我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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176 (第三者視点8)

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 一方その頃。

 待つしかない身のアンリエットのストレスは限界に達しようとしていた。

「お嬢様、少し落ち着いて下さい」

 見かねたハンスが声を掛ける。

「落ち着いてるわよ私は」

「どこがですか...さっきから部屋の中をグルグルと回って...熊じゃないんですから...」

「うるさいわよ。ジッとしてらんないんだからしょうがないじゃないのよ」

「お茶でも入れますから座って下さいな...」

「飲みたくないし座りたくない」

「ハァ...」

 ハンスはため息を吐くしかなかった。

「ねぇハンス」

「ダメです」

 途端に猫なで声を出したアンリエットの機先を制する形で、ハンスはキッパリと断った。

「まだなんも言ってないじゃないのよ」

「聞かなくとも分かります。アランを助けに行きたいって言うんでしょう?」

「さすがに良く分かってるじゃないの。だったら」

「だからダメですって」

 ハンスは鰾膠も無い。

「大丈夫だって。私は馬車から外には出ないからさ。それならなんも危ないことはないじゃない?」

「とにかくダメです」

「ハンスの生け簀~」

「それを言うなら『いけず~』でしょ? どこのちびまる○ちゃんですか...全く.. 」

 ハンスは頭を振った。

「アランが心配なのは良く分かりますが...きっと大丈夫ですよ。アイツは殺しても死にゃしませんって。ドンと構えて待っておいでなさいな」

「でもでもでも~...」

 アランのことになると、まるで幼児退行したみたいに我が儘を言い出すアンリエットに、ハンスはほとほと困り果てていた。

「ねぇあなた...えっと...リックだっけ?」

 ハンスでは埒が明かないと判断したアンリエットは、どうやら次のターゲットをリックに定めたようだ。またしても猫なで声で迫る。

「ダメです」

 もちろんリックも機先を制する。

「だからまだなんも言ってないじゃない...」

「ダメったらダメです。私がエリザベートお嬢様に殺されてしまいますんで」

「エリザベートには私が取り成すからぁ~」

「ダメなもんはダメです。私は自分の身が可愛い」

「先っちょだけでいいからぁ~ 動かさないからぁ~」

「それ意味分かってて言ってます!? 意味違ってますからね!? 下ネタですからね!?」

 思わずリックは叫んでしまい、ハンスは頭を抱えてしまった。

 そんなこんなでこの不毛なやり取りは、エリザベートがアランを連れて帰って来るまで続いたのだった。

 ちなみにその頃には、ずっとアンリエットの相手をしていたハンスとリックはすっかり疲労困憊になっていたりした。
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