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 次の日、エリスは一人で街に来ていた。

 カイには農場での仕事をさせているからだ。

「これはこれはエリス様、ようこそおいで下さいました」

「町長さん、お忙しい所すいません。今日はちょっと見て貰いたいものがあるんです」

 そう言ってエリスは図案を差し出した。

「拝見します...エリス様、これは?」

「まだ原案なんですが、動物園の図案です」

「動物園ですか?」

「えぇ、それもただの動物園じゃありません。魔獣の動物園です」

「魔獣...それは危険ではないでしょうか?」

「公開するのは魔物の中でも草食の、比較的大人しい種類の魔獣のみにします。柵は二重にして間に堀も作ります。間違っても逃げ出すことの無いように」

「なるほど...」

「それとこれが目玉なんですが、魔獣の子と触れ合える場所を作ろうと思っています」

「触れ合い...危険ではないでしょうか?」

「子供なら大丈夫です。現にウチの牧場の従業員達には癒されると大人気ですから」

「そうなんですね。でもなぜ動物園なのですか? 魔獣の子と触れ合いたかったら、農場まで足を運ぶとかでも良くありませんか?」

「えぇ、それも考えたんですが、農場までは遠いですし、その為だけにロープウェイや遊歩道を整備するのは、コストパフォーマンス的に割に合わないかなと思いまして」

「確かにそうですね」

「だったら街の側に動物園を作った方が良いかと思ったんです。温泉地を訪れる観光客は家族連れが多くなるでしょうから、子供向けのアトラクションがあった方が良いでしょう」
 
「なるほど...」

 町長はしばらく考え込んだ後、

「私個人としては、安全面だけ保証して頂ければ許可しても良いと思っています。新規の雇用にも繋がるでしょうから」

「ありがとうございます」

「ただし、付近の住民の理解を求める必要があると思います。説明会とかを開く必要が生じるでしょう」

「えぇ、もちろんそのつもりです」

「ちなみにどの辺りに作る予定でしょうか?」

 エリスは街の地図を指差し、

「ここです。新しいホテルの近くにある空き地を予定しています」

「あぁ、この場所なら問題無さそうですね。付近の住民には私の方から話しておきます」

「町長さん、ありがとうございます。では私は説明会用の資料を作ることにします」

「了解しました。説明会の期日が決まりましたらご連絡下さい」

「分かりました。よろしくお願いします」 

 こうして魔獣動物園が始動することになった。

 エリスはカイやユリ達に報告すべく帰路に就いた。

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