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第26話 脱出の舞台裏

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 時は少し遡る。

「リオ、俺達に言ってなかったことってなんだ?」

「あ、あのね...これは家族以外、村のみんなにも言ってなかったんだけどね。リオ、もっともっと大きくなれるの」

「大きくって? どのくらい?」

「ユウとアリィの二人を背中に乗せられるくらい...」

 二人は驚愕した。もし本当なら、それってまるで...

「狼っていうよりフェンリルだな...」

「フェンリル?」

「あ、あぁ、デッカイ狼のことだよ」

 神話の世界に登場するような存在を、リオに分かるように説明するのは難しい。

「実際見て貰った方が早いよね」

 そう言って服を脱ぎ出すリオを、アリィが慌てて止める。

「だからリオちゃん、すぐ抜いじゃダメ! ユウ、あっち向いて!」

「「 は、はいっ! 」」

 二人は素直に従った。

「じゃあ行くよ!」

 リオがそう言った瞬間、目映い光が部屋中に溢れた。思わず目を閉じた二人が、ゆっくり目を開けるとそこには...

「す、凄い ...なんて大きさだ...」

「なんてキレイ...そして神々しい...」
 
 真っ白な毛並みの巨大な狼の姿になったリオの姿があった。全長は約5mくらいだろうか。物凄い迫力である。

『ど、どうかな!? へ、変じゃない!?』

 言葉じゃなく頭の中に直接響く声。初めてリオに会った時にも聞いた。これは念話だろうか?

「い、いや、ちっとも変じゃないぞ! 寧ろ感動した! 凄いカッコいい!」

「えぇ、凄くキレイですよ、リオちゃん! 私、感激しました!」

『そ、そう!? 怖くない!?』

「「 全然怖くない! 」」

 二人の声がキレイにハモった。

『えへへ♪ 良かった~♪ 家族からはね、この姿になるとみんな怖がるから、見せちゃダメって言われてたんだ~...』

「そうだったのか。だから今まで言わなかったんだな。ところで、リオ。今こうやって俺達と話してるのは念話か?」

『うん、そうだよ。この姿になると普通に喋れないから。あ、でも二人は普通に喋って大丈夫だよ』

「分かった。それじゃあ、その...早速乗っていいか?」

『うん、いいよ~ どうぞどうぞ~』

 そう言ってリオは、二人が乗り易いように寝そべった。

「じゃ、じゃあ失礼して...うわぁお! フカフカだぁ♪」

「わ、私も...失礼します...ふわぁ! フカフカ~♪」

『乗った? じゃあゆっくり立ち上がるね』

「う、うわっ! た、高い!」

「キャッ! こ、怖い!」

 いきなり視線が2mくらいの高さになって、二人はちょっとヒビッた。

『二人とも大丈夫?』

「あ、あぁ、なんとか...」

「な、慣れればきっと...」

『それじゃあ、このまま走って行くから、二人ともしっかり掴まっててね?』

「わ、分かった。で、でも最初はゆっくり走ってくれ!」

「あ、安全運転!? でお願いします」

『は~い! ところでどっちに行けばいいの?』

「そうだな...取り敢えず街道に沿って行ってくれるか? まずはこの村から出来るだけ離れたい」

『了解~! あ、でも、この姿になると、すぐお腹空いちゃうから、走れる所まででいい?』

 燃費が悪いということか。まぁ、この巨体を動かすなら無理もないだろう。

「あぁ、それで良い」

『オッケー! それじゃあ行くよ~!』

 アリィが家を消す。するとビックリしたのか、見張りの二人が顔を出した。

「ウォォォン!」

 威嚇するようにリオが咆哮する。見張りは腰を抜かした。

「ヽ(ヽ゚ロ゚)ヒイィィィ!」

 そんな二人を尻目に、リオは風のように走り去って行った。ユウとアリィは必死にしがみ付いていた。

「あ、アリィ、ば、バリヤ張ってあるからな! た、たとえ、お、落ちても、へ、平気だからな!」

 そう言われても...なんの慰めにもならない。アリィはひたすら目を閉じて恐怖に耐えていた。
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