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第59話 異世界懐事情

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 マンドラゴラが自生しているという森は、領都からかなり離れた場所にあった。

 そこでユウ達は夜まで時間を潰して、夜になったらラキに乗ってひとっ飛びしようと思っていた。

「ところで、マンドラゴラってなんだ?」

 ユウが今更のように尋ねる。

「知らんで引き受けたのか?」

 ラキは呆れ顔だ。

「いやまあ、俺達の居たせか...国じゃあ伝説っていうか、架空の物だったんだよ。それと同じなのかなと思って」

 また世界と言い掛けてしまって慌てて言い直す。

「ちなみにどういう伝説なんじゃ?」

「魔女が万能薬を作る時に使う材料で、外見は人参に似ているんだが、地中に埋まっている先端部分が二股に分かれて足のようになっていて、人間のようにも見えるらしい。それは引き抜かれる時に凄い悲鳴を上げるんだが、それを聞いた人間は死んでしまうんで、引き抜く時は犬か豚に代わりに引かせる...だったかな? 細部が違うかも知れんが大体こんな感じだったと思う」

 そう言ってユウはアリィを見る。アリィが頷いているので、彼女の認識も大体同じようだ。

「魔女というのはなんだか分からんが、他は大体合っておるぞ?」

「なにっ!? この世界に万能薬があるのか!?」

 興奮したユウは「この世界」と言ってしまったことに気付いていない。

「あ、あぁ、あるぞ...」

 ユウの勢いに押されたラキは、その失言に気付いていない。

「店に売ってるのか!?」

「王都に行けば売っとるぞ。メチャクチャ高いがな。もしかしたらこの町でも売っとるかも知れんが」

「行ってみよう!」

 食い気味にユウが勢い良く言った。


◇◇◇


 薬屋に着いたユウとアリィは「これぞ異世界!」と思っていた。

「アリィ...見ろ...ポーションがあるぞ...」

「こっちにはマジックポーション...毒消しに...これは目覚まし薬? 万能薬もあります.. 」

「「 異世界最高! 」」

「...なにをやってるんじゃお主ら...」

 ラキが呆れ顔でそう言った。

「あ、い、いやその...済まん...ベントの町には無かったんで、この世界には無いのかと思ってな...」

 もはや異世界呼びを隠すこともしなくなったユウ。

「あんな田舎町に置いてる訳ないじゃろ」

 ラキはさっきから呆れっ放しだ。

「そういうものなのか...それはともかく、アリィ! 全部買うぞ!」

「はい! これで医療問題が解決ですね!」

 喜色満面の異世界二人組をラキが冷静に止める。

「待て待て! お主ら、妾の話を聞いてなかったのか!? 値段を見てみろ! メチャクチャ高いと言ったであろうが!」

 そう言われた二人組が値段を見て絶句する。

「確かに...メチャクチャ高い...」

「これじゃあポーション1本も買えません...」

「金を稼ぐしかないか...」

「そのためにも依頼を熟すしかないじゃろな」

「おっしゃる通りです...」

 ユウは返す言葉もなかった。


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