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66 (第三者視点7)

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「分かりました。あの、先生...頬の傷のことですが...」

 ロバートが聞き辛そうに尋ねる。

「あぁ、それは...残念ながら完全に消えることはないでしょう...」

 医者も言い辛そうにそう言った。

「そうですか...ありがとうございます。先生、お世話になりました」

「容態が急変するようなことがあれば、すぐに連絡して下さい。急いで駆け付けますので。それではこれで失礼します」

 医者が出て行った後、ロバートは沈痛な表情を浮かべながらクリフトファーを詰問する。

「それで!? 一体全体どういうことなんだ!? なんでアンリエットがこんな酷い目に遭ってる!? 答えろ! 事と次第によっちゃあ、俺は貴様を許さんぞ!」

 クリフトファーは唇を噛み締めた後、ポツリポツリと語り始めた。

「...全て僕の責任だ...実は...」

 ロバートはクリフトファーの話を黙って聞いていたが、最後まで聞き終わらない内に、

「貴様ぁ!」

 クリフトファーの胸倉を掴んで思いっきり殴り飛ばした。クリフトファーはもんどり打って吹っ飛んで行った。

「ろ、ロバート様!」

 セバスチャンが慌てて間に入って止める。確かにアンリエットの件はクリフトファーの責任ではあるだろうが、なんと言っても相手は公爵家の嫡男だ。怒らせたらヘタすりゃ我が伯爵家は取り潰されるかも知れない。

「アンリエットは完全なとばっちりじゃないか! 貴様、よくもこの場にのうのうと居られるな! とっとと出て行け! 二度とアンリエットの、俺の妹の前にそのツラ見せるな! 結婚なんて以っての他だ! 俺は貴様を絶好に許さんからな!」

「...せめて...せめて...アンリエットが目覚めるまで側に居させて貰えないだろうか...」

 クリフトファーは切れた口元の血を手で拭いながら懇願する。だがロバートはますます激昂して、

「まだ言うか貴様ぁ!」

 セバスチャンをも押し退けようとする勢いでクリフトファーに迫る。

「く、クリフトファー様! ここは一先ずお引き取り下さい! お願いですから!」

 セバスチャンは必死になってロバートを抑えながらそう叫んだ。

「...分かった...本当に申し訳なかった...くれぐれもアンリエットのことをよろしく頼む.. 」

 クリフトファーはヨロヨロと立ち上がりながら部屋を出て行った。

「セバスチャン! 塩撒いとけ塩!」

 ロバートはそんなクリフトファーの後ろ姿を見送りながら、吐き捨てるようにそう言った。

「ろ、ロバート様! 少し落ち着いて下さい! アンリエットお嬢様のお体に障りますよ!」

 そう言われてロバートはやっと静かになった。セバスチャンはホッと息を吐いた。
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