7 / 276
7
しおりを挟む
ここでエリザベートについて少し語りたいと思う。
彼女は学生時代から曲がったことが大嫌い。当時、学園内に蔓延っていた陰湿な虐めに断固として立ち向かい、弱きを助け強きを挫くその姿はまさに正義の味方、これぞ正義の令嬢と呼ばれていた。
さてそんな彼女が、友である私を壁の花に追いやって、のほほんと違う女を侍らせている浮気男を目の前にしたらどうなるか? 答えは火を見るより明らかである。
「ちょっとギルバート、これは一体どういうことなの!?」
「えっ!? あ、あぁ、え、エリザベート。ち、違うんだよ。じ、実は今日、アンリエットがちょっと遅れるかも知れないって言うから」
「アンリエットならあそこに居るじゃないの!?」
「えっ!?」
エリザベートが指を差してくれた瞬間に、私はヨヨヨとばかりに扇子で顔を隠して泣き真似をする。
「あ、アンリエット!? い、いつの間に!?」
ギルバートは鳩が豆鉄砲を食ったような驚いた顔をしている。
「我が家主宰の舞踏会で私の友人を泣かすだなんて良い度胸じゃないの! あぁ、アンリエット! 可哀想に!」
エリザベートが私に駆け寄って抱き締めてくれた。
「ううん、いいの。私に魅力が無いのがいけないのだから。ギルバートが他の娘に目移りしちゃうのも当然だわ。私さえ身を引けば...ヨヨヨ...」
あ、ヨヨヨって口に出しちゃった♪ テヘペロ♪
「そんなこと無いわ! あなたはとっても魅力的よ! 自信を持ちなさい! ギルバート! アンタって人は! こんな健気なアンリエットを泣かすだなんて! 恥を知りなさい! 大体、その女は誰よ!? 私はそんなどこの馬の骨か分からないような女に招待状を送った覚えは無いわよ!」
「あぐぅ...そ、それは...」
「目障りだわ! とっとと出て行きなさい! それとも放り出されたい!?」
「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」
ギルバートとキャロラインは這う這うの体で逃げて行ったとさ♪
チャンチャン♪
良し良し。全て計画通り。ギルバートとキャロラインは、今夜の舞踏会で私を悪役令嬢に仕立て上げたかったんだろうけど、それを上手く逆手に取ってギルバート達の方を悪役に仕立て上げることが出来た。
これで彼らの社交界での評判は地に落ちることだろう。良い気味だ。だがこれはまだ序章に過ぎない。
この後も更に追い込んでやる。私はエリザベートに抱き締められながら、心の中でほくそ笑んでいた。と、そこへ、
「やぁ、アンリエット。大変な目に合ったね」
「あら、お兄様」
「クリフトファー様...」
エリザベートの一つ上のお兄さん、公爵家嫡男であるクリフトファー様が側に来てくれた。
彼女は学生時代から曲がったことが大嫌い。当時、学園内に蔓延っていた陰湿な虐めに断固として立ち向かい、弱きを助け強きを挫くその姿はまさに正義の味方、これぞ正義の令嬢と呼ばれていた。
さてそんな彼女が、友である私を壁の花に追いやって、のほほんと違う女を侍らせている浮気男を目の前にしたらどうなるか? 答えは火を見るより明らかである。
「ちょっとギルバート、これは一体どういうことなの!?」
「えっ!? あ、あぁ、え、エリザベート。ち、違うんだよ。じ、実は今日、アンリエットがちょっと遅れるかも知れないって言うから」
「アンリエットならあそこに居るじゃないの!?」
「えっ!?」
エリザベートが指を差してくれた瞬間に、私はヨヨヨとばかりに扇子で顔を隠して泣き真似をする。
「あ、アンリエット!? い、いつの間に!?」
ギルバートは鳩が豆鉄砲を食ったような驚いた顔をしている。
「我が家主宰の舞踏会で私の友人を泣かすだなんて良い度胸じゃないの! あぁ、アンリエット! 可哀想に!」
エリザベートが私に駆け寄って抱き締めてくれた。
「ううん、いいの。私に魅力が無いのがいけないのだから。ギルバートが他の娘に目移りしちゃうのも当然だわ。私さえ身を引けば...ヨヨヨ...」
あ、ヨヨヨって口に出しちゃった♪ テヘペロ♪
「そんなこと無いわ! あなたはとっても魅力的よ! 自信を持ちなさい! ギルバート! アンタって人は! こんな健気なアンリエットを泣かすだなんて! 恥を知りなさい! 大体、その女は誰よ!? 私はそんなどこの馬の骨か分からないような女に招待状を送った覚えは無いわよ!」
「あぐぅ...そ、それは...」
「目障りだわ! とっとと出て行きなさい! それとも放り出されたい!?」
「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」
ギルバートとキャロラインは這う這うの体で逃げて行ったとさ♪
チャンチャン♪
良し良し。全て計画通り。ギルバートとキャロラインは、今夜の舞踏会で私を悪役令嬢に仕立て上げたかったんだろうけど、それを上手く逆手に取ってギルバート達の方を悪役に仕立て上げることが出来た。
これで彼らの社交界での評判は地に落ちることだろう。良い気味だ。だがこれはまだ序章に過ぎない。
この後も更に追い込んでやる。私はエリザベートに抱き締められながら、心の中でほくそ笑んでいた。と、そこへ、
「やぁ、アンリエット。大変な目に合ったね」
「あら、お兄様」
「クリフトファー様...」
エリザベートの一つ上のお兄さん、公爵家嫡男であるクリフトファー様が側に来てくれた。
77
あなたにおすすめの小説
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
王命により、婚約破棄されました。
緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。
病弱を演じる妹に婚約者を奪われましたが、大嫌いだったので大助かりです
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『病弱を演じて私から全てを奪う妹よ、全て奪った後で梯子を外してあげます』
メイトランド公爵家の長女キャメロンはずっと不当な扱いを受け続けていた。天性の悪女である妹のブリトニーが病弱を演じて、両親や周りの者を味方につけて、姉キャメロンが受けるはずのモノを全て奪っていた。それはメイトランド公爵家のなかだけでなく、社交界でも同じような状況だった。生まれて直ぐにキャメロンはオーガスト第一王子と婚約していたが、ブリトニーがオーガスト第一王子を誘惑してキャメロンとの婚約を破棄させようとしたいた。だがキャメロンはその機会を捉えて復讐を断行した。
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ
棗
恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。
王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。
長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。
婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。
ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。
濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。
※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています
第一王子は私(醜女姫)と婚姻解消したいらしい
麻竹
恋愛
第一王子は病に倒れた父王の命令で、隣国の第一王女と結婚させられることになっていた。
しかし第一王子には、幼馴染で将来を誓い合った恋人である侯爵令嬢がいた。
しかし父親である国王は、王子に「侯爵令嬢と、どうしても結婚したければ側妃にしろ」と突っぱねられてしまう。
第一王子は渋々この婚姻を承諾するのだが……しかし隣国から来た王女は、そんな王子の決断を後悔させるほどの人物だった。
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる