奪ってみてよ、先輩。

七夕 真昼

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8.久しぶりに戻りました。

8-2

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家に入ると義妹が愛らしい笑顔で私を待っていた。

「姉さまおかえりなさい! 久しぶりに姉さまに会えるって、楽しみにしてたのよ!」

純粋無垢な私の義妹。私と違って色素の薄い、ふわふわと揺れる柔らかい髪。くりくりとした瞳は垂れ目がちで、その愛らしい顔は庇護欲をそそらせる。

「私も、茉白に会えるのを楽しみにしていたわ。」

そう答えればその笑顔は一層花が咲いたように明るくなって。
父親がいなければ、私たちはもっと普通の姉妹でいれたんだろうな、と私は思う。
皮肉なことに、父親がいなければ私たちが会うことも無かったけれど。
負けん気の強い頑固な私と違って、茉白は誰にでも優しく素直だ。少し幼いところもあるけれど、それもまぁ彼女の取り柄の1つだろう。
全体的にふわふわとしている彼女は、他の女の子からすれば気に食わないところも多いらしく、よくいじめられていた。私が気づける限りは庇っていたけれど、全部庇えていたかは分からない。

正直、春から女子校に通うのは大丈夫なのかと思う。私は絶対いないわけだし、茉白に何かあれば駆けつけてくれるだろう初雪さんもいない。

春からの環境を分かっているのかいないのか、楽しそうに茉白はずっと話している。

「姉さまってば、すっかり帰って来ないんだもの。私寂しかったのよ?」
「ごめんて。」

口を尖らせて拗ねる彼女は、やっぱり愛らしかった。

「私も忙しかったのよ、色々と。」

本当に色々と。常識の無い女たらしに捕まったり節操無しのクズ男に捕まったりそれはもうびっくりするくらい最低な人に捕まったり。

まぁ、たまに良いところ……というか、役に立つところはあるけど。極たまに。

「これからは、たまに帰ってきてくれる?」

大きな瞳で私を見つめる茉白。

「そうね……帰れそう、だったらね。」

まぁ自分から帰ることは9割ないと思うけど。

しばらく茉白と話していると、とうとう私がこの世で最も会いたくない人がやってきた。

「茉白、そろそろ夕食の時間だ。」
「はい、父さま。」

ソファを立ち上がる茉白は、心配そうに私と父を交互に見る。
茉白に送った視線の優しさを1ミリも私に向けない父。そんな父を私もありったけの軽蔑を込めて見返す。

私たちの間に流れる冷たい空気を茉白が感じ取らないはずがない。尤も、私と父の不仲はとうに知ってるのだけれど。

「相変わらずだな。」

娘が無事にやっていけてることを確かめる言葉じゃない。「相変わらず、母親と同じ忌々しい目だ」と言っているのだ。

「父さまも、変わりないようで」
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