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「お、おい! ちょ、ちょっと待ってくれよ!」

「バカ野郎! 早くしろ! 置いてくぞ!」

「来たぞ! 逃げろ!」

 町の裏通りを何者かに追われて逃げているのは、デュランがサリアを見張るために雇った輩三人衆である。

「クソッ! 一体何者なんだ!?」

「知るかそんなこと!」

「どう見たって堅気にゃ見えねぇ!」

「捕まったらどんな目に遭わされるか分かったもんじゃねぇぞ!」

「そんなの冗談じゃねぇ!」

「とにかく逃げろ逃げろ! 足が息が続く限り!」

 だが回り込まれてしまった。

「鬼ごっこは終わりだ。観念するんだな」

 確かにどう見ても堅気には見えない連中が、指をポキポキ鳴らしながら包囲の輪を狭めて来る。

「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」

 三人は立ち止まってしまった。そして震え上がった。

「手間掛けさせやがって。なんで逃げた? こっちはただ話がしたかっただけなのに」

 三人とも脛に傷を持つ身であるから、追われれば本能的に逃げてしまうのだった。

「まぁいい。とにかく一緒に来て貰うぞ?」

 三人に拒否権はなかった。


◇◇◇


 三人が連れて来られたのは古びた安ホテルの一室だった。

「お頭、連れて来ました」

「ご苦労」

 部屋の中には親方らしき貫禄のある男ともう一人、三人にとっては見覚えのある人物サリアが居た。

「お久し振り」

「あ、あんたは...」

「良く来てくれたわ。証人さん達」

「しょ、証人!?」

「えぇ、そうよ。私と元旦那の離婚裁判で証言して欲しいのよ」

「ど、どんな!?」

「アンタ達が私に言った言葉そのままをよ」

「そ、それは...ま、待ってくれ! あ、あれはデュランの旦那にそう言えって言われたからであって...」

「そうそう! 俺達の本意って訳じゃないんだ!」

 三人は必死に弁明した。

「どうだっていいわよそんなこと。とにかく証言してくれればそれでいいわ。無論タダとは言わない。謝礼は払うわ。その代わり裁判までの間このホテルで暮らして貰うけど。逃げられたりしたら堪んないからね」

 サリアは事務的に冷たく言い放った。

「わ、分かった...」

 三人に選択権はなかった。

「それともう一つ、あの女がどこに雲隠れしたか知ってる?」

「あの女...あぁ、あのアイラとかいう元娼婦のことか?」

「他に誰も居ないでしょう?」

「雲隠れって行方不明ってことか?」

「そうよ。なにか心当たりとかない?」

「さぁ...とんと見当付かねぇなぁ...」

「他の男の所じゃねぇのか? なにせ旦那の目を盗んで俺達ともヤッてたくらいの男好きだったからな」

「そうなのね...」

 サリアは呆れてしまった。そしてこれは、ステファニーの父親がデュランで無い可能性が高まったかも知れないとも思った。
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