王妃候補に選ばれましたが、全く興味の無い私は野次馬に徹しようと思います

真理亜

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「ちょっとでも動いたらこのオッサンの喉をかっ切るわよっ!」

 ライラはルイスとその仲間達両方を牽制しながらそう叫んだ。

「ぐっ!」

 ルイスが悔し気に口唇を噛む。

「ルイスっ! もっと下がりなさいっ!」

 ライラは更に指示を下した。ルイスは大人しく従って難所の地点から数歩下がった。

「ほら、オッサン! いつまでも命綱にしがみついてないでちゃんと立ちなさい!」

 次にライラは、しゃがみ込んで命綱を握り締めているマクシミリアンをゲシゲシと足蹴にした。

「わ、分かった分かった! ちゃ、ちゃんと立つから!」

 マクシミリアンはどうにか立ち上がった。ライラが後ろから小突く。

「ほらほら、さっさと戻る!」

 ライラは隣国側ではなく、セントール王国側に向かってマクシミリアンを誘導する。もちろん、隣国側に渡っているルイスの仲間の一人に対するケアも忘れない。

 難所から一緒に戻って来たマクシミリアンを、またもやライラは羽交い締めにした。そして首元に短刀を突き付ける。

「ルイスっ! あんた達は先に渡りなさいっ!」

「な、なんだとぉ!? 大公様を置いて行けっていうのかぁ~!?」

 ルイスが気色ばんだ。

「あんた達が渡ったらこのオッサンを解放してあげるわよっ! さあっ! 分かったらさっさと行きなさいっ!」

「くっ! こ、このぉ~!」

 ルイスは地団駄を踏むが状況はライラに有利なまま変わらない。

「仕方ない...ここは言う通りにしよう...」

 仲間の一人にまでそう言われてしまっては致し方ない。ルイスは断腸の思いで仲間と共に難所の方へと歩いて行った。

「フゥ...」

 勝利を確信したライラは思わずため息を漏らした。これで後は命綱を切ってしまえばマクシミリアンは隣国に渡ることが出来ない。

 ライラとしては、もちろん自分が助かることが大前提ではあるが、どうせならこの主犯であるマクシミリアンを隣国へ逃がしたくないとも思っていた。

 どうやらその目的は達成できそうだ。ライラは張り詰めていた緊張の糸をフッと緩めた。

 それがいけなかった。

「あ、あれ!?」

 突然、ライラは目眩を起こした。マクシミリアンを拘束している手がダラリと垂れ下がる。どうやら体力の限界に達したらしい。

 無理もない。頭に重傷を負い、かなりの出血にも見舞われたのだ。本当なら動くのもしんどいはずだ。それなのにここまで来れたのは、一重に気が張っていたからに他ならない。その緊張の糸がいったん緩んでしまえば...

「あ、頭がクラクラする...」

 ライラはその場に崩れ落ちてしまった。
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