絶対防御とイメージ転送で異世界を乗り切ります

真理亜

文字の大きさ
26 / 130

第26話 脱出の舞台裏

しおりを挟む
 時は少し遡る。

「リオ、俺達に言ってなかったことってなんだ?」

「あ、あのね...これは家族以外、村のみんなにも言ってなかったんだけどね。リオ、もっともっと大きくなれるの」

「大きくって? どのくらい?」

「ユウとアリィの二人を背中に乗せられるくらい...」

 二人は驚愕した。もし本当なら、それってまるで...

「狼っていうよりフェンリルだな...」

「フェンリル?」

「あ、あぁ、デッカイ狼のことだよ」

 神話の世界に登場するような存在を、リオに分かるように説明するのは難しい。

「実際見て貰った方が早いよね」

 そう言って服を脱ぎ出すリオを、アリィが慌てて止める。

「だからリオちゃん、すぐ抜いじゃダメ! ユウ、あっち向いて!」

「「 は、はいっ! 」」

 二人は素直に従った。

「じゃあ行くよ!」

 リオがそう言った瞬間、目映い光が部屋中に溢れた。思わず目を閉じた二人が、ゆっくり目を開けるとそこには...

「す、凄い ...なんて大きさだ...」

「なんてキレイ...そして神々しい...」
 
 真っ白な毛並みの巨大な狼の姿になったリオの姿があった。全長は約5mくらいだろうか。物凄い迫力である。

『ど、どうかな!? へ、変じゃない!?』

 言葉じゃなく頭の中に直接響く声。初めてリオに会った時にも聞いた。これは念話だろうか?

「い、いや、ちっとも変じゃないぞ! 寧ろ感動した! 凄いカッコいい!」

「えぇ、凄くキレイですよ、リオちゃん! 私、感激しました!」

『そ、そう!? 怖くない!?』

「「 全然怖くない! 」」

 二人の声がキレイにハモった。

『えへへ♪ 良かった~♪ 家族からはね、この姿になるとみんな怖がるから、見せちゃダメって言われてたんだ~...』

「そうだったのか。だから今まで言わなかったんだな。ところで、リオ。今こうやって俺達と話してるのは念話か?」

『うん、そうだよ。この姿になると普通に喋れないから。あ、でも二人は普通に喋って大丈夫だよ』

「分かった。それじゃあ、その...早速乗っていいか?」

『うん、いいよ~ どうぞどうぞ~』

 そう言ってリオは、二人が乗り易いように寝そべった。

「じゃ、じゃあ失礼して...うわぁお! フカフカだぁ♪」

「わ、私も...失礼します...ふわぁ! フカフカ~♪」

『乗った? じゃあゆっくり立ち上がるね』

「う、うわっ! た、高い!」

「キャッ! こ、怖い!」

 いきなり視線が2mくらいの高さになって、二人はちょっとヒビッた。

『二人とも大丈夫?』

「あ、あぁ、なんとか...」

「な、慣れればきっと...」

『それじゃあ、このまま走って行くから、二人ともしっかり掴まっててね?』

「わ、分かった。で、でも最初はゆっくり走ってくれ!」

「あ、安全運転!? でお願いします」

『は~い! ところでどっちに行けばいいの?』

「そうだな...取り敢えず街道に沿って行ってくれるか? まずはこの村から出来るだけ離れたい」

『了解~! あ、でも、この姿になると、すぐお腹空いちゃうから、走れる所まででいい?』

 燃費が悪いということか。まぁ、この巨体を動かすなら無理もないだろう。

「あぁ、それで良い」

『オッケー! それじゃあ行くよ~!』

 アリィが家を消す。するとビックリしたのか、見張りの二人が顔を出した。

「ウォォォン!」

 威嚇するようにリオが咆哮する。見張りは腰を抜かした。

「ヽ(ヽ゚ロ゚)ヒイィィィ!」

 そんな二人を尻目に、リオは風のように走り去って行った。ユウとアリィは必死にしがみ付いていた。

「あ、アリィ、ば、バリヤ張ってあるからな! た、たとえ、お、落ちても、へ、平気だからな!」

 そう言われても...なんの慰めにもならない。アリィはひたすら目を閉じて恐怖に耐えていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。 しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。 修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!? 乗客たちはどこへ行ったのか? 主人公は森の中で一人の精霊と出会う。 主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

処理中です...