絶対防御とイメージ転送で異世界を乗り切ります

真理亜

文字の大きさ
34 / 130

第34話 異世界探訪 その2

しおりを挟む
 苦労してなんとかクロスボウをリュックに積めたユウは、それを背負いながら、リオを抱いたアリィに言った。

「さて、今度こそ本屋に行こう」

「すいません、持って頂いて...えぇ、そうしましょう」

 アリィが申し訳なさそうに応じる。二人は今度こそ本屋を目指して歩き出した...のだが...

「あ、あのマークは!?」

 そう言ってアリィが指差した先にあったのは、葉っぱの意匠を看板を掲げた店だった。

「あれは...薬屋だよな...」

 異世界の薬と言えばポーション、マジックポーション、万能薬、毒消し、などなど。魅惑的な単語が頭に浮かんだ二人は、

「「 ちょっとだけ... 」」

 またもや寄り道するのだった。


◇◇◇


「ポーション無いんだな...」

「万能薬もありませんね...」

 二人は勝手に期待して勝手に失望していた。アリィの能力のお陰で衣食住の心配は必要無いが、怪我や病気は別である。この世界に病院があるのかどうか知らないが、たとえあったとしても、日本に居た時のような治療が期待できるとはとても思えない。

 だからこそ、ファンタジーチックなアイテムがあることを期待したのだが...店にあるのは薬草を煎じたような怪しげな薬ばっかりだった。血止めとか打ち身、捻挫に効くとか書いてあるが、これならアリィに出して貰った救急箱の方がよっぽどマシだろう。

 ガッカリしながら店を出る二人を、リオが不思議そうに眺めていた。


◇◇◇


「やっと着いた...」

 ようやく辿り着いた本屋は、日本で言うところの、昔懐かしい古本屋のような佇まいだった。早速ユウが店主に尋ねる。髭を長く伸ばした、如何にも古本屋の店主といった雰囲気のお爺さんだ。

「この近辺の地図が欲しいんだが」

「地図ならあの辺の棚に並んどる。縮尺は様々じゃが、この近辺から王国全域の地図まで全て揃っとる。好きなのを選ぶとええ」
 
「ありがとう」

 店主にお礼を言ってアリィの元に戻ると、目を耀かせて本を眺めている二人が居た。

「あ、あの! 何冊か買ってもいいですか!? とても興味深い本ばっかりなんで!」

『リオも! リオも~!』

「あ、あぁ、もちろん。俺もあとで何冊か選ぶつもりだったし...」

 やたらとハイテンションな二人に、若干引き気味になりながらユウが答える。


◇◇◇ 


 地図を物色しながらチラリとアリィの方に目を向けると、アリィは両手で持ち切れない程の本を抱えてフラフラしている。その足元ではリオが何冊かの本の上に座っている。

 そんな光景を微笑ましく眺めながら、何枚かの地図を手にしたユウは、

「アリィ、そんなに買うのか!? リオ、本を床の上に置かないように」

「うぅ...だってどれもこれも魅力的なんですもの...」

『しょうがないじゃん! こうしないとリオは読めないんだから!』

「分かった分かった。二人とも、地図は手に入れたからそれも全部買って帰ろう」

「『 やった~♪ 』」

 二人の声がキレイに揃った。

「さてと、俺も本を選ぶかな」

 実はこの世界に来てからというもの、ユウとアリィは活字に飢えていた。アリィの能力でどんなにイメージしても、何故か本は出せなかった。本に限らず、映画DVDや音楽CD、ゲームソフトなども出すことが出来なかった。

 何らかの制約が働いているのかも知れない。トランプやボードゲーム、将棋や囲碁、チェスまでもが出せないことが分かると、どうやら娯楽に関するモノ全てが対象になっているようだと結論付けた。

 なので本が手に入ることは正直嬉しい。これで夜も退屈しないで済みそうだ...そう思ったのだが...

「これ、どうやって運ぼうか...」

 ユウは目の前に積まれた3人分の本の山を見ながら頭を抱えた。
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。 しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。 修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!? 乗客たちはどこへ行ったのか? 主人公は森の中で一人の精霊と出会う。 主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

処理中です...