我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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213 (第三者視点4)

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 結局その日は既に夕方になっていたこともあり、アランとパトリックは領主館に泊まることにした。

 次の日、二人はハンスが書いてくれたメモの住所に向かった。

「ここは...もしかして精神病院か!?」

 アランは窓に鉄格子が嵌まった病室を見上げながら驚きの声を上げた。

「...どうやらそのようだな...体だけならともかく、心にまでダメージを負ったから...なんだろうな...」

 パトリックが重々しく頷いた。

「取り敢えず中に入ってみよう...」

 アランが先を促した。


◇◇◇


 既にハンスが連絡をしてくれていたらしく、保護施設の所長と名乗る男が出迎えてくれた。

「アランさんとパトリックさんですね? お話は伺っております。どうぞこちらへ」

 そう言って二人をマーガレットの病室まで案内してくれた。病院特有の薬の匂いが鼻に付く。

「...その...マーガレットはどんな状態なんですか?」

 歩きながら戸惑いがちにパトリックが尋ねる。

「良くはありません...体の傷は直に治るでしょうが、心に負った傷はそう簡単には治らないと思います...」

 所長は顔を曇らせてそう言った。やがて病室の前で立ち止まった所長は、

「入る前に一言お断りしておきたいと思います。患者さんをベッドに縛り付けておりますが、それは患者さんが暴れて自傷行為に及ぶのを防ぐためです。どうかご理解下さい」

「...分かりました...」

 パトリックは覚悟を決めたような表情を浮かべた。

「ではどうぞ。ちなみに面会時間は10分までとなっておりますのでご注意下さい」

 所長がドアを開けると痩せ細った女が一人、ベッドに手足を拘束された状態で横たわっている光景が目に飛び込んで来た。

「...うっ...」

 パトリックは、すっかり変わり果てた様子のマーガレットの姿を見て思わず嘔吐いてしまった。
 
「これは...酷いな...」

 アランも顔を歪めた。マーガレットは体中に包帯を巻かれており、消毒薬のキツイ匂いが部屋中に漂っていた。

 特に顔の傷が目立つ。目と鼻と口以外、全て絆創膏や包帯で覆われていた。

「今は薬で眠っています」

 所長が囁くように呟いた。

「...あの...傷は...体の傷の方はどんな状態なんでしょうか...」

 パトリックも囁くように尋ねた。

「体中を傷付けられていまして...その...顔が一番酷かったです...治っても傷痕は残ってしまうでしょう...」

「......」

 所長は顔を伏せながらそう囁いた。パトリックは絶句してしまった。
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