我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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 私は急いで窓際に駆け寄った。下を見ると医師の白衣を着た不審な男が一人、雨樋を伝わって登ろうとしている最中だった。

 シェイラが捨てた洗面器の水を頭から被って濡れ鼠になっている。

「ネオッ! こっちに来てっ!」

 私は急いでネオを呼んだ。

「どうしましたか!?」

 すぐに駆け付けて来てくれたネオに無言で窓の下を指差す。

「ほほう...これはこれは...」

 ネオが凄惨な笑顔を浮かべた。不審者はすぐに捕縛された。その後、結果としてお手柄となった形のシェイラがドヤ顔している姿を、私は複雑な思いで苦笑しながら眺めていた。


◇◇◇


「お嬢様、ご無事でなによりでした...」

 病院内を見回りしていたセバスチャンが戻って来た。

「ありがとう。セバスチャン、怪我の具合はどう?」

「はい、もう大丈夫です。ご心配をお掛けしました」 

「そう、良かったわ」

「お嬢様、ただいま戻りました」

 そこに公爵家へと連絡に向かっていたカイルが戻って来た。

「お帰りなさい。どうなった?」

「はい、この病院を取り囲むように公爵家の私兵を配置するようにとエリザベートお嬢様より指示を受けましたので、もう蟻の子一匹通したりしません。ご安心ください」

「そ、そう...あ、ありがとう...」

 過保護なエリザベートにちょっと引いたが、まぁでもその気持ちは嬉しかった。

「ちなみにあの不審者は?」

「はい、思った通りカスパート家の手の者でした」

「そう...で? 狙いはやっぱり私だったの?」

「はい...なんとしてでもお嬢様を拐うようにとのことでした...」

「フゥ...」

 私はため息を吐くしかなかった。

「この段階になってもまだ諦めていないなんてね...今更私を拐ってどうしようってつもりなのかしらね...」

「さぁ...狂人の考えることは常人には分かりかねますな...」

「狂人か...」

 これまで私に関わった男達の狂人率のなんと高いことか...アランが以前言っていた通り、一度本当にお祓いして貰った方がいいのかも知れないな...

 私は未だに目を覚まさないアランの寝顔を見詰めながら、そんな埒のないことを考えていたりした。


◇◇◇


「アンリエット! 無事なのね!?」

 夜になってまたエリザベートがやって来てくれた。

「えぇ、大丈夫よ。なんともないわ。心配掛けてごめんね?」

「あなたが謝ることなんてなにもないわよ! とにかく無事で良かったわ...」

「ありがとう。あなたにも何度も来て貰って申し訳ないわね」 

「申し訳ないのは私の方よ...あんな大口叩いておいてカスパート家を取り逃がしたんだから...」

「そうなの?」

「えぇ、ウチの私兵がヤツらの屋敷に乗り込んだ時には既にもぬけの殻だったわ...」
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