我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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 エリザベートの声がした方向に目を向けると、見覚えのある公爵家の豪華な馬車が走って来るのが見えた。そしてなんと、御者席で手綱を握っているのはエリザベートだった。

 公爵家の馬車が私達の近くまで到達するや否や、エリザベートは颯爽と御者席から飛び降りてカイルとセバスチャンを囲んでいる破落戸の群れの中に突っ込んだ。

「どりゃあ~! てめえらぁ~! 弾け飛べやぁ~!」

 まさにちぎっては投げ、ちぎっては投げと表現するのが正しいだろう。鬼神と化したエリザベートはあっという間に破落戸どもを蹴散らした。

「エリザベート! お見事!」

 そんな場合じゃないってのに、気付いたら私は思わず拍手喝采を送っていた。本当なら「身重の体でなんて無茶するんだ!」って叱り飛ばさないといけない場面のはずなんだが、その時の私はおかしなテンションだったんだと思う。

「あぁ、アンリエット! 良かった! 無事なのね!」

 こっちに気付いたエリザベートが駆け寄って来た。そこで我に返った私はアランのことを思い出した。

「エリザベート! アランが! アランが大変なの! 早く! 早く助けて!」

「落ち着いて! まずはあなたの救助が先よ! カイル! セバスチャン! 手伝って!」

『ハッ!』

 横倒しになった馬車の中からまず私のことをエリザベートが引っ張り上げてくれた。続いてカイルとセバスチャンが慎重にアランを引っ張り上げる。

「アラン...返事をしないの...ねぇ...エリザベート...アラン...大丈夫よね?」

 私はエリザベートに抱き抱えられたまま何度もしゃくり上げた。

「大丈夫よ! コイツは殺したって死なないしぶといヤツだってアンタも良く知ってるでしょ!」

「うん...うん...」

 エリザベートが背中を優しく擦ってくれながら何度も「大丈夫! 大丈夫!」と繰り返し元気付けてくれた。私はただ泣きじゃくるしか出来なかった。

「カイル、どんな具合?」

「意識はありません...かなり頭を強く打ってるみたいなんで動かさない方が良いかと...」

「そう、分かったわ...あなた達、大急ぎでお医者様を連れて来て」

『ハッ!』

 私を抱き締めながらエリザベートは、アランの状態を確認し冷静に指示を下す。お医者様を呼ぶように指示したのは、エリザベートと一緒にやって来た公爵家の使用人だ。

 その辺りで私もようやく少し落ち着いて来た。エリザベートから離れ地面に横たわっているアランに近付いて跪いた。

「アラン...」

 頭を朱に染めたアランの姿は、痛々しくて見ているのが辛かった。
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