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 夕食後、ミハエルは詰め所に姿を現した。

「どうだ? 騎士団長からなにか連絡はあったか?」

「いえ、まだなにも」

「そうか」

「ただ、行動を起こすとしたら夜陰に紛れてでしょうから、もうそろそろ何らかの動きがあると思われます」

「なるほどな」

「なにか動きがありましたらすぐにお知らせ致します」

「頼む。ところで、例の裏切り者はまだ黙秘したままか?」

「えぇ、往生際が悪いことにまだ黙りを決め込んでいます」

「そうか。そっちも引き続きよろしく頼む」

「分かりました」 

「それと、ドロシー嬢母娘は無事に隠れ家に着いたか?」

「はい、そちらは恙無く」 

「良かった」

 ミハエルはホッと胸を撫で下ろした。

「もう大丈夫だとは思うが、念のためラングレー公を拘束するまでは周囲の警戒を怠るなよ?」

「心得ております」

 用心するに越したことはない。なにせ敵は、近衛兵の中にまで手を伸ばせる程の相手なのだから。

「どうやら今夜は持久戦になりそうだな。皆、疲れているとは思うが後もう一踏ん張りだ。気を引き締めて掛かってくれ」

 ミハエルは詰め所に詰めている近衛兵達を見渡しながらそう言った。

『了解です!』

 全員の力強い返事に満足しながら、ミハエルは詰め所を後にした。 


◇◇◇


 翌朝、ミハエルが自室で目を覚ました頃のことだった。

「殿下、失礼致します」

 近衛兵の一人が部屋に入って来た。

「どうなった?」

「はい、つい先程騎士団長より報告がありました。逃亡を企てようとしていたラングレー公を拘束したとのことです」 

「そうか! 良くやってくれた!」

 ミハエルは喜色を満面に浮かべた。

「それで? なにか白状したか?」

「いえ、それはまだのようです。取り敢えず、ラングレー公と共にこちらへ向かうとのことでした」

「そうか。ラングレー公爵領からなら早ければ午後には着くか?」

「えぇ、多分そのくらいでしょう」

「分かった。尋問は僕自身が行うことにしよう」

「殿下御自らですか?」

「当然だ。なにせ相手は腐っても公爵家なんだからな」

 ミハエルはキッパリと言い切った。

「あぁ、なるほど。分かりました」

「しかし、そうなると午後の予定はキャンセルしないとマズイな...」

「なにか特別なご予定でも?」

「あぁ、例の個人面談の予定を入れていた」

「あ、ソニア嬢とでしたっけ?」

「そうだ」

「騎士団長がいつ到着するか分からないんですから、予定通り面談なさったら如何です? 到着したらご連絡致しますよ?」

 近衛兵にそう言われたミハエルはちょっと考え込んだ。 

「いや、それだとソニア嬢に対して失礼に当たるだろうから、やっぱり面談は日を改めることにしよう」
 

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