我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

文字の大きさ
178 / 276

178 (第三者視点10)

しおりを挟む
「アラン、具合はどう?」

「あぁ、エリザベート嬢。ご覧の通り、ミイラ男状態だよ」

 アランは苦笑しながら自分の体を見下ろした。頭の先から爪先まで包帯塗れになっている様は、確かにミイラ男を彷彿とさせる。

「アラン...大丈夫? 痛くない?」

 エリザベートの肩越しに覗き込んだアンリエットが心配そうに声を掛ける。

「お嬢も来てくれたんだ」

「うん...それでどう? まだ痛む?」

「まぁ、確かに痛いことは痛いけどさ、幸いなことにどこも骨折はしてないみたいだから、回復は早そうだって医者は言ってたよ」

「そう...良かったわ...不幸中の幸いね...」

 アンリエットはホッと胸を撫で下ろした。

「それでね、アラン。こんな時になんなんだけど、私からとある提案があるのよ。良かったら聞いて貰えないかしら?」

「なに? 改まって?」

「単刀直入に言うわね。あなた、貴族になる気はない?」

 エリザベートが鋭く切り込んだ。アンリエットは緊張した表情を浮かべている。

「ほへ!?」

 アランはなんとも間の抜けた返事を返した。

「貴族になる気はない?」

 エリザベートはアランが理解できていないと判断して繰り返した。

「き、貴族ぅ!? お、俺がぁ!? な、なんでぇ!?」

 ようやく理解したアランがすっとんきょうな声を上げる。

「貴族になれば身分的にアンリエットと釣り合うでしょう? そうすれば堂々とアンリエットに告白して結婚できるようになるわよ?」

「コココクハク~!? ケケケケッコン~!?」

 アランの言語機能が深刻なダメージを受けたようだ。

「あんたはニワトリか」

 思わずエリザベートは苦笑した。その隣でアンリエットはトマトよりも真っ赤っかになって俯いていた。

「ちょっと! ちょっと待って! ダメだ! 脳に理解が追い付かない! なんだか訳分かんない! あ痛ててて!」

 無意識に頭を抱えようとしたアランは、途端に痛みに気付いて悶絶した。

「アラン、無理しないで? いきなりこんなこと言われて混乱するのは分かるけど、少し冷静になって考えてみて? あなたにとって悪い話じゃないはずよ?」

「うぅ...」

 アランが呻いたのは怪我の痛み故か、それとも内心に吹き荒れる感情の嵐故だろうか。あるいはその両方なのかも知れないが。

「まぁでもまずは、怪我を治すのが先決かしらね。しばらくは安静にしてなさい。その間に考えといて?」

「...分かった...」

 アランは放心したように頷いた。

「それじゃあお大事に。アンリエット、行くわよ?」

「うん...アラン、お大事に...」

 アンリエットはまだ真っ赤になった顔のまま頷いた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!

ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。 なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ

恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。 王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。 長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。 婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。 ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。 濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。 ※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った

Mimi
恋愛
 声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。  わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。    今日まで身近だったふたりは。  今日から一番遠いふたりになった。    *****  伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。  徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。  シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。  お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……  * 無自覚の上から目線  * 幼馴染みという特別感  * 失くしてからの後悔   幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。 中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。 本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。 ご了承下さいませ。 他サイトにも公開中です

「失礼いたしますわ」と唇を噛む悪役令嬢は、破滅という結末から外れた?

パリパリかぷちーの
恋愛
「失礼いたしますわ」――断罪の広場で令嬢が告げたのは、たった一言の沈黙だった。 侯爵令嬢レオノーラ=ヴァン=エーデルハイトは、“涙の聖女”によって悪役とされ、王太子に婚約を破棄され、すべてを失った。だが彼女は泣かない。反論しない。赦しも求めない。ただ静かに、矛盾なき言葉と香りの力で、歪められた真実と制度の綻びに向き合っていく。 「誰にも属さず、誰も裁かず、それでもわたくしは、生きてまいりますわ」 これは、断罪劇という筋書きを拒んだ“悪役令嬢”が、沈黙と香りで“未来”という舞台を歩んだ、静かなる反抗と再生の物語。

処理中です...