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その日、エリスはカイに乗って、フィールドアスレチック場に使う網を特注するため、店があるという村を目指していた。
「ここら辺は来たことないわね。カイ、あなたの村はこの近くなんだったわね?」
「クエッ!」
「依頼が終わったらその後で訪ねてみる?」
「クエエッ!?」
「あら? たまには里帰りしたいとか思わないの?」
「クエ~...」
「ふうん。まぁいいわ。あ、あの村かしら?」
「クエッ!」
カイとも付き合いが長くなったので「クエッ!」だけでも何が言いたいのか、なんとなく分かって来たエリスなのだった。
◇◇◇
カイがエリスを村の手前で下ろし、物陰で着替えてから戻って来た。
「お待たせ。さぁ行こうか」
「えぇ、カイはこの村には良く来てたのよね?」
「そうだね。獲物を捕まえる罠や網とか良く買いに来てたよ」
村の中を歩きながら、カイが村のことを色々と説明している。
「あの店では美味しい干物が売っているんだ。こっちの店では狩猟道具が揃っている」
やがてカイは一軒の店の前で立ち止まった。
「エリス、この店だよ。お~い! オヤジさ~ん!」
「はいよ! いらっしゃい! うん? なんだお前! カイじゃねぇか! 久し振りだなこの野郎! 元気にしてたか?」
出て来たのは、如何にも職人といった感じのハチマキを巻いたおじさんだった。
「あぁ、元気でやってるよ。今日は仕事を頼みに来たんだ」
「仕事だぁ!? お前がぁ!? あっ!?」
そこで初めてエリスが居ることに気付いたらしい。
「初めまして。エリスと申します。今日はカイに紹介して貰って来ました。よろしくお願いします」
「こ、こりゃどうもご丁寧に! ちょおっと待って下せい!」
そう言うなり、おじさんはカイを店の隅に引っ張って行った。
「お、おい! なんだあの別嬪さんは!? カイ、あの娘はお前のなんなんだ!?」
そう言われてカイは困った。エリスとの関係をどう説明したものか。
「あ~...そうだな...僕の...上司かな...」
上手く表現できる言葉が見付からなかったが、間違ってはいないだろうとカイは思った。
「上司だぁ!? お前のコレじゃねぇのかよ!?」
おじさんが小指を突き立てた。
「ち、違うよ!...まだ...」
最後の言葉は小さくておじさんには聞こえなかった。
「あの~...」
痺れを切らしてエリスが話し掛ける。
「あ~! はいはい! 仕事のご依頼でしたね!」
途端におじさんは揉み手をしながら愛想笑いを浮かべた。
カイは真っ赤になりながら、恨めしそうにおじさんを睨み付けていた。
「ここら辺は来たことないわね。カイ、あなたの村はこの近くなんだったわね?」
「クエッ!」
「依頼が終わったらその後で訪ねてみる?」
「クエエッ!?」
「あら? たまには里帰りしたいとか思わないの?」
「クエ~...」
「ふうん。まぁいいわ。あ、あの村かしら?」
「クエッ!」
カイとも付き合いが長くなったので「クエッ!」だけでも何が言いたいのか、なんとなく分かって来たエリスなのだった。
◇◇◇
カイがエリスを村の手前で下ろし、物陰で着替えてから戻って来た。
「お待たせ。さぁ行こうか」
「えぇ、カイはこの村には良く来てたのよね?」
「そうだね。獲物を捕まえる罠や網とか良く買いに来てたよ」
村の中を歩きながら、カイが村のことを色々と説明している。
「あの店では美味しい干物が売っているんだ。こっちの店では狩猟道具が揃っている」
やがてカイは一軒の店の前で立ち止まった。
「エリス、この店だよ。お~い! オヤジさ~ん!」
「はいよ! いらっしゃい! うん? なんだお前! カイじゃねぇか! 久し振りだなこの野郎! 元気にしてたか?」
出て来たのは、如何にも職人といった感じのハチマキを巻いたおじさんだった。
「あぁ、元気でやってるよ。今日は仕事を頼みに来たんだ」
「仕事だぁ!? お前がぁ!? あっ!?」
そこで初めてエリスが居ることに気付いたらしい。
「初めまして。エリスと申します。今日はカイに紹介して貰って来ました。よろしくお願いします」
「こ、こりゃどうもご丁寧に! ちょおっと待って下せい!」
そう言うなり、おじさんはカイを店の隅に引っ張って行った。
「お、おい! なんだあの別嬪さんは!? カイ、あの娘はお前のなんなんだ!?」
そう言われてカイは困った。エリスとの関係をどう説明したものか。
「あ~...そうだな...僕の...上司かな...」
上手く表現できる言葉が見付からなかったが、間違ってはいないだろうとカイは思った。
「上司だぁ!? お前のコレじゃねぇのかよ!?」
おじさんが小指を突き立てた。
「ち、違うよ!...まだ...」
最後の言葉は小さくておじさんには聞こえなかった。
「あの~...」
痺れを切らしてエリスが話し掛ける。
「あ~! はいはい! 仕事のご依頼でしたね!」
途端におじさんは揉み手をしながら愛想笑いを浮かべた。
カイは真っ赤になりながら、恨めしそうにおじさんを睨み付けていた。
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