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その時、どこからか赤ん坊の泣き声が聞こえて来た。
「ちょっとデュラン! 乳母はどうなったのよ! この子全然泣き止まなくて困ってんだけど! あぁ、もう! 喧しいったらないわね!」
そんな金切り声と共に赤ん坊を抱いて現れたのは、一体どこの娼館から連れて来たんだと言わんばかりに化粧も服もケバケバしい女だった。
間違っても神聖なる夫婦の寝室に入れていいようなタイプの女ではない。
「あぁ済まない、アイラ。紹介しておこう。彼女がサリアだ」
「良かった! はい、後はヨロシクね!」
そう言ってアイラは赤ん坊をサリアに渡して来た。
「えっ!? ちょ、ちょっと!? えぇっ!?」
反射的に受け取ったサリアは混乱の極みに居た。
「サリア、彼女はアイラ。僕の愛しい人さ。僕は彼女以外抱く気はないから」
「もう~♪ デュランったら~♪」
アイラが絡み付くようにデュランに抱き付く。
一体自分はなにを見せられているんだろう...未だに泣き止まない赤ん坊を抱き締めながら、サリアは現実逃避したくなって来た。
「デュラン、ということはこの人が?」
「あぁ、そうだよ。金の成る木だ」
「なるほど~♪ ヨロシクね~♪ 私とデュランの明るい未来のためにも~♪」
そう言ってアイラは無邪気そうに嗤った。サリアは悔しくて唇をグッと噛んだ。
「ちょっと散財し過ぎたせいで乳母を雇う金が無くてね。サリア、お前の実家から金を巻き上げるまでは乳母を頼むよ」
「ちゃんとお世話してね~♪ 私とデュランの愛の結晶なんだから~♪」
「あぁ、その通りだ。大事に育ててくれよ? ちなみに名前はステファニー、女の子だ」
「可愛い名前でしょう~♪」
「それじゃあヨロシク頼む」
そう言ってデュランはアイラと共に寝室を出て行こうとする。
「ちょ、ちょっと待って下さいよ!」
慌ててサリアが呼び止めるが、デュランは振り返ることなく、
「あぁ、そうだ。忘れるところだった。サリア、逃げようなんて思うなよ?」
そう言って指をパチンと鳴らすと、ドアの外にゲスい嗤いを浮かべた輩が二、三人屯していた。
「コイツらがお前を見張っているからな。バカな考えを起こすんじゃないぞ? お前は黙って子守りをしてりゃいいんだ」
そう言い放って今度こそ寝室を出て行ってしまった。
残されたサリアはしばらく呆然としたままだったが、それでも母性本能故か中々泣き止まないステファニーを強く抱き締め、
「おぉ、良し良し。いい子だから泣かないで。お願い」
と、自分も涙を流しながらあやしていたのだった。
「ちょっとデュラン! 乳母はどうなったのよ! この子全然泣き止まなくて困ってんだけど! あぁ、もう! 喧しいったらないわね!」
そんな金切り声と共に赤ん坊を抱いて現れたのは、一体どこの娼館から連れて来たんだと言わんばかりに化粧も服もケバケバしい女だった。
間違っても神聖なる夫婦の寝室に入れていいようなタイプの女ではない。
「あぁ済まない、アイラ。紹介しておこう。彼女がサリアだ」
「良かった! はい、後はヨロシクね!」
そう言ってアイラは赤ん坊をサリアに渡して来た。
「えっ!? ちょ、ちょっと!? えぇっ!?」
反射的に受け取ったサリアは混乱の極みに居た。
「サリア、彼女はアイラ。僕の愛しい人さ。僕は彼女以外抱く気はないから」
「もう~♪ デュランったら~♪」
アイラが絡み付くようにデュランに抱き付く。
一体自分はなにを見せられているんだろう...未だに泣き止まない赤ん坊を抱き締めながら、サリアは現実逃避したくなって来た。
「デュラン、ということはこの人が?」
「あぁ、そうだよ。金の成る木だ」
「なるほど~♪ ヨロシクね~♪ 私とデュランの明るい未来のためにも~♪」
そう言ってアイラは無邪気そうに嗤った。サリアは悔しくて唇をグッと噛んだ。
「ちょっと散財し過ぎたせいで乳母を雇う金が無くてね。サリア、お前の実家から金を巻き上げるまでは乳母を頼むよ」
「ちゃんとお世話してね~♪ 私とデュランの愛の結晶なんだから~♪」
「あぁ、その通りだ。大事に育ててくれよ? ちなみに名前はステファニー、女の子だ」
「可愛い名前でしょう~♪」
「それじゃあヨロシク頼む」
そう言ってデュランはアイラと共に寝室を出て行こうとする。
「ちょ、ちょっと待って下さいよ!」
慌ててサリアが呼び止めるが、デュランは振り返ることなく、
「あぁ、そうだ。忘れるところだった。サリア、逃げようなんて思うなよ?」
そう言って指をパチンと鳴らすと、ドアの外にゲスい嗤いを浮かべた輩が二、三人屯していた。
「コイツらがお前を見張っているからな。バカな考えを起こすんじゃないぞ? お前は黙って子守りをしてりゃいいんだ」
そう言い放って今度こそ寝室を出て行ってしまった。
残されたサリアはしばらく呆然としたままだったが、それでも母性本能故か中々泣き止まないステファニーを強く抱き締め、
「おぉ、良し良し。いい子だから泣かないで。お願い」
と、自分も涙を流しながらあやしていたのだった。
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