空間魔法って実は凄いんです

真理亜

文字の大きさ
429 / 462

満身創痍

しおりを挟む
「ということは...つまりここでヒュドラを倒すしかないって訳ですね...」

 私は、今まさにヒュドラと対峙しているラウムさんとアスカさんの姿を目で追いながらそう呟いた。

「そういうことになりますね...ヒュドラに怯えた馬達が逃げ出してしまったみたいなんで、馬車を動かして逃げることも出来なくなりましたし...」

 そう言ってセリカさんは、馬車の方を振り返った。釣られて見ると確かに。馬は二頭とも姿を消していた。

「マズい状況ですね...」

「えぇ...ですのでラウムさんとセリカさんの働きに期待しましょう...」

 セリカさんは苦し気な表情を浮かべて戦況を見やった。その時、私はさっきからセリカさんが左手しか使っていないことに気付いた。

「あの、セリカさん...もしかしてなんですが...私を助ける時にヒュドラの攻撃を受けてたりしませんか?」

「あ、気付かれちゃいましたか...どうも石化を食らったみたいで、右半身が動かし辛いんです...」

 力無く笑いながらセリカさんはそう言った。

「なんてこと...」

 どうやら私達のパーティーは、今にも満身創痍状態に陥りつつある、かなり危険な状況のようだった...私は絶句するしかなかった...

「セィアァァァッ!」

「ハァアアアッ!」

 そんな中、ラウムさんとアスカさんはヒュドラと死闘を繰り広げている。
 
「ラウムさん! 頑張って!」

 自然と声が出た。なにも出来ないならせめて応援しようと思ったからだ。

「アスカさん! しっかり!」

 その思いが伝わったのか、セリカさんも同じように声援を送っていた。

「ウォオオオッ!」

「ヤァアアアッ!」

 私達の思いが届いたかのように、まずラウムさんがヒュドラの首を四つ落とした。少し遅れてアスカさんも首を四つ落とした。残る首はあと一つ。

「ハァ...ハァ...」

「ゼェ...ゼェ...」

 お二方とも疲労困憊のようだ。肩で息をしている。

「凄い...あと一息ですよ...」

「えぇ、でも九つ目の首はどこに?」

 セリカさんが辺りを見回した時だった。

「フシュウッ!」

 そんな息遣いと共に、ヒュドラの長い尻尾の先がムクムクと起き上がって来た。やがてその先端は首の形を取り始めた。

「あ、あんな所に!?」

 探しても見付からない訳だ。九つ目の首は他の首と違って、最初っから首の形をしていないのだから。

「ウオッ!?」

 九つ目の首の存在を確認したラウムさんは、直ぐ様攻撃に移ろうとしたようだが、途中で立ち止まってしまった。見ると、体が縮み始めている。どうやら部分獣化の時間切れらしい。

「アゥッ!?」

 すると今度はアスカさんがよろめいて倒れ込んでしまった。あれは明らかに魔力切れの症状だ。私も今、同じ状態だから良く分かる。

 つまり誰もヒュドラの九つ目の首を攻撃できないということだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

処理中です...