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 ミランダが頭を抱えていた頃、北の砦ではちょっとした騒ぎが起こっていた。

「お、お屋形様! た、大変です! なにか巨大な鳥のようなものが飛んで来ます! こっちに真っ直ぐ向かって来てます!」

 物見台で見張りに就いていた兵士の一人が、慌てふためきながらガストンの元へと報告しに来た。

「なんだと!? 魔物か!?」

「あ、あの...そ、その...わ、分かりません! 見たこと無いものでして...」

 見張りに就くのはベテランの兵士のみに限られる。その内の一人がこんなに要領を得ないというのは珍しい。

「ふむ...取り敢えず見てみよう」

 ガストンは物見台に急いだ。

「あ、お屋形様! 見て下さい! あれです! 一体なんなんでしょう?」

 見張りに就いていたもう一人の兵士が、首を傾げながら双眼鏡をガストンに渡す。受け取ったガストンは兵士の指差す方角に双眼鏡を向けた。

「あれは...ジャイアントファルコンじゃないか...乗っているのは...なあんだ...」

 ガストンは双眼鏡を下げて兵士達にこう言った。

「お前達、警戒を解いていいぞ。あれは敵じゃない」

「へっ!? じゃ、じゃあれは一体なんなんです!?」

 兵士はビックリしてそう尋ねる。

「そうだな...招かれざる客とでも呼ぶべきかな」

「は、ハァ...」

 なんだか納得していない様子の兵士を尻目に、ガストンは客を出迎えるため物見台を降りて行った。


◇◇◇


「フゥ...到着~! ファルファル、お疲れ様!」

「クエッ!」

 巨大な鳥から降り立ったのはリリアナだった。

「しっかしホントに速いな...」

 そしてリリアナの後からクラウドも降りて来た。

「だからそう言ったじゃない! ファルファルは世界最速なんだって! ね?」

「クエッ!」

 リリアナは我が事のように自慢気だ。

「これはこれはクラウド殿下にリリアナ嬢、ようこそ北の砦にお越し下さいましたな」

「あぁ、ガストン卿。先触れも無しに済まない」

「お久し振りです! おじ様!」

「殿下が急に来られたということは、なにか厄介事が起きたってことなんでしょうな」

 ガストンの問いにクラウドが答える前に、 

「えぇっ!? もしかしてクラウド殿下にリリアナ!? なんでここに居るんです!? こんな急に一体どうしたんですか!?」

 上空からミランダの声が降って来た。どうやら最前線から戻って来たらしい。

「やっほー! ミランダ! 遊びに来たよ~!」

 リリアナは能天気にミランダに向かって手を振っていた。

「やぁ、ミランダ。久し振り...って程でもないかな?」

 そんなリリアナに苦笑しながら、クラウドは控え目に手を振った。
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