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第1章 聖女誕生
第2話 セイラという名の少女
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リシャールはお供の護衛二人を引き連れて、情報提供者との待ち合わせ場所である、冒険者ギルドを訪れていた。
ギルドの中は雑然としていた。入ってすぐの中央部分が受付カウンターで、依頼を受ける人達で混み合っている。右側に依頼ボードがあり依頼を物色している人達が居る。左側にバーカウンターが併設されていて、昼間から酒を呷る人達が屯している。
リシャール達は中に入ると、バーカウンターに近付き、バーテンに話し掛ける。
「失礼、ジェフさんって人と待ち合わせしてるんだけど、どこに居るか分かるかな?」
するとバーテンは目も合わさず、
「まずは注文しな」
と、ぶっきらぼうに言った。一国の王子に対してなんという口の聞き方だと護衛二人が気色ばむが、リシャールはそんな二人をそっと制して、
「ノンアルコールビールを3つ頼む」
「...ジェフのヤツならダンジョン行くって言ってたぜ。しばらく戻って来ねぇんじゃねぇかな?」
なんてこった...肩すかしを食らった格好のリシャールは途方に暮れてしまった。その時だった。
「なぁ、セイラ! また頼むよ! ちょっとだけ回復してくれや!」
そんな会話が聞こえ、何の気なしにそちらに目を向けた。そこはテーブル席で、いかにも冒険者といった風体の男が、対面に座る少女に話し掛けていた。少女はこちらに背を向けていて、艶やかな黒髪しか見えない。
「ダメだって。バレたらマチ姉に叱られる。ギルドで商売するなって言われてんだ」
「バレなけりゃいいだろ? なぁ、ちょっとだけだって!」
「う~ん...じゃあ、ビール奢ってくれたら、考えてもいいよ?」
「あぁ、いや、それは...バレたらマチルダに怒られる...お前に飲ますなって言われてんだ...」
「それこそバレなきゃいいじゃん♪」
「ま、まぁ、そうだな...」
「良し、決まり! 毎度あり~♪ じゃあ回復しちゃうよ~♪」
『グランドヒール』
少女が呪文を唱えた瞬間、ギルド中が目映い光に包まれた。
「こ、これは!?」「おい、急に体が軽くなったぞ!?」「古傷が痛くねぇ!?」
などなど、周り中から驚きの声が上がる中、当の少女は舌を出して、
「あ、ヤベ...間違えた...」
と、呟いたのだった。
◇◇◇
「セイラッ! アンタの仕業だね!」
ギルドの喧騒が醒めやらぬ中、受付から女の職員が飛び出して来た。女にしては背も高いしガタイも良い。冒険者上がりなのかも知れない。
ギルド内のあちこちから「ヤバい! マチルダが出て来たぞ!」「巻き添え食う前に逃げろ!」と言った声が聞こえる。
「ゴメン! マチ姉! ちょっとした出来心で...」
「言い訳なんか聞きたくないね! 今日という今日は勘弁ならないよ! ギルド内で商売するのは禁止だって言ったはずだろ!」
「だからゴメンって! 普通のヒール掛けるはずが間違えちったんだよ!」
「そういう問題じゃないわぁ!」
背の高いマチルダに襟首を掴まれて、子猫みたいにブラブラと揺らされている少女の姿が、リシャールの目に飛び込んで来た。
年の頃は15、6歳くらいだろうか、この国では珍しい腰まで伸びた艶やかな黒髪を後ろで一つに束ね、マチルダを見上げる大きな瞳は太陽の光を閉じ込めたように金色に輝き、手はスラリと伸びてたおやかで、足もカモシカのようにスラっと伸びていてとても綺麗で...
要するに類い稀なる美少女がそこに居た。
ギルドの中は雑然としていた。入ってすぐの中央部分が受付カウンターで、依頼を受ける人達で混み合っている。右側に依頼ボードがあり依頼を物色している人達が居る。左側にバーカウンターが併設されていて、昼間から酒を呷る人達が屯している。
リシャール達は中に入ると、バーカウンターに近付き、バーテンに話し掛ける。
「失礼、ジェフさんって人と待ち合わせしてるんだけど、どこに居るか分かるかな?」
するとバーテンは目も合わさず、
「まずは注文しな」
と、ぶっきらぼうに言った。一国の王子に対してなんという口の聞き方だと護衛二人が気色ばむが、リシャールはそんな二人をそっと制して、
「ノンアルコールビールを3つ頼む」
「...ジェフのヤツならダンジョン行くって言ってたぜ。しばらく戻って来ねぇんじゃねぇかな?」
なんてこった...肩すかしを食らった格好のリシャールは途方に暮れてしまった。その時だった。
「なぁ、セイラ! また頼むよ! ちょっとだけ回復してくれや!」
そんな会話が聞こえ、何の気なしにそちらに目を向けた。そこはテーブル席で、いかにも冒険者といった風体の男が、対面に座る少女に話し掛けていた。少女はこちらに背を向けていて、艶やかな黒髪しか見えない。
「ダメだって。バレたらマチ姉に叱られる。ギルドで商売するなって言われてんだ」
「バレなけりゃいいだろ? なぁ、ちょっとだけだって!」
「う~ん...じゃあ、ビール奢ってくれたら、考えてもいいよ?」
「あぁ、いや、それは...バレたらマチルダに怒られる...お前に飲ますなって言われてんだ...」
「それこそバレなきゃいいじゃん♪」
「ま、まぁ、そうだな...」
「良し、決まり! 毎度あり~♪ じゃあ回復しちゃうよ~♪」
『グランドヒール』
少女が呪文を唱えた瞬間、ギルド中が目映い光に包まれた。
「こ、これは!?」「おい、急に体が軽くなったぞ!?」「古傷が痛くねぇ!?」
などなど、周り中から驚きの声が上がる中、当の少女は舌を出して、
「あ、ヤベ...間違えた...」
と、呟いたのだった。
◇◇◇
「セイラッ! アンタの仕業だね!」
ギルドの喧騒が醒めやらぬ中、受付から女の職員が飛び出して来た。女にしては背も高いしガタイも良い。冒険者上がりなのかも知れない。
ギルド内のあちこちから「ヤバい! マチルダが出て来たぞ!」「巻き添え食う前に逃げろ!」と言った声が聞こえる。
「ゴメン! マチ姉! ちょっとした出来心で...」
「言い訳なんか聞きたくないね! 今日という今日は勘弁ならないよ! ギルド内で商売するのは禁止だって言ったはずだろ!」
「だからゴメンって! 普通のヒール掛けるはずが間違えちったんだよ!」
「そういう問題じゃないわぁ!」
背の高いマチルダに襟首を掴まれて、子猫みたいにブラブラと揺らされている少女の姿が、リシャールの目に飛び込んで来た。
年の頃は15、6歳くらいだろうか、この国では珍しい腰まで伸びた艶やかな黒髪を後ろで一つに束ね、マチルダを見上げる大きな瞳は太陽の光を閉じ込めたように金色に輝き、手はスラリと伸びてたおやかで、足もカモシカのようにスラっと伸びていてとても綺麗で...
要するに類い稀なる美少女がそこに居た。
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