我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します！

177 (第三者視点９)

「アラン!」

　エリザベートが肩を貸すような格好になって、馬車から降りて来たアランの姿を確認したアンリエットは、矢も盾も堪らずアランに抱き付いた。

「ただいま、お嬢。心配掛けてゴメン...」

「アラン!　アラン!　あぁ、アラン～!」

　アンリエットは感極まったのか涙ぐんで言葉にならない。ただ只管アランに縋り付いて幼い子供のように名前を連呼するのみだった。

「お、お嬢!　ちょ、ちょっと待って!　あ痛ててて!」

　アランが痛みに呻いた。そこでやっと我に返ったアンリエットは、アランが全身ボロボロであることに気付いた。

「あっ!　ご、ゴメンなさい!」

　慌ててアランから離れたアンリエットを、エリザベートがニマニマニマニマとても良い笑顔を浮かべて見守っていた。

「ヒュウヒュウだよ～♪　熱い熱いお二人さん～♪　ヒュウヒュウ～♪」

　途端に自分の取った行動を思い出し、恥ずかしくなったアンリエットは真っ赤になって叫んだ。

「エリザベート、うっさい!　そのいかにも昭和っぽいノリで煽るの止めろ!」

　その隣でアランはアンリエットと同じくらい真っ赤になっていた。


◇◇◇


「なるほど...そういう結末になったのね...」

　客間に移動し、エリザベートから事の顛末を語られたアンリエットは、神妙な顔付きになって一つ頷いた。

　ちなみにアランは治療のために呼んだ医者の診察を別室で受けている。

「えぇ、迷惑ばっかり掛けて本当にゴメンなさいね...でも安心して?　あのバカ兄が太陽の下を歩ける日は二度と来ないから」

「そ、それはまた...」

　そう言い切ったエリザベートに、思わずアンリエットは絶句してしまった。

「それでアンリエット、この間の件だけど」

「えっ!?　あ、あぁ、アレね...」

　アンリエットは曖昧に頷いた。

「あなたの気持ちは十分に理解したから、話を進めても構わないわね?」

「そ、それは...その...」

　アンリエットはまた真っ赤になってしまった。

「もちろん、アランの気持ちを確認してからになるけど、両思いなのは間違いないんだから問題無さそうね」

　アンリエットは更に茹で蛸のように真っ赤っかになってコクコクと頷くのみだった。

「じゃあ善は急げと言うし、アランの所に言って来るわね」

　そう言ってエリザベートは立ち上がったが、

「ままま待って待って!　わ、私も!　私も一緒に行くから!」

　アンリエットがしがみ付いて来た。

「分かった!　分かったから!　ちょっと離れてよ!　歩けないじゃない!」

　思いも掛けない強い力でしがみ付かれたエリザベートは、思わず悲鳴を上げた。