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第28話 束の間の休息
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ユウが戻って来ると、お腹一杯になったのか、リオが安らかな寝息を立てていた。
「眠っちゃったか...」
起こさないように小声で囁く。
「えぇ、きっと疲れてたんだと思います...」
アリィも小声で返す。無理もない。あんな巨体をずっと動かしてたんだから。しかもユウとアリィの二人を乗せて。ここは少し寝かせといてあげよう。
ユウは手招きでアリィを誘い、少し離れた場所に腰を下ろした。
「ここからそう遠くない場所に町があった」
「町ですか? 村ではなく?」
「あぁ、ちょっと見ただけだが、ミルンの村よりは都会に見えた」
「次はそこを目指すんですね?」
「あぁ、そのつもりだ。どうしても確かめたいことがあるしな」
「確かめたいこと?」
「アリィ、俺達、この世界に来てから、ここで使われている文字をまだ見たことないだろ?」
「言われてみれば確かに...」
アリィも肯定した。
「ミルンの村で、店の看板とか家の表札とか見れる機会があれば良かったんだが、そんな余裕なかったしな」
「村の入り口で捕まっちゃいましたしね...」
「この世界の言葉は分かった。会話も問題ない。でも文字は? 読み書き出来るモノなのか? それを早く知っておきたい」
「会話は出来るけど読み書きは出来ない。そんな設定のゲームや小説、マンガは良く見掛けた気がします。確かに確認しておくべきですね」
「俺達が読み書き出来なかった場合、必然的にリオを頼りにするしかなくなる訳だが...」
ユウはぐっすりと眠っているリオに目を向ける。
「リオちゃんは賢いから読み書きは出来るような気がします。起きたら聞いてみましょう。ただ問題は...」
「あぁ、どうやって町に怪しまれずに入るかってことだよな...」
「えぇ、きっとこの町にもあのク...悪い領主が手を回していますよね...」
クソと言い掛けて慌てて言い直すアリィだった。
「あぁ、間違いないだろうな。さて、どうしたものか...」
リオの可愛らしい寝顔を見ながら考える。ちょっと前まで巨大な狼の姿だったとは思えない程あどけない。そこでふと思った。大きくなれるなら小さくもなれるのではないか?
「なぁ、ちょっと思ったんだが、リオに子犬くらいの大きさになって貰うことは出来ないだろうか? そうすれば俺かアリィが抱っこして行ける。これなら怪しまれずに入れるんじゃないかな?」
「それいいですね! リオちゃんが起きたら聞いてみましょう!」
アリィが満面の笑みを浮かべた。きっと小さくなったリオを、自分が抱っこするところを想像しているんだろう。
「子犬サイズが無理な場合、せめて大型犬くらいの大きさになって貰うしかないんだが、そうなると首輪とリードが必要になるよな...」
「それはイヤです...仲間をペット扱いしてるみたいで...」
一転してアリィの顔が曇る。
「あぁ、俺もそれはイヤだ。リオになんとか頑張って貰おう。それともう一つ、この世界のお金を手にしたい」
「お金ですか?」
「あぁ、俺達無一文だろ? アリィのお陰で衣食住には不自由しないから今までは気にしなかったが、どうしても手に入れたいモノがある」
「なんですか?」
「この世界の地図だよ」
「あぁ、なるほど...」
「リオのお陰で移動手段は手に入った。あとはどっちに向かえばいいか、それさえ分かれば旅はうんと楽になる」
「確かに...でもどうやってお金を工面します?」
「これ、売れないかな?」
そう言ってユウが懐から取り出したのは、金槌で叩き折ったドラゴンの牙だった。
「あっ! なるほど! それならきっと売れますよ!」
アリィの声が大きかったのか、リオが「う~ん...」と寝返りを打った。
「アリィ、シーッ!」
「す、すいません...」
話はここまで。あとはリオが起きてからにしよう。二人は無言で頷いた。
「眠っちゃったか...」
起こさないように小声で囁く。
「えぇ、きっと疲れてたんだと思います...」
アリィも小声で返す。無理もない。あんな巨体をずっと動かしてたんだから。しかもユウとアリィの二人を乗せて。ここは少し寝かせといてあげよう。
ユウは手招きでアリィを誘い、少し離れた場所に腰を下ろした。
「ここからそう遠くない場所に町があった」
「町ですか? 村ではなく?」
「あぁ、ちょっと見ただけだが、ミルンの村よりは都会に見えた」
「次はそこを目指すんですね?」
「あぁ、そのつもりだ。どうしても確かめたいことがあるしな」
「確かめたいこと?」
「アリィ、俺達、この世界に来てから、ここで使われている文字をまだ見たことないだろ?」
「言われてみれば確かに...」
アリィも肯定した。
「ミルンの村で、店の看板とか家の表札とか見れる機会があれば良かったんだが、そんな余裕なかったしな」
「村の入り口で捕まっちゃいましたしね...」
「この世界の言葉は分かった。会話も問題ない。でも文字は? 読み書き出来るモノなのか? それを早く知っておきたい」
「会話は出来るけど読み書きは出来ない。そんな設定のゲームや小説、マンガは良く見掛けた気がします。確かに確認しておくべきですね」
「俺達が読み書き出来なかった場合、必然的にリオを頼りにするしかなくなる訳だが...」
ユウはぐっすりと眠っているリオに目を向ける。
「リオちゃんは賢いから読み書きは出来るような気がします。起きたら聞いてみましょう。ただ問題は...」
「あぁ、どうやって町に怪しまれずに入るかってことだよな...」
「えぇ、きっとこの町にもあのク...悪い領主が手を回していますよね...」
クソと言い掛けて慌てて言い直すアリィだった。
「あぁ、間違いないだろうな。さて、どうしたものか...」
リオの可愛らしい寝顔を見ながら考える。ちょっと前まで巨大な狼の姿だったとは思えない程あどけない。そこでふと思った。大きくなれるなら小さくもなれるのではないか?
「なぁ、ちょっと思ったんだが、リオに子犬くらいの大きさになって貰うことは出来ないだろうか? そうすれば俺かアリィが抱っこして行ける。これなら怪しまれずに入れるんじゃないかな?」
「それいいですね! リオちゃんが起きたら聞いてみましょう!」
アリィが満面の笑みを浮かべた。きっと小さくなったリオを、自分が抱っこするところを想像しているんだろう。
「子犬サイズが無理な場合、せめて大型犬くらいの大きさになって貰うしかないんだが、そうなると首輪とリードが必要になるよな...」
「それはイヤです...仲間をペット扱いしてるみたいで...」
一転してアリィの顔が曇る。
「あぁ、俺もそれはイヤだ。リオになんとか頑張って貰おう。それともう一つ、この世界のお金を手にしたい」
「お金ですか?」
「あぁ、俺達無一文だろ? アリィのお陰で衣食住には不自由しないから今までは気にしなかったが、どうしても手に入れたいモノがある」
「なんですか?」
「この世界の地図だよ」
「あぁ、なるほど...」
「リオのお陰で移動手段は手に入った。あとはどっちに向かえばいいか、それさえ分かれば旅はうんと楽になる」
「確かに...でもどうやってお金を工面します?」
「これ、売れないかな?」
そう言ってユウが懐から取り出したのは、金槌で叩き折ったドラゴンの牙だった。
「あっ! なるほど! それならきっと売れますよ!」
アリィの声が大きかったのか、リオが「う~ん...」と寝返りを打った。
「アリィ、シーッ!」
「す、すいません...」
話はここまで。あとはリオが起きてからにしよう。二人は無言で頷いた。
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