込んだ。
「ブッホゥッ! ゲホッ! ゲホッ!」
ラインハルトはちょうどお茶を飲んでいたところだったが、思いっきり噎せ返り、飲んだお茶を全て吐き出してしまった。どうでもいいけど汚いな...
その反応を見て二つのことが分かった。筆下ろしの意味を理解していること。そしてまだ済ませてないということ。
「お、お姉様...な、なにを...ゲホッ! ゲホッ!」
「まだみたいね?」
「そ、それは...そ、その...ゴニョゴニョ...」
「いいのよ? 気にしないで? 初体験の年齢なんて人それぞれなんだから。そんなラインハルトに朗報があるのよ」
「朗報?」
「えぇ、なんとこちらにおわすシンシアお姉さんが、手取り股取り教えてくださるそうよ?」
『ふぇっ!?』
私の言葉に二人が全く同じような反応を返したのはちょっと面白かった。
「ほら見て? シンシアお姉さんはこんな物まで用意してたの。準備万端みたいよ?」
そう言って私は、シンシアが置いて行ったコンドーさんを差し出した。
「ブッホゥッ!」
それを見たラインハルトがまた噎せた。汚いからあんまり吐き出すなよな...ちなみにシンシアはといえば、自身の目論見が意外な方向に向かったことに戸惑いを隠せないようだった。
「じゃあ後は若いお二人でごゆっくり」
「ちょ、ちょっと! お姉様!?」
「ちょ、ちょっと! お嬢様!?」
二人の慌てた声を聞き流しながら、私はそそくさと部屋を後にした。
◇◇◇
「あ、お父様」
部屋を出た辺りで父親とバッタリ遭遇した。確か今日は所用で出掛けていたはずだが帰って来たらしいな。
「やぁ、リーチェ」
「お帰りなさい。今日は早かったんですね?」
「ただいま。あぁ、大した用じゃなかったからね」
「そうですか...あの、お父様?」
「うん? なんだい?」
「実はですね...」
私はラインハルトの件を話して聞かせた。すると父親は、
「そうか! そうか! いやめでたい! 今夜は赤飯だな!」
あんたもかい! なんだそれ!? だから赤飯って言葉、一体全体どっから出て来んだよ! この世界にゃ米ももち米も味噌も醤油もごま塩も油揚げも無いんだってば! 何べんも言わすな!
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