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第34話 異世界探訪 その2
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苦労してなんとかクロスボウをリュックに積めたユウは、それを背負いながら、リオを抱いたアリィに言った。
「さて、今度こそ本屋に行こう」
「すいません、持って頂いて...えぇ、そうしましょう」
アリィが申し訳なさそうに応じる。二人は今度こそ本屋を目指して歩き出した...のだが...
「あ、あのマークは!?」
そう言ってアリィが指差した先にあったのは、葉っぱの意匠を看板を掲げた店だった。
「あれは...薬屋だよな...」
異世界の薬と言えばポーション、マジックポーション、万能薬、毒消し、などなど。魅惑的な単語が頭に浮かんだ二人は、
「「 ちょっとだけ... 」」
またもや寄り道するのだった。
◇◇◇
「ポーション無いんだな...」
「万能薬もありませんね...」
二人は勝手に期待して勝手に失望していた。アリィの能力のお陰で衣食住の心配は必要無いが、怪我や病気は別である。この世界に病院があるのかどうか知らないが、たとえあったとしても、日本に居た時のような治療が期待できるとはとても思えない。
だからこそ、ファンタジーチックなアイテムがあることを期待したのだが...店にあるのは薬草を煎じたような怪しげな薬ばっかりだった。血止めとか打ち身、捻挫に効くとか書いてあるが、これならアリィに出して貰った救急箱の方がよっぽどマシだろう。
ガッカリしながら店を出る二人を、リオが不思議そうに眺めていた。
◇◇◇
「やっと着いた...」
ようやく辿り着いた本屋は、日本で言うところの、昔懐かしい古本屋のような佇まいだった。早速ユウが店主に尋ねる。髭を長く伸ばした、如何にも古本屋の店主といった雰囲気のお爺さんだ。
「この近辺の地図が欲しいんだが」
「地図ならあの辺の棚に並んどる。縮尺は様々じゃが、この近辺から王国全域の地図まで全て揃っとる。好きなのを選ぶとええ」
「ありがとう」
店主にお礼を言ってアリィの元に戻ると、目を耀かせて本を眺めている二人が居た。
「あ、あの! 何冊か買ってもいいですか!? とても興味深い本ばっかりなんで!」
『リオも! リオも~!』
「あ、あぁ、もちろん。俺もあとで何冊か選ぶつもりだったし...」
やたらとハイテンションな二人に、若干引き気味になりながらユウが答える。
◇◇◇
地図を物色しながらチラリとアリィの方に目を向けると、アリィは両手で持ち切れない程の本を抱えてフラフラしている。その足元ではリオが何冊かの本の上に座っている。
そんな光景を微笑ましく眺めながら、何枚かの地図を手にしたユウは、
「アリィ、そんなに買うのか!? リオ、本を床の上に置かないように」
「うぅ...だってどれもこれも魅力的なんですもの...」
『しょうがないじゃん! こうしないとリオは読めないんだから!』
「分かった分かった。二人とも、地図は手に入れたからそれも全部買って帰ろう」
「『 やった~♪ 』」
二人の声がキレイに揃った。
「さてと、俺も本を選ぶかな」
実はこの世界に来てからというもの、ユウとアリィは活字に飢えていた。アリィの能力でどんなにイメージしても、何故か本は出せなかった。本に限らず、映画DVDや音楽CD、ゲームソフトなども出すことが出来なかった。
何らかの制約が働いているのかも知れない。トランプやボードゲーム、将棋や囲碁、チェスまでもが出せないことが分かると、どうやら娯楽に関するモノ全てが対象になっているようだと結論付けた。
なので本が手に入ることは正直嬉しい。これで夜も退屈しないで済みそうだ...そう思ったのだが...
「これ、どうやって運ぼうか...」
ユウは目の前に積まれた3人分の本の山を見ながら頭を抱えた。
「さて、今度こそ本屋に行こう」
「すいません、持って頂いて...えぇ、そうしましょう」
アリィが申し訳なさそうに応じる。二人は今度こそ本屋を目指して歩き出した...のだが...
「あ、あのマークは!?」
そう言ってアリィが指差した先にあったのは、葉っぱの意匠を看板を掲げた店だった。
「あれは...薬屋だよな...」
異世界の薬と言えばポーション、マジックポーション、万能薬、毒消し、などなど。魅惑的な単語が頭に浮かんだ二人は、
「「 ちょっとだけ... 」」
またもや寄り道するのだった。
◇◇◇
「ポーション無いんだな...」
「万能薬もありませんね...」
二人は勝手に期待して勝手に失望していた。アリィの能力のお陰で衣食住の心配は必要無いが、怪我や病気は別である。この世界に病院があるのかどうか知らないが、たとえあったとしても、日本に居た時のような治療が期待できるとはとても思えない。
だからこそ、ファンタジーチックなアイテムがあることを期待したのだが...店にあるのは薬草を煎じたような怪しげな薬ばっかりだった。血止めとか打ち身、捻挫に効くとか書いてあるが、これならアリィに出して貰った救急箱の方がよっぽどマシだろう。
ガッカリしながら店を出る二人を、リオが不思議そうに眺めていた。
◇◇◇
「やっと着いた...」
ようやく辿り着いた本屋は、日本で言うところの、昔懐かしい古本屋のような佇まいだった。早速ユウが店主に尋ねる。髭を長く伸ばした、如何にも古本屋の店主といった雰囲気のお爺さんだ。
「この近辺の地図が欲しいんだが」
「地図ならあの辺の棚に並んどる。縮尺は様々じゃが、この近辺から王国全域の地図まで全て揃っとる。好きなのを選ぶとええ」
「ありがとう」
店主にお礼を言ってアリィの元に戻ると、目を耀かせて本を眺めている二人が居た。
「あ、あの! 何冊か買ってもいいですか!? とても興味深い本ばっかりなんで!」
『リオも! リオも~!』
「あ、あぁ、もちろん。俺もあとで何冊か選ぶつもりだったし...」
やたらとハイテンションな二人に、若干引き気味になりながらユウが答える。
◇◇◇
地図を物色しながらチラリとアリィの方に目を向けると、アリィは両手で持ち切れない程の本を抱えてフラフラしている。その足元ではリオが何冊かの本の上に座っている。
そんな光景を微笑ましく眺めながら、何枚かの地図を手にしたユウは、
「アリィ、そんなに買うのか!? リオ、本を床の上に置かないように」
「うぅ...だってどれもこれも魅力的なんですもの...」
『しょうがないじゃん! こうしないとリオは読めないんだから!』
「分かった分かった。二人とも、地図は手に入れたからそれも全部買って帰ろう」
「『 やった~♪ 』」
二人の声がキレイに揃った。
「さてと、俺も本を選ぶかな」
実はこの世界に来てからというもの、ユウとアリィは活字に飢えていた。アリィの能力でどんなにイメージしても、何故か本は出せなかった。本に限らず、映画DVDや音楽CD、ゲームソフトなども出すことが出来なかった。
何らかの制約が働いているのかも知れない。トランプやボードゲーム、将棋や囲碁、チェスまでもが出せないことが分かると、どうやら娯楽に関するモノ全てが対象になっているようだと結論付けた。
なので本が手に入ることは正直嬉しい。これで夜も退屈しないで済みそうだ...そう思ったのだが...
「これ、どうやって運ぼうか...」
ユウは目の前に積まれた3人分の本の山を見ながら頭を抱えた。
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