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3.優しくするって言ったじゃないですか。
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「あずき、せん……ぱい」
私は何も考えず、彼の名前を口にした。
「よくできました。良い子だな。」
クスッと笑う気配がして、私への責めが激しくなる。
未だ不安と困惑の中にいた私の頭の中は、間もなくして真っ白になった。
何が起きたか分からなくて、ただ自分のものと思えない甘い声がひたすらに恥ずかしくて。
私を抱いてる先輩の顔が見れない。息が震える。
動揺する私をよそに先輩は手を止める気なんかなくって、先輩の指が触れた場所に思わず私は身体を固くする。
「痛くしねぇよ。……多分」
私が見上げると紅先輩は少し視線を逸らした。
「昨日は俺が急ぎすぎた。初めてのコとやんの久しぶりだったし?」
ベッド上の棚から小さなボトルを取る先輩。とろりとした透明の液体を少し多めに手に取る。
「あっ」
熱を帯びた部分に当てられた液体の冷たさに声が漏れる。円を描くように優しくなぞられて、時折聞こえる水音に頬が熱くなる。
「そのまま力抜いてろよ」
耳元で低く囁かれて。
ゆっくりと先輩の指が私の中へと挿入(はい)ってくる感覚。昨日の痛みを思い出してやっぱりちょっと怖くなる。
「千夜子。力抜いて。」
深呼吸をして、身体の力を抜こうと試みるけど。恐怖心は簡単には拭えない。
昨日だって怖くなかったわけじゃない。でもあの痛みを知る前と後じゃ全然違う。
ローションか何かを使ったからか、昨日ほど痛むことはなく案外すんなり受け入れられて、先輩は私の様子を見ながらゆっくり指を動かす。
「んぅ……ぁ……」
初めこそ違和感しかなかったそれに、気づけば零れる声は湿っていて。「慣れてきた?」と問いかけながらもう1本挿れてくる。
先輩の指が私も知らない私の弱い所を探してる。一つ一つ、確かめるように。
身体が反応すれば、忘れないように何度も触れる。その度に響く水音が、私の羞恥を掻き立てる。
私、まだ初雪さんの婚約者なのに。好きな人がいるのに。
「っ、ぁ」
私の中から指が引き抜かれ、紅先輩を見れば「んな顔すんな」と返される。
「いい?」
その質問に私はぼんやりする頭で深く考えずにうなずいた。
「っ、せん、ぱいっ、……ぃっ……!」
指と全然違うからさすがに痛くて、私はぎゅっと目を瞑る。
「力抜けって。力むと痛てぇぞ?」
力抜けって言われても、どうすればいいか全然分かんない。先輩のそれが私の中に押し入る感覚だけが鮮明だった。
「はー……きっつ……痛てぇ?」
私がコクコクうなずくと、先輩は私を抱き締めて頭を撫でた。その感触がやけに懐かしくて、気持ちよくて。
「あ……」
静かになった私を、先輩が不思議そうに見る。
「どした?」
「頭……撫でられるの久しぶりだったから……」
私の頭を撫でてくれた人は記憶にあるのはお母さんだけ。そのお母さんは私が10歳になる前に死んでしまった。
思えば、こうして誰かの体温をそばに感じるのも随分久しぶりかもしれない。
身体が鈍く痛んでるのに、心はなぜか安心していて不思議な気持ちだった。
私は何も考えず、彼の名前を口にした。
「よくできました。良い子だな。」
クスッと笑う気配がして、私への責めが激しくなる。
未だ不安と困惑の中にいた私の頭の中は、間もなくして真っ白になった。
何が起きたか分からなくて、ただ自分のものと思えない甘い声がひたすらに恥ずかしくて。
私を抱いてる先輩の顔が見れない。息が震える。
動揺する私をよそに先輩は手を止める気なんかなくって、先輩の指が触れた場所に思わず私は身体を固くする。
「痛くしねぇよ。……多分」
私が見上げると紅先輩は少し視線を逸らした。
「昨日は俺が急ぎすぎた。初めてのコとやんの久しぶりだったし?」
ベッド上の棚から小さなボトルを取る先輩。とろりとした透明の液体を少し多めに手に取る。
「あっ」
熱を帯びた部分に当てられた液体の冷たさに声が漏れる。円を描くように優しくなぞられて、時折聞こえる水音に頬が熱くなる。
「そのまま力抜いてろよ」
耳元で低く囁かれて。
ゆっくりと先輩の指が私の中へと挿入(はい)ってくる感覚。昨日の痛みを思い出してやっぱりちょっと怖くなる。
「千夜子。力抜いて。」
深呼吸をして、身体の力を抜こうと試みるけど。恐怖心は簡単には拭えない。
昨日だって怖くなかったわけじゃない。でもあの痛みを知る前と後じゃ全然違う。
ローションか何かを使ったからか、昨日ほど痛むことはなく案外すんなり受け入れられて、先輩は私の様子を見ながらゆっくり指を動かす。
「んぅ……ぁ……」
初めこそ違和感しかなかったそれに、気づけば零れる声は湿っていて。「慣れてきた?」と問いかけながらもう1本挿れてくる。
先輩の指が私も知らない私の弱い所を探してる。一つ一つ、確かめるように。
身体が反応すれば、忘れないように何度も触れる。その度に響く水音が、私の羞恥を掻き立てる。
私、まだ初雪さんの婚約者なのに。好きな人がいるのに。
「っ、ぁ」
私の中から指が引き抜かれ、紅先輩を見れば「んな顔すんな」と返される。
「いい?」
その質問に私はぼんやりする頭で深く考えずにうなずいた。
「っ、せん、ぱいっ、……ぃっ……!」
指と全然違うからさすがに痛くて、私はぎゅっと目を瞑る。
「力抜けって。力むと痛てぇぞ?」
力抜けって言われても、どうすればいいか全然分かんない。先輩のそれが私の中に押し入る感覚だけが鮮明だった。
「はー……きっつ……痛てぇ?」
私がコクコクうなずくと、先輩は私を抱き締めて頭を撫でた。その感触がやけに懐かしくて、気持ちよくて。
「あ……」
静かになった私を、先輩が不思議そうに見る。
「どした?」
「頭……撫でられるの久しぶりだったから……」
私の頭を撫でてくれた人は記憶にあるのはお母さんだけ。そのお母さんは私が10歳になる前に死んでしまった。
思えば、こうして誰かの体温をそばに感じるのも随分久しぶりかもしれない。
身体が鈍く痛んでるのに、心はなぜか安心していて不思議な気持ちだった。
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