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第21話 ミルンの村
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ドラゴンが去った後、しばらくは三人とも動けなかった。
やがてゆっくりとユウが立ち上がり、二人に声を掛ける。
「二人とも大丈夫か? 怪我してないか?」
「だ、大丈夫、死ぬかと思ったけど...」
「た、大丈夫です、もうダメかと...」
二人ともまだ真っ青な顔をしている。無理もないが。
「取り敢えず移動しよう。二人とも立てるか?」
「な、なんとか...」
「た、立てます...」
まだちょっとフラついてはいるが、二人とも大丈夫そうだ。
「リオ、また道案内を頼む」
「分かった! こっちだよ! わぷっ!」
勢い良く踏み出そうとした拍子に、ユウのバリヤにぶつかったようだ。リオが尻餅をつく。
「な、なんなのこれ!? ここになんかあるよ!?」
リオがビックリして前を指差す。
「あっ! 済まん、リオ! バリヤを解除するの忘れてた!」
ユウが慌ててバリヤを解除する。
「バリヤってなに?」
「え~と...魔法みたいなもんだ。さっきのドラゴンの攻撃を防いだのもこれだ」
まさかあの巨大な岩の超重量に耐えたのみならず、それを弾き飛ばすなんて思ってもみなかった。このバリヤは一体どこまで高性能なのだろうか? ユウは驚嘆するばかりだった。
「えぇっ!? 本当に!? 凄い凄い! ユウも魔法使いだったんだね!」
「あ、あぁ、まぁそうなのかな...」
魔法ということにしておこう。気を取り直して歩き出そうとした時だった。
「「 クゥ~ !」」
リオとアリィのお腹の虫が見事にシンクロした。真っ赤になってしまった二人に、
「少し早いけど、お昼にするか」
苦笑しながらユウが言った。
◇◇◇
お昼を食べながらユウが尋ねる。
「リオ、村まであとどのくらい掛かるんだ?」
「う~ん...あと2、3時間くらいかなぁ~」
それを聞いてアリィは絶望したような顔になった。
「アリィ、ゆっくり行くからそんな顔するな」
「は、はい...」
そしてまた三人は歩き出した。ユウが言ったようにゆっくりと。やがて日没が迫って来た頃、ようやく山道を抜けた三人の前に小さな村が見えて来た。
「あっ! 見えた! あれがミルンの村だよ 」
まさに田舎の山村といった感じの村だった。集落は疎らで、通りにも人が誰も通っていない。日本で言えば過疎化に悩む村と言ったところか。
「人が居ないな...」
話を聞きに来たのに第一村人とも遭遇出来ない。途方に暮れていると、急に後ろから声を掛けられた。
「誰じゃ? お前さん方、見ない顔じゃな?」
慌てて振り返ると、いつの間に来ていたのか、杖をついた老人が立っていた。
「旅の者です。この村の方ですね?」
代表してユウが応対する。
「見りゃ分かるじゃろ。見慣れん服を着とるが、どっから来なさった?」
ユウとアリィは動き易いジャージ姿、リオは例のローブを着て、頭にはフードを被っている。確かにこの世界では見慣れない姿だろう。ユウは一瞬言葉に詰まったが、
「王都から来ました」
リオの話を思い出し、なんとかそれらしい答えをひねり出した。
「ほう、それはそれは遠い所からご苦労さんじゃったの。して、こんな何も無い村に何用じゃ?」
ユウはまたしても答えに詰まった。正直に言うべきか...
「実は...道に迷いまして。王都に帰る道が分からなくなってしまって、たまたまこの村を見付けたので立ち寄ってみた次第です」
かなり苦しいが、なんとかそれらしい答えになったと思った。
「そうかい、それはそれは難儀じゃったのう。なんも無い村じゃが、ゆっくりしていきなされ」
「ありがとうございます」
ユウはホッと息を吐いた。なんとか怪しまれずに済んだようだ。
「ところで、やけに閑散としてますが、村の他の方々はどちらに?」
「あぁ、なんでも魔物が現れたらしくての。若い衆はその魔物を討伐しに出掛けとるんじゃよ。お前さん方も気を付けなされ」
「魔物...ですか...」
ユウはなんとなくイヤな予感がした。
やがてゆっくりとユウが立ち上がり、二人に声を掛ける。
「二人とも大丈夫か? 怪我してないか?」
「だ、大丈夫、死ぬかと思ったけど...」
「た、大丈夫です、もうダメかと...」
二人ともまだ真っ青な顔をしている。無理もないが。
「取り敢えず移動しよう。二人とも立てるか?」
「な、なんとか...」
「た、立てます...」
まだちょっとフラついてはいるが、二人とも大丈夫そうだ。
「リオ、また道案内を頼む」
「分かった! こっちだよ! わぷっ!」
勢い良く踏み出そうとした拍子に、ユウのバリヤにぶつかったようだ。リオが尻餅をつく。
「な、なんなのこれ!? ここになんかあるよ!?」
リオがビックリして前を指差す。
「あっ! 済まん、リオ! バリヤを解除するの忘れてた!」
ユウが慌ててバリヤを解除する。
「バリヤってなに?」
「え~と...魔法みたいなもんだ。さっきのドラゴンの攻撃を防いだのもこれだ」
まさかあの巨大な岩の超重量に耐えたのみならず、それを弾き飛ばすなんて思ってもみなかった。このバリヤは一体どこまで高性能なのだろうか? ユウは驚嘆するばかりだった。
「えぇっ!? 本当に!? 凄い凄い! ユウも魔法使いだったんだね!」
「あ、あぁ、まぁそうなのかな...」
魔法ということにしておこう。気を取り直して歩き出そうとした時だった。
「「 クゥ~ !」」
リオとアリィのお腹の虫が見事にシンクロした。真っ赤になってしまった二人に、
「少し早いけど、お昼にするか」
苦笑しながらユウが言った。
◇◇◇
お昼を食べながらユウが尋ねる。
「リオ、村まであとどのくらい掛かるんだ?」
「う~ん...あと2、3時間くらいかなぁ~」
それを聞いてアリィは絶望したような顔になった。
「アリィ、ゆっくり行くからそんな顔するな」
「は、はい...」
そしてまた三人は歩き出した。ユウが言ったようにゆっくりと。やがて日没が迫って来た頃、ようやく山道を抜けた三人の前に小さな村が見えて来た。
「あっ! 見えた! あれがミルンの村だよ 」
まさに田舎の山村といった感じの村だった。集落は疎らで、通りにも人が誰も通っていない。日本で言えば過疎化に悩む村と言ったところか。
「人が居ないな...」
話を聞きに来たのに第一村人とも遭遇出来ない。途方に暮れていると、急に後ろから声を掛けられた。
「誰じゃ? お前さん方、見ない顔じゃな?」
慌てて振り返ると、いつの間に来ていたのか、杖をついた老人が立っていた。
「旅の者です。この村の方ですね?」
代表してユウが応対する。
「見りゃ分かるじゃろ。見慣れん服を着とるが、どっから来なさった?」
ユウとアリィは動き易いジャージ姿、リオは例のローブを着て、頭にはフードを被っている。確かにこの世界では見慣れない姿だろう。ユウは一瞬言葉に詰まったが、
「王都から来ました」
リオの話を思い出し、なんとかそれらしい答えをひねり出した。
「ほう、それはそれは遠い所からご苦労さんじゃったの。して、こんな何も無い村に何用じゃ?」
ユウはまたしても答えに詰まった。正直に言うべきか...
「実は...道に迷いまして。王都に帰る道が分からなくなってしまって、たまたまこの村を見付けたので立ち寄ってみた次第です」
かなり苦しいが、なんとかそれらしい答えになったと思った。
「そうかい、それはそれは難儀じゃったのう。なんも無い村じゃが、ゆっくりしていきなされ」
「ありがとうございます」
ユウはホッと息を吐いた。なんとか怪しまれずに済んだようだ。
「ところで、やけに閑散としてますが、村の他の方々はどちらに?」
「あぁ、なんでも魔物が現れたらしくての。若い衆はその魔物を討伐しに出掛けとるんじゃよ。お前さん方も気を付けなされ」
「魔物...ですか...」
ユウはなんとなくイヤな予感がした。
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